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第82回 ─ BACCHANAL 45

連載
Discographic  
公開
2008/07/31   22:00
ソース
『bounce』 301号(2008/7/25)
テキスト
文/大石 始、山西 絵美

セレクター&MCから成るサウンド・クルー、HEMO+MOOFIREの主宰するダンスホール /ソカ・レーベルが設立5周年を迎えました!


日本~ジャマイカ~トリニダード・トバゴを股に掛け、ダンスでの精力的なプレイ、クラブ〈CACTUS〉の運営……と多岐に渡る活動を繰り広げているサウンド・クルー、HEMO+MOOFIRE。レゲエ・シーン屈指のハードワーカーである彼女たちの軸となっているのが、自身のレーベル/プロダクション=BACCHANAL 45でのプロデュース・ワークだ。「いろんな人に〈レーベルをやったら?〉って言われてたんですよ。それで試しにオリジナル音源を作ってみようと思って」(MOOFIRE)とジャマイカで音源制作をスタートさせたのが2002年。当初から「現場でかけられて、ジャマイカ人にも負けない曲」(HEMO)というイメージがはっきりとあったようで、この時に制作したのが〈ESCAPE〉。2003年には、すでに現場でダブ・プレートとしてプレイしていたこのリディムで数枚の7インチを発表し、同時にBACCHANAL 45を正式に立ち上げることになる。しかし、この〈ESCAPE〉のブレイクの仕方はハンパなものじゃなかった。なかでもKEN-Uの初レコーディング曲ともなった“Doko”は、当時無名だった彼に注目が集まるきっかけとなっただけでなく、レーベルのターニング・ポイントともなった。

「〈ESCAPE〉は売れるまでに時間が掛かってるんです。とにかくラジオや現場でかけまくって」(HEMO)。

 2人のオリジナリティーは、日本やジャマイカのみならず、トリニダード・トバゴでも積極的に仕事を行ってきたことにある。まだソカの存在にさほど注目が集まっていなかった頃から、「ソカを日本に紹介したいと思ってたんですよね」(HEMO)という思いを持っていた彼女たち。〈ESCAPE〉のリミックスである〈SOCA ESCAPE〉リディムの制作に際してはトリニダードに乗り込み、音源のみならずプロモ・クリップまで製作、今日まで日本~ジャマイカ~トリニダードを飛び回る生活を送っている。しかし、どうしてそこまで忙しない活動を続けているのだろう?

「思いついたら実行しないと気が済まない」(HEMO)。

「それこそ、いつ辞められるんだろう?っていうぐらい(笑)。完全に蟻地獄ですよ」(MOOFIRE)。

 アーティストを選ぶポイントとしては「声質とリズム感、それとメロディーセンス」(MOOFIRE)と話す。そうした審美眼に適ったダンスホール~ソカ・チューンは常に現場でプレイされ続けている。では、〈2人みたいになりたい!〉という若者にアドヴァイスをするとすれば?

「諦めないことですね。強く願うと、なんでも叶うんです」(MOOFIRE)。

「〈叶〉っていう字は、〈願いを10回ぐらい口にすると叶う〉っていう意味らしいんですよ。私たちも思い続けていたら叶いましたしね」(HEMO)。

 今年は新人発掘にも引き続き力を入れていくというHEMO+MOOFIRE。設立5年目を迎えたBACCHANALと彼女たちの歩みは、止まる気配すら見えない。
(大石 始)
▼HEMO+MOOFIREのプロデュース曲が収録された作品を一部紹介。