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第364回 ─ KIYOSHIRO, WELCOME BACK!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/06/12   22:00
ソース
『bounce』 299号(2008/5/25)
テキスト
文/鈴木 智彦

ベイベ~、お楽しみはこれから! 俺はまだまだロックし続けるゼ~!!


  僕が初めて忌野清志郎というシンガーを知ったのは80年代。ばりばりのファンキーなロックで一世を風靡していたRCサクセションの花形リード・ヴォーカルとして、いちばん派手に活躍していた時代に、彼のとんでもなくファンキーな、それでいて時々無性に切なくなるような歌声と出会い、すぐさまその虜となったのだ。RCサクセションが解散してからも彼はソロ・シンガーとしてさまざまな音楽の冒険や挑戦を続け、どちらかと言えば洋楽一辺倒な音楽趣味に傾いていた僕の暮らしのなかでも、そんな彼の歌声だけはいつも傍らから離れていくことがなく、落ち込みそうになった時には何度も何度も彼の歌声に励まされてきた。その、ずっと励まされ続けてきた彼の、入院~音楽活動休止を経て行われた完全復活ライヴがこのたび「完全復活祭 日本武道館」としてDVD化される。

ライヴ当日、〈今度こそ、一度くらいは自分が彼を励ます番だよな〉と勝手に決意を固め、日本武道館へと向かった僕。そして、きっと僕と同じような気持ちを抱いて集まった多くのファンを前に、彼は〈これがこの間まで病気療養してた人なの?〉とにわかに信じ難いような、最初から最後までハイテンション&フルテンション全開で歌いっ放し!というパフォーマンスを披露してくれたのだ。RCサクセション時代の仲間である仲井戸麗一と新井田耕三の2人や、梅津和時ら生活向上委員会のホーン3人も駆けつけたこの日のステージは、ソロ楽曲だけではなくRC時代の曲もたくさん演奏し、また〈完全復活祭〉に相応しい賑やかな演出が随所に盛り込まれた特別なものであったことは間違いない。けれど、やっぱり圧巻であり、圧倒的だったのは〈まだまだ俺はやり続けるし、やり足りないし、ロックし続けていくし、ソウルを歌い続けていくぜ〉的な(だから、昨日までの病気のことなんかよりも明日の話をしようぜ!というような……)、感傷的な空気や回顧趣味的な気分をどこかに吹き飛ばしてしまうほど、その歌声が放つエネルギーのもの凄さだったと思うのだ。これからも彼はずっと、励まされる立場じゃなくて、いろんなことで落ち込みそうになってる奴らをその歌声で励まし続けてくれるに違いない。そうだよね、清志郎。