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第14回 ─ 宇多丸×ミッツィー申し訳の〈申し訳ないと〉対談! 〈J-POPシーンの変遷〉編

連載
TOWER RECORDS SHINJUKU 10th ANNIVERSARY
公開
2008/10/30   17:00
更新
2008/10/30   19:11
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文/bounce.com編集部

 今年でオープン10周年を迎えるタワーレコード新宿店では、現在〈TOWER RECORDS SHINJUKU 10th ANNIVERSARY〉と題してさまざまなイヴェントやキャンペーンを展開中! オモシロ企画が目白押しのこの1か月間を、bounce.comでは独自の視点で追いかけていきます! 今回は、10月11日(土)に開催されたイヴェント〈タワレコ新宿10周年 vs 申し訳ないと11周年〉より、宇多丸さん(RHYMESTER)とミッツィー申し訳さんをご招聘。お二人がレジデントDJを務めるワン&オンリーなJ-POPパーティー〈申し訳ないと〉の話題を中心に、DJやJ-POPにまつわるあれこれについてお話をうかがいました。いよいよラストの第4週目は〈J-POPシーンの変遷〉編!!

★☆★ 対談第1週〈解釈なくしてDJを名乗るな〉編はこちら!!
★☆★ 対談第2週〈Perfumeをかけるか否か?〉編はこちら!!
★☆★ 対談第3週〈申し訳ヒストリー〉編はこちら!!

――〈申し訳ないと〉は新譜を積極的にかけてるイメージがあるんですけど、そういう意味でJ-POPシーンの盛り上がりともリンクしてるんじゃないかと。

宇多丸 そうですね。最初の盛り上がりは、やっぱりモーニング娘。とかm-floとかRIP SLYMEが売れてた2000年前後かな。J-POPに2ステップとかが導入され始めた時期。

ミッツィー ちょうどJ-POPとクラブものが融合してきた時代だよね。あと、CDが売れてたからかもしれないけど、シングルにリミックスがいっぱい入ってたり。

宇多丸 だから〈申し訳〉的には99年~2002年くらいが豊作期かなあ。で、いまも画一的になりがちな感があるとは言え、やっぱりPerfume効果はあって。クラブ・ミュージックのテイストを入れたりとか、コストをかけようかなっていう傾向が見えてきてる。

ミッツィー 音楽としてちゃんと成立させようっていう。やっぱり2002年くらいまでのJ-POPは生楽器もたくさん入ってたし、音楽的強度が高かった。だからいまでも掛けられる曲がいっぱいある。いいメロディーと演奏が残ってるというか。

宇多丸 で、その後にちょっと保守化したんだけど、いまはまたPerfume効果で、以前ならバラードのシングルを出してた人がダンス・ミュージックっぽい曲をシングルとして切るようになった。お金を超かけられる人たちがそういうことをやると、それはそれで良いんだよね。あと、エレクトロ的なデスクトップ・ミュージックが流行ることで、お金のない人たちでもカッコ良さげに聴こえるメソッドを手に入れて、全体のクオリティーの底上げになったり。だからいまも、新譜で良いのはボチボチある気はする。

ミッツィー ただ、どれも大体良いんだけど、決め手に欠けるみたいな状況でもあるかもしれない。そのなかにあって、中田(ヤスタカ)サウンドはやっぱり突出してるんじゃないかと思う。

宇多丸 メロディー・メイカーとしての素晴らしさとか、意外と作詞家としても良いとか、そういう根本の部分が際立ってくるんだよね。曲自体が魅力的なことに気付かされる。

ミッツィー だからエレクトロっぽいものをかけるときは、最終的には中田さんのものになる。

宇多丸 でも、メジャーのアーティストが本気で金をかけたものがカッコいいっていうのは喜ばしいことだよね。安室ちゃんしかり、EXILEしかり。一番売れてる音楽がこのクオリティーっていうのはすごく良いことだよ。

ミッツィー うん、みんながそれに習って行くしね。

宇多丸 全体的にR&Bが良くなってません? USものの魅力のないコピーだった時代を超えて。

ミッツィー そうそう。コピー時代を消化しきって、J-POPとしての良い落としどころが出来た。

宇多丸 ジャパニーズR&Bのクオリティーがグイグイ上がって、かつ日本語ラップがすごい盛り上がってる。

ミッツィー まあ、いま勢いのある人たちに関しては、セールス的にはまだこれからって感じだよね。売れてる人は売れてるからいいんだけど。

宇多丸 ただ、アングラなものにしても、プロデュースしてるのはBACH LOGICだったりするから、もうメジャーのものと遜色ないわけじゃん。遜色ないどころか、こっちの方が良いくらいで。しかもそれが手軽に作れるようになってるし。だから、DJの側としては本当に良い状況だよね。10年前の比じゃない。

――では最後に、これからの〈申し訳〉のあり方などを伺います。現在は〈申し訳OVERGROUND〉と〈申し訳UNDERGROUND〉の2本立てでやられてますよね。

ミッツィー 例えば掟さんのDJプレイを見て「動きが面白かったね」って捉える人もいるし、もちろんそれも〈申し訳〉の一部ではある。だからそれはそれとして、一方でパフォーマンスにも頼らずに選曲だけで攻めて行くようなコアな部分を棲み分けておきたかったんですよ。それで〈申し訳UNDERGROUND〉を作った。あと、いまレギュラーDJが7人もいて隙間がないから、ゲストDJを入れる余地を作りたかったというのもあって。


――宇多丸さんはその両方に出演してますね。どのように切り替えてますか?

宇多丸 うーん、最近はあんまり変わらなくなってきちゃったんだよね(笑)。まあ、ぼくは元々〈申し訳〉の理念に一番うるさいタイプで、ミッツィーさん以上に原理主義者なんですよ。だから理念なんて言われなくても守ってます、みたいな。例えば季節によっては、この曲は無しとか。

ミッツィー みんなが季節感をないがしろにすることが多くなったのも〈申し訳UNDERGROUND〉を作った理由だったんだよねえ~。是正する意味で。

宇多丸 正月にMINMIの“サマータイム!!”は絶対無しですよって。これは夏の始めの歌なんだから、8月の頭はいいけど終わりはダメですよ、俺なんか月単位で選曲してますよっていう(笑)。

ミッツィー で、〈申し訳OVERGROUND〉は土曜日開催だし、お客さんの欲求に応えようと。

宇多丸 それはそれで間違ってないからね。

――では今後もその2本柱でやっていかれる?

ミッツィー そうですね。

宇多丸 誰かから「(Perfumeの)“love the world”はかかるんですか」って訊かれたんだけど、それが聴きたければ土曜日(申し訳OVERGROUND)に来てくださいって。なおかつ、俺とミッツィーさんはかけないよってピシャッと言い放った(笑)。

〈PLANET 13th Anniversary Special Vol.3 [(有)申し訳ないと 11周年記念 at UTSUNOMIYA]〉
10月31日(金)宇都宮PLANET
開場/開演 22:00
料金:前売&HP予約 \2,500(1Drink込み)/当日 \2,500
-DJ-
ミッツィー申し訳 (代表取締役)/ギュウゾウ申し訳Jr. (電撃ネットワーク)/掟ポルシェ申し訳Jr.(ロマンポルシェ。)/オギぃ申し訳Jr./刑申し訳baby's
-SHOW-
荻田優「正義の味方」

〈(有)申し訳 OVERGROUND〉
11月1日(土)東京・三宿WEB
開場/開演 23:00
料金:\2,500(2Drink)
-DJ 申し訳ナイタズ-
ミッツィー申し訳 from (有)申し訳/宇多丸(RHYMESTER)/ギュウゾウ(電撃ネットワーク)/掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)/GEE(緊急手術中により欠席)/オギぃ and 刑

このほかのスケジュールは申し訳ないとオフィシャルサイトにてご確認ください!

宇多丸氏のラジオにて、〈申し訳ないと〉DJ陣によるミックス・ショウ〈申し訳ないとフロム赤坂〉放送中!
●TBSラジオ(954Khz)「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」
毎週土曜日21:30~23:30
http://www.tbsradio.jp/utamaru/index.html
http://www.tbsradio.jp/utamaru/podcast/index.html

▼申し訳ないと、宇多丸の関連作品


雑誌「BUBKA」でのアイドルCD評論連載をまとめた、宇多丸の著作「ライムスター宇多丸のマブ論 CLASSICS」

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