スモーキーな歌声と美しいメロディーを携え、台湾から若きシンガー・ソングライターが潔く登場!

とにかく、この歌声! ありきたりな言い回しだけど、上質なスモーキー・ヴォイスなんだな。最近は頻繁に使われるこの〈スモーキー〉って表現。ノラ・ジョーンズ以降、〈70's的な女性シンガー・ソングライター・ブーム〉が続く昨今だと没個性的な形容になりかねないけど、この人にはあえてぶつけてみたい。ぶつけてもビクともしないほど、ジョアンナ・ウォンは本格派だから。
そんな稀有なファースト・アルバム『Start From Here』をリリースしたLA育ちの若きアジアン・ミューズ。自作曲のクォリティーがめちゃくちゃ高く、隙のないプロダクションも素晴らしい。今作をプロデュースした実父のビン・ウォンは、これまでにデヴィッド・タオやジョリン・ツァイなど台湾ポップス界の著名アーティストたちを多く手掛けてきた名匠だ。そんな父のもとで幼少期からビートルズやクィーン、またブラームスやチャイコフスキーなどに親しんできたジョアンナは、現在19歳とは思えぬぐらい幅広い音楽趣味の持ち主でもある(オインゴ・ボインゴにキャット・スティーヴンスが好みだなんて渋すぎ!)。
「でも私はいつだってひとつの音楽を作ってきたわ。特別なスタイルやジャンルに囚われない音楽をね。このアルバムは70年代的な香りがするって言ってくれたけど、あえて古い音楽への嗜好を出すようにはプロデュースしなかったつもりよ」。
なるほど。こういう〈潔さ〉を持った女性アーティストにどこかで出会った気がするなぁ……と考えてたら、彼女が話してくれたフェイヴァリット・アーティストのなかに答えはズバリ登場した。
「14歳のときに台湾のMTVで椎名林檎を初めて知ったの。〈すごい!! この女性は誰!?〉って思った。あと最近は倉橋ヨエコが大好き! 彼女のようにユニークでカッコ良い音楽を作っている人は他にいないと思う」。
フォーキーなメロウ・チューンやシティー・ポップ調の爽快なナンバーなど美メロなオリジナル曲に、ビリー・ジョエル“New York State Of Mind”の極上カヴァーまで聴かせてくれるこの才女。今後の展望は?って質問すると「もっとレコーディングをして、シークレット・ライヴをやって……あとは学校の帰り道にピザを食べたりすることかな(笑)」と実に19歳らしい返事が。今後どんな飛躍を見せてくれるのか楽しみだ!
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