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第16回 ─ 〈ライジング〉復習編 Part.2 各アクトの詳細をレポート!

第16回 ─ 〈ライジング〉復習編 Part.2 各アクトの詳細をレポート!(2)

連載
オレら の 夏 フェス 予習・復習帳 '08
公開
2008/09/25   18:00
更新
2008/09/25   19:03
テキスト
文/澤田大輔、土田真弓

8月16日(土)

13:00~
■怒髪天 @ SUN STAGE

  道産子バンドの筆頭として、このフェスにはただならぬ気迫で臨んでいるという怒髪天。それが2日目のトップバッター、しかも最大規模の〈SUN STAGE〉出演!ということで、何が起きるのか期待に胸を膨らませて会場へ。さて開演時刻になると、着流し姿のメンバーと共に、なぜかふんどし一丁の男たち(約30名)がステージに殴り込み! SEの北島三郎“まつり”が高らかに鳴り響き、ロック・フェスというよりは〈裸祭り〉の様相を呈してきたステージに、ふんどし男の担ぐお神輿が登場。それに乗っているのはヴォーカルの増子直純だ。場内が異常な盛り上がりを見せるなか、ライヴがスタート。セットリストは“酒燃料爆進曲”“アストロ球団応援歌”など、アッパーでやかましい曲のオンパレード! バンドの気合いも尋常ではなく、1曲ずつ全力で叩き付けてくる様に否が応でも盛り上がる! 増子も魂の絶唱で客を煽っていた。また、冒頭の演出に関して増子が「完全に趣旨を間違えてるかもしれねえ。だが、祭りだろ!」と言い放ったMCは〈ライジング・サン〉だけでなく、音楽フェスがどうあるべきかという示唆に富んでいた(ような気がする)。必要以上に男気を放出した圧倒的な祭り……もといライヴだった。*K10

16:00~
■凛として時雨 @ EARTH TENT


写真/石井亜希

  今年ついに野外フェス・デビューを果たした凛として時雨が、〈フジロック〉に続いて〈ライジング〉に登場。舞台となった〈EARTH TENT〉には、ずいぶん早くからたくさんの人が詰め掛けていた。テント内に熱気が立ち込めるなか、突如不穏なハウリング音(彼らの入場SE)が空気を切り裂く。怒号のような歓声を受けて現れた3人は、冒頭の“想像のSecurity”からいきなりトップ・スピードに! 暴風のようなディストーション・サウンドで、サディスティックに斬りつけてくるからたまらない。少しでも演奏がもつれたらたちまちアンサンブルがバラバラになりそうな難しい楽曲を、鉄壁のプレイヤビリティーで見事に弾きこなし、トリッキーなキメのリズムも鮮やかに決めていく。そんな彼らの姿には、鍛錬を重ねた修行者のような凄みがあった。曲目は“DISCO FLIGHT”“Telecastic fake show”などのアグレッシヴな曲が中心で、時折緊張感を孕んだスロウを織り交ぜるもの。特に“nakano kill you”での爆発力は凄かった。観たものを必ず虜にする、必殺のライヴだったと思う。*K10

17:00~
■ザ・クロマニヨンズ @ SUN STAGE

  魂の一筆書きロックンロール。ピーカンの〈SUN STAGE〉におけるザ・クロマニヨンズは、そんな清々しいサウンドで会場を圧倒した。ヒロト、マーシーをはじめ全員が上半身裸でステージに登場。もちろんオープニングは“クロマニヨン・ストンプ”。身体に火でも点いたのか?って感じでよじれながら疾走するヒロト。息継ぎすることを忘れさせるスピード感にヤングたちが大盛り上がり。 “ギリギリガガンガン”“うめえなあもう”“スピードとナイフ”とずっとノンストップで、フライパンの上のポップコーンみたいに、人という人が弾け飛んでいる。彼らの上半身同様、剥き出しの音楽がそこに並んでいた。ナンセンスという名の爆弾を矢継ぎ早に破裂させるアンサンブルに触れ、これは以前の2つのバンドの時よりも殺傷力が高まってるな、と痛感。“歩くチブ”“紙飛行機”“タリホー”と曲が続くにつれ、どんどん脱力状態が進んでいく。終演後、俺の頭はパカッと開いて、なかから白い鳩が飛び立っていった。夏の陽が眩しい空高くへと。*桑原

17:30~
■OKI DUB AINU BAND feat. MAREWREW @ BOHEMIAN GARDEN

  樺太アイヌの伝統弦楽器=トンコリの奏者、OKIが昨年に続いてDUB AINU BANDと共に登場。〈ライジング〉でももっとも開放的な〈BOHEMIAN GARDEN〉でトンコリはどう響くのか。会場に到着すると、すでに演奏が始まっていた。数々のレゲエ・バンドで活動するヒロヒサの粘っこいベースと、ドラマー・沼澤尚のタフなビートががっちりと噛み合って、そこにOKIと居壁太が弾くトンコリ2本が乗るというスタイル。実はトンコリはごく限られた音階しか出せないのだが、それを逆手に取った、考え抜かれたリズム・アレンジが非常にカッコいい。彼らは全員がリズム隊のバンドだと言えるのかもしれない。その演奏を、内田直之がダブ・ミックス。どこか懐かしくてふくよかなトンコリの音色が増幅され、ベースとドラムのずっしり重い残響音と溶け合い、どこまでも広がっていく。その音は周囲の森に木霊し、大空へと拡散していくようだ。アイヌ語の歌にレゲエやファンク、アフリカ音楽のテイストを採り入れた楽曲が続くなか、アイヌの女性4人から成るコーラス・グループ、MAREWREWがステージに呼び込まれる。アイヌ民族の伝統衣装を身に纏った彼女たちの輪唱はまさに天然のトランス音楽といった趣。彼女たちとバンドが一体となった瞬間は、今年の〈ライジング〉でも屈指の美しいシーンだった。*K10

18:00~
■VOLA & THE ORIENTAL MACHINE @ GREEN OASIS

 ドラム・セットの背後には銅鑼、ステージ中央にはエレドラやフロア・タム、ミニ・ティンバレスやシンバルなどで組まれたパーカッション・コーナーが。打楽器満載のステージ上に登場した4人は、初っ端から“S.E.”~四つ打ち狂騒ナンバー“self-defense”と、ファイティング・スピリッツ溢れるダンス・チューンを展開。リリースを控えるミニ・アルバム『Halan'na-ca Darkside』の冒頭2曲だが、これがまた、フラメンコ風のハンズ・クラップやアヒト・イナザワの〈アオーン!〉という遠吠えシャウト(?)が挿入されたりと、アガる要素があり過ぎ。続く“An imitation's superstar”では、ギターの青木裕が暴れた挙句にコードでがんじがらめになったりなど、そのハチャメチャっぷりは観ていて異様に楽しい! メンバー3人による〈トゥララ・コーラス〉ではじまるアッパーな“soft genocide”のあとは、「踊り足りてますかー?」というアヒトのMCを合図にグイグイとラスト・スパートへ突入。楽器そっちのけで踊りまくるアヒト、ドラムとパーカッションによるリズム・バトル、〈L・O・V・E〉の振り付けでお馴染みの“Mexico Pub”と、キラーなラインナップ&パフォーマンスで一気に駆け抜け、ラストは銅鑼を4回鳴らして終演。ライヴの定番ナンバーを揃えがちなフェスで新作の楽曲を大量投入した攻めっぷりも天晴れなら、そんなセットリストで観客をがっちりと踊らせたステージングも天晴れ。彼らのライヴは今回が初見だったけれど、これは間違いなく病みつきになる! *土田

18:50~
■SHERBETS @ RED STAR FIELD


写真/古渓一道

  夜の帳が降りて空気がひんやりとし始めたころ、SHERBETSのステージが始まった。5月にはバンドの集大成ともいえる10周年記念ライヴを行った彼らが、果たしてどんなモードでこの場に臨むのか……と思いきや、なんと1曲目から“カミソリソング”“HIGH SCHOOL”“アンドロイドルーシー”といったバンド初期の攻撃的なナンバーで畳み掛け、客席は狂乱の渦と化す! 会場の盛り上がりがいったんピークに上り詰めた後は、“並木道”“小さな花”といった詩的なミディアムを中心に展開。浅井健一の言葉が、観客ひとりひとりの胸のうちにストーリーや風景を描いていく。そしてバンドは、浅井の描く物語の最上の伴奏として歌に寄り添った演奏を繰り広げ、誰もが瞬く間にSHERBETSの世界に引き込まれていった。闇の中に浮かび上がる赤い垂れ幕をバックに繰り広げられたシアトリカルなショウは、荒々しい“J.J.D”から哀切のミディアム“MERRY LOU”でフィニッシュ! 結成から10年を迎え、SHERBETSのサウンドはますます円熟味を増していた。*K10

20:20~
■椎名林檎 @ SUN STAGE

  一体、どんな趣向を凝らしてくれるのか――? 定刻近くになって開始した打ち上げ花火に歓声を上げながら、〈SUN STAGE〉に集まった観客たちは、各々の期待と妄想を大きく膨らませている。そんななか、まずは斉藤ネコ・クァルテット(ヴァイオリン×2、ビオラ、チェロ)が真っ白な正装で登場。ステージ上に設置されたスケルトンのドーム内でセッティングを始める。そして弦の響きに導かれるように、椎名林檎が現れた。白のロング・ジャケットにハイカラー・シャツ、黒のホットパンツに身を包んだ彼女は、まるで男装の麗人のように凛とした美しさを放っている。4弦と歌のみという編成のステージは、バート・バカラック“Alfie”のカヴァーで幕を開けた。それと同時に舞台両脇に設置された大型スクリーンには、ライヴ映像と共に彼女が紡ぐ歌詞が字幕風に映し出されてゆく。

 “罪と罰”からは林檎自身のピアノも加わって、東京事変/個人名義の楽曲をクラシカルな映画音楽風にアレンジしたセットを次々と展開。なかでも白眉となるのは、ライヴ中盤で初披露された新曲“You”だろう。この切ないラヴソングは、なんと彼女が大ファンのバカラックから提供された(!)楽曲だという。その後、終盤では“歌舞伎町の女王”“茎”といった〈林檎初心者〉でも盛り上がることのできる楽曲を立て続け、ラストは斉藤ネコとの初共演曲“同じ夜”を斉藤のピアノ伴奏で歌い上げて終了。

 客電が落ちた後、隣の女の子ふたりが「(世の中には)いるんだね、ああいう人が……」としみじみと語り合っていたが、その言葉に大いに頷けるほどに、今宵の彼女は本当に美しかった。演出方法も含め、音楽家・椎名林檎の才能をまざまざと見せ付けられた、至福の一時間であった。*土田

20:40~
■クレイジーケンバンド @ GREEN OASIS

 丸くて白い月の光がこちらの気分を盛り立てる。北海道の夜空の下でのクレイジーケンバンド。それはあまりに心地よい時間を与えてくれた。ファンキーなブラスが高らかに鳴って、そこにケンさんが現れる。新作のタイトル曲“ZERO”で幕が開いたこのステージ。ファンキーでメロウな快楽サウンドが次から次へと飛び出して、〈GREEN OASIS〉は次第に熱を帯びていく。「横浜からジェットにのってやってきました、クレイジー・ケン・バンド!」というMCにウォーという歓声が上がる。エゾの地でももちろん彼らの横浜サウンドはエキゾに、そして艶やかに響き渡った。“肉体関係”のコール&レスポンスもバッチリきまり、怒涛のエンディングへ。ラストの〈ダンス天国〉“学園天国”とつなげて“GT”へと流れる鮮やかな流れには一同大盛り上がり。ただただひたすらカッコいいパフォーマンスを繰り広げたCKBの面々。一時間足らずの短さだったけれども、独自の世界を完璧に作り上げてくれたのだった。*桑原

21:30~
■EL-MALO @ EARTH TENT

 2004年以来の出演となったEL-MALO。〈EARTH TENT〉にはたくさんの人が集まっていたが、そこにはある種の緊張感が漂っていた。それもそのはず、アイゴンこと會田茂一の脱退が決定しており、柚木隆一郎と會田というオリジナルのEL-MALOとしての活動が、この日を含めて2本のライヴしか残されていなかったからだ。開演時間になってメンバーが登場。柚木は白いフードと月桂冠らしきものを頭に巻き、全身白ずくめ。會田は青いヘアーバンドをしている。〈絶妙の違和感〉とでも言えそうな雰囲気がやっぱりEL-MALOらしい。バンドの顔ぶれはギターにAxSxE、ツイン・ドラムには常岡章(Hi-STANDARD)と小松正宏(bloodthirsty butchers)、ベースはアイゴンのFOEでもお馴染みの佐藤研二、キーボードに石橋英子。手練が揃っただけあって、ロック・バンドのフォーマット内に異常なほど大量の音楽的情報を詰め込んだ、密室感と開放感が交互に襲ってくるようなエルマロ独特のグルーヴが最高の純度で展開されていた。観客は誰もが無心になり、ズ太い轟音に身体を任せる。柚木はMCで「柚木と會田、2人でPerfumeでーす!」なんて笑いを取っていたし、メンバーも始終ゴキゲンそうだった。選曲も、新作『NOFACE BUTT 2 EYES』の曲こそ少なめだったが、そのぶん“Happy goes around”といった過去の名曲をやってくれて最高だった。それだけに、あの2人のEL-MALOが終わってしまうことがもったいなくてしょうがない。*K10

1:40~
■サカナクション @ EARTH TENT


写真/西原勝哉

  デビュー前に〈RISING★STAR〉枠で出演して以来、2年ぶりに〈ライジング〉へ凱旋したサカナクション。「みんな、ただいま」という山口の挨拶で幕を開けたステージは、四つ打ちビートとシティー感覚溢れるギター・カッティングが絶妙に絡む“インナーワールド”から、草刈によるアグレッシヴなベースラインを軸にしたインターバルを経て“三日月サンセット”へ。エレクトロニクスが果てしなく飛翔するサビで大ジャンプ大会を繰り広げたあとは、流麗な電子音とフィジカルなバンド・サウンドが抗いがたい昂揚感を運んでくる“サンプル”、メロディアスでハウシーなインスト“マレーシア32”と、冒頭からイーヴン・キックの楽曲をノンストップで畳み掛け、場内を完全レイヴ・オン状態へ導いていく。そして興奮冷めやらぬなか放たれたのは、この日に初披露された新曲“セントレイ”。シンガロング必至のメロディーがいつまでも耳に残る、彼ら史上もっともキャッチーとも言えるポップ・ナンバーだ。続くMCタイムは、地元だけあって終始フレンドリーなムード。場内に親密な空気が充満したところで“夜の東側”“白波トップウォーター”といった定番曲を連打し、ラストを飾ったのは壮大なダンス・ロック絵巻“ナイトフィッシングイズグッド”。タクトを振る指揮者のように両手を広げ、オペレッタ風のサビを大合唱する観客たちをリードする山口は貫禄たっぷりだ。フォーキーな歌モノ的要素とハウスやテクノを下敷きにしたサウンドはとてつもなくリズミックで、もっとダンス系のフェスにエントリーされてもいいんじゃないの?と思うほど。いつか、全曲ノンストップのステージを観てみたい。*土田

3:00~
■サニーデイ・サービス @ SUN STAGE

 防寒着なしでは手がかじかむほどに、冷え込みもピークに達した午前3時。サポートに新井仁(ギター)&高野勲(キーボード)という気心の知れたメンバーを加え、今年の〈ライジング〉のラインナップのなかでもハイライトと言える3人組、サニーデイ・サービスがメイン・ステージに登場した。

 セットは“baby blue”からスタート。今回は約8年ぶりとなる再結成ライヴだが、何の気負いも感じられないリラックスしたパフォーマンスだ。田中と曽我部によるハーモニーはこんなに美しかったんだなぁ、丸山は相変わらずシンプルなドラムを叩くんだなぁ、そして、〈キング・オブ・メロウロック〉の原点はやっぱりここなんだなぁと……蜜のようにとろりと甘いロックンロールを聴きながら、しみじみと思う。

 「どうも、サニーデイ・サービスです。ご無沙汰しております」。

 “恋におちたら”に続いたMCで曽我部がそう挨拶すると、観客は温かな歓声で応える。感激で泣き出しているファンもいて、筆者も思わずもらい泣きしそうになってしまった。

 ラストを飾ったのは、編集部の予習対談でも話題にのぼっていた“サマー・ソルジャー”。感動的なフィナーレ! ……と思いきや、「もう1曲演ってもいいですか?」と、曽我部がひと言。そしてオーラスとして披露されたのは、名盤『東京』の最後におさめられている小品“コーヒーと恋愛”だ。曽我部の歌、田中のコーラス、丸山のカズーのみで会場中をほっこりとした空気で包み込み、ステージは終了した。「ありがとう」と言って去るメンバーに向かって、客席からも「ありがとう!」という声が上がっていたのが印象的だった。*土田

4:30~
■東京スカパラダイスオーケストラ @ SUN STAGE

  ゆっくりと赤らみ始めた東の空。もうじきゴールを迎えるこのお祭り。「終わっちゃうね~」なんて声が背後から聞こえた。たぶん周りにいた誰もがその一言を噛み締めていたに違いない。そして朝焼けに照らされて〈SUN STAGE〉に登場 した勇壮な男たち。大トリを務める東京スカパラダイスオーケストラの面々だ。フェス開催前に脱退した冷牟田竜之の不在がどう影響するのか?などと考えていたが、そこにはいつもの彼らがいた。高速ラテンやロッキンなジャズが朝の空気を切り裂くように放たれる。寝ていた人も立ち上がり、みんな手拍子やダンスで彼らの音楽に答えている。谷中敦が「超セクシーな夜明けだね!」と言っていたが、彼らが奏でるサウンドで会場のムードはよりセクシーさが高まっていた。やがてエンディングが近づき、ステージに白いスーツに身を包んだ男が現れた。伊藤ふみおであった。勇壮な名曲“Pride Of Lions”を、スカパラの勇壮な演奏をバックに歌いきった彼。そして会場 全体は眩しい朝日に包まれた。「ライジングは世界一!」というMCに大喝采で答える観客たち。まさに大トリに相応しい、貫禄溢れるパフォーマンスを披露した彼らであった。*桑原

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介







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