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第23回 ─ カーリー・ヘアでサングラス

連載
Bar YAMAGA
公開
2008/10/23   22:00
ソース
『bounce』 303号(2008/9/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!

 27時。平穏にひとりカウンターで飲んでいた俺の横に、また嵐が訪れた。この〈Bar YAMAGA〉に入って来た時からずっと笑っている酔っ払い2人組──ザ・フーのドラマー=キース・ムーンと、ジャズ・ドラマーの大御所であるジーン・クルーパである。

 少し笑いも治まったところで、2人は名物おばちゃん店員のティナ・ターナーにバーボンのロックを注文した。「アンタたちまだ飲むの? うるさくするようだったら、容赦なく追い出すからね」。ティナはそう言うと、2人に酒を持ってきた。

 しばらくしてキースが言う、「おい、ムトウ。俺とジーンが似てるってかい?」「ええ。ドラムの叩き方とか似てるって思ってたけど、実際に見たら顔も似てませんか?」「おい、ジーン。俺とアンタ、似てるかなぁ?」。そう訊くキースにジーンが言う、「若い頃の俺は……特に40年代の俺はちょっとキースに似てる気もするが。眉毛とか。でも晩年の俺は、ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツにも似てると言われるぞ、最近のな」。ジーンの発言にちょっと気になって、俺が訊ねる。「あれっ? ジーンさん、いまおいくつなんですか?」。するとジーン「生きていれば99歳だ」。その言葉を受けてふたたび笑い出したキースが、俺にこう言った。「ヒャッヒャッヒャッヒャッ! ジーンはおもしろいことを言うな~。っつうかムトウ、これおもしろいだろ? ちょっと買ってきたんだ」。そしてキースは、タワーレコードの袋から買ってきたばがりのCD3枚を取り出した。「コイツら、なんか妙に似てるなっつって。で、ジーンと大笑いをしながらさぁ、ついつい買っちまったんだよ。おい、ムトウ見てみろよ。まずはランディ・ニューマンだろ。で、イアン・ハンター。そして、これがミッシェル・ポルナレフ。ヒャッヒャッヒャッヒャッ! やっぱ似てるよな!」。CDのジャケットを覗き込んで大笑いをする2人。そして俺が突っ込む。「っつうか、3人ともカーリー・ヘアでサングラスをかけてるだけじゃないんですかねぇ」。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜の妄想盤

RANDY NEWMAN 『Sail Away』 Reprise(1972)
バーバンク・ブームの真っ只中に、レニー・ワロンカーの指揮のもと放った4作目。奴隷制を痛烈に皮肉った表題曲や神になりすました“God's Song”など、サングラスの下で彼はどんな目をしながらこれらのナンバーを歌っていたのでしょうか?

IAN HUNTER 『All American Alien Boy』 Columbia(1976)
モット・ザ・フープルでのグラマラスでハードなロック・サウンドから一転、内省的なバラードやスロウなロックンロール・ナンバーを詰め込んだ味わい深いソロ2作目……だけど、ヘアスタイルだけは変わらずですね。

MICHEL POLNAREFF 『Le Meilleur De Michel Polnareff』 Universal 
並べてみると確かに3人そっくり! で、彼だけは還暦を過ぎたいまでもサングラスとカーリー・ヘアをキープしているというから大したものです。そんな徹底したカッコつけっぷりは、このオールタイム・ベストでも確認可能!

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。レーベル移籍第1弾となる映画「たみおのしあわせ」のサントラ『ゼン・サマー・ケイム』に続き、待望のニュー・アルバム『マイ・ライフ...』(tearbridge)をリリースしたばかり(詳しくはP48へ!)。さらには、9月28日(日)には埼玉・航空公園で行われる〈夏結びMUSIC FESTIVAL〉に出演。その他の最新情報は〈www.katteni-shiyagare.com〉でチェック!