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第386回 ─ Ry Cooder

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/08/07   03:00
更新
2008/08/07   20:05
ソース
『bounce』 301号(2008/7/25)
テキスト
文/北爪 啓之

〈カリフォルニア3部作〉の最終章がお目見え!

 2005年の『Chavez Ravine』、2007年の『My Name Is Buddy』に続く〈カリフォルニア3部作〉の終章となるこのニュー・アルバム『I, Flathead』は、ライ・クーダー自身のペンによる架空のミュージシャンを主人公とした小説の音像化でもある。そうした詳細な設定を持つ作品は日本人には理解し難い部分もあったりするのだけれど、肩肘張らないここでのサウンドに身を浸してみれば、それも杞憂だと思い知る。息子のヨアキム・クーダーやジム・ケルトナーのドラム、フラコ・ヒメネスのアコーディオン、さらにはホーン隊やピアノも交えつつ、ライのギターもいつにも増して変幻自在。ブルースにカントリー、テックスメックスにキューバン、ロックンロールにラグタイムと、〈汎アメリカ大陸音楽の博覧会〉の如き様相を呈しながら、どこか作り物めいているのに不思議と温かく、懐かしいようでいて確かに新しい、めくるめくような音のパノラマが魔法的だ。架空のアメリカ原風景を現出させることによって現代社会を炙り出しているようにも思えるあたり、〈新世紀のバーバンク・サウンド〉といった趣もあり。

▼ライ・クーダーの作品を紹介。


2005年作『Chavez Ravine』(Nonesuch)