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第343回 ─ Incognito

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/05/08   00:00
更新
2008/05/08   17:49
ソース
『bounce』 298号(2008/4/25)
テキスト
文/池谷 昌之

本隊とファミリーの作品を三本立てでどうぞ!

 いまだに〈アシッド・ジャズ〉という惹句を伴って語られることが多いが、いまのジャイルズ・ピーターソンをそのタームで語るのが憚られるように、インコグニートも時代性を反映したアップデートを重ねてきた。今回登場した新作『Tales From The Beach』でも、持ち前のジャズ・ファンクを基調にしたハウス~クロスオーヴァーへの軽やかな越境ぶりで冴えを見せながら、聴きどころは世が求める〈インコグニートらしさ〉に応えたブルーイの手練手管だ。表題どおりに浜辺をイメージさせる爽快サウンドが並ぶ作りはまさに王道だ。ペースと質の落ちない活動で見せるヴァイタリティーはファミリー・トゥリーの広がりにも繋がり、今回はそこから2人がソロ・デビューを果たしている。ジャイルズもプッシュするシンガー・ソングライターのイマーンと、ブルーイの姪っ子であり、M.I.A.あたりを意識した音楽性のロックウッド。それぞれの作品で聴ける洗練性とポップネスはブルーイからの影響とも言えそうだ。