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第338回 ─ DUFFY

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/05/01   13:00
更新
2008/05/01   16:00
ソース
『bounce』 298号(2008/4/25)
テキスト
文/北爪 啓之

その可憐で艶やかな歌声に世界が感嘆!


 ここ1~2年のUKシーンは、60'sガールズ・ポップへの憧憬を表出させたアーティストたちが次々とデビューして華やかなこと極まりないが、ついに真打ちの登場――と断言しよう。その名はダフィ。エイミー・ワインハウスにも比肩する黒光りした艶やかなヴォーカル、ラッキー・ソウルのキャッチーさにアダルトな深みを加えて熟成させたような楽曲。いやいや、そんな例えは陳腐だ。きっとこのたびのファースト・アルバム『Rock-ferry』をプロデュース&ソングライティングで全面援護したバーナード・バトラーは、彼女の内側にロニー・スペクターとダスティ・スプリングフィールドの面影を幻視し、平伏したのに違いない。騙されたと思って可憐な吐息がエコー・サウンドに包まれていく“Warwick Avenue”を聴いてみてほしい。大仰しいほどのソウル・フィールが力強く脈打つ“Distant Dreamer”を聴いてみてほしい。当然21世紀仕様のモダンな音作りが施されているものの、その音の向こうからダフィにとっての〈60's〉が憧憬ではなく血肉だということがしっかりと伝わってくる。そう、彼女は唯一無二の〈新世紀の60'sガールズ・ポップ・シンガー〉なのだ。