武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!
31時。〈Bar YAMAGA〉にて。誰と誰が似てるか?という討論を繰り返し、ついに朝の7時になってしまった、ザ・フーのドラマー=キース・ムーン、ジャズ・ドラマーの大御所ジーン・クルーパ、そして俺、武藤昭平である。俺がキースに訊く。「そういえばキースさん。あなたのバンドのギタリスト=ピート・タウンゼントさんと、ポーグスのヴォーカリスト=シェイン・マガウアンって何となく似てませんか?」。するとキースが返す。「いや、ムトウ。ピートが似てるのはむしろ人間じゃないんだ。ザ・フーの『Who's Better, Who's Best』ってベスト盤を知ってるか? あのジャケットでジャンプをするピートは、まさしく〈人〉という漢字そのものだ。ピートは人間ではなく、〈人〉という漢字にそっくりなんだよ。もしくは〈入〉でもいいが……」「ああ、なるほど。でも〈入〉だとスイッチみたいですね」と感心する俺。すると今度はジーンが口を開いた。「キング・クリムゾンの『In The Court Of The Crimson King』って、人の顔をアップにした絵のジャケットがあるだろ? あれ、タレントのエガシラニジゴジュップンに似てないか?」。するとキース、「似てるとういかイメージだけじゃないか? もはや無茶苦茶だね……」。
沈黙をかき消すように、俺がキースに訊ねる。「キースさん。キースさんがドラムを叩いてる姿がたまに元ドリフの荒井注に見える時があるんですが。眉毛の感じとか」。するとキース「よう、ジーン。俺がチュウ・アライだって!? するとさ~、俺とジーンは似てるらしいから、あんたもチュウ・アライってことになるよ。ハハハ」。するとジーンが答える。「俺とチュウ・アライ? そこに接点はないだろ。じゃあドリフ繋がりだ。俺の友達のドラマー、バディ・リッチはチョウスケ・イカリヤにそっくりだぞ」「……ああ、なるほどね」。キースと俺の反応はイマイチだった。
居心地が悪くなったのか、ジーンは時計を見ながら切り出した。「もう朝の7時半を過ぎてるじゃないか。帰ろう」。そしてキースとジーン、俺の3人はカラ元気のまま店を後にした。朝日を浴びながら。
……武藤昭平、あくまでも妄想の話。
深夜の妄想盤
THE WHO 『Who's Better, Who's Best』 Polydor
何て芸術的な跳躍でしょう。あまりの美しさに、キースさんが人間ではなく〈人〉という文字にしか見えなくなってしまった気持ちもわかります。が、人間離れしているのはジャンプだけにあらず。スイッチが入った彼の轟音プレイは尋常じゃないですって!
KING CRIMSON 『In The Court Of The Crimson King』 DGM/Atlantic(1969)
穴という穴が開きまくった有名ジャケ。顔自体は江頭2:50さんと似てませんが、ロックと笑い、畑は違えど破天荒なスタイルを築いたあたり共通してる!?なんて、強引すぎますね。だけど、ジーンさんがあまりに不憫で……。
BUDDY RICH 『A Different Drummer』 RCA(1971)
見てくださいよ、この表情! ビッグバンド・ジャズ・ドラマーの最高峰が、当時台頭していたロック・バンドへのライヴァル心を剥き出しにして作ったという気合の一枚。グループのリーダーたるもの、顔の迫力は大事ですね。長さんもまた然り。
PROFILE
武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。レーベル移籍後初となるニュー・アルバム『マイ・ライフ...』(tearbridge)も大好評リリース中。3月12日(木)に東京・下北沢CLUB 251で、3月29日(金)に愛知・CLUB BIRTHで、ウエノコウジと共にDJを行う予定。また、昨年末に東京・九段会館で行われたライヴのDVD化に向け、現在猛編集中とのこと。その他、最新ニュースは〈www.katteni-shiyagare.com〉でチェック!!