本隊とファミリーの作品を三本立てでどうぞ!
いまだに〈アシッド・ジャズ〉という惹句を伴って語られることが多いが、いまのジャイルズ・ピーターソンをそのタームで語るのが憚られるように、インコグニートも時代性を反映したアップデートを重ねてきた。今回登場した新作『Tales From The Beach』でも、持ち前のジャズ・ファンクを基調にしたハウス~クロスオーヴァーへの軽やかな越境ぶりで冴えを見せながら、聴きどころは世が求める〈インコグニートらしさ〉に応えたブルーイの手練手管だ。表題どおりに浜辺をイメージさせる爽快サウンドが並ぶ作りはまさに王道だ。ペースと質の落ちない活動で見せるヴァイタリティーはファミリー・トゥリーの広がりにも繋がり、今回はそこから2人がソロ・デビューを果たしている。ジャイルズもプッシュするシンガー・ソングライターのイマーンと、ブルーイの姪っ子であり、M.I.A.あたりを意識した音楽性のロックウッド。それぞれの作品で聴ける洗練性とポップネスはブルーイからの影響とも言えそうだ。