エリック・クラズノーが語るレタスとファイアー・デプト

「だって、ヒップホップはジャズやファンク、それにソウルに由来してるだろ? だからその繋がりはごく自然なことだよ」。
そう語るのはソウライヴのギタリストでもあるエリック・クラズノー。以前からヒップホップ作品に関わってきた彼は、ファイアー・デプトの始まりをこう話す。
「2002年頃かな、最初はアダム・ダイチ、エリック&タイラー・クームスと始めたんだ。全員がその頃トラックメイクに取り組んでいてね。俺とアダムはNYにいるからよくいっしょにやるようになった。ニール・エヴァンスを加えてライヴもやったけど、現時点ではほとんどアダムと俺だね」。
いま名前の出たアダム・ダイチはジョン・スコフィールドらのバックを支えるドラマー、エリック・クームスは「ブリトニーの曲とか、毎日ラジオでアイツの演奏を聴けるよ!」とクラズノーが語るほどの売れっ子セッション・ベーシスト、鍵盤奏者のニール・エヴァンスはソウライヴの同僚となる。で、いま挙げた面々にアダム・スミルノフ(ギター)とライアン・ゾイディス(サックス)、ソロ作も発表したばかりのサム・キニンジャ-(サックス)を加えた7人組こそ、今回6年ぶりにセカンド・アルバム『Rage!』を発表したレタスだ。なお、第8のメンバーとしてデイヴ・マシューズ・バンドのラショーン・ロス(トランペット)もほぼ全曲に参加。いずれも名のあるプレイヤーばかりだが、メンバーのそれぞれにとってレタスは特別なものだという。
「そもそもは15、16歳くらいの時にバークレー音楽院のサマー・プログラムで出会ってすぐに仲良くなった連中なんだ。結局みんなバークレーに進んだから入学後すぐに結成したのがレタスさ。こんなに大勢のメンバーがいるから、どんなファンク・ミュージックだってプレイできるし。とにかく楽しんで、好きな音楽に忠実でいようっていうのが基本姿勢さ」。
今回の『Rage!』では、ワッツ110番街バンドの定番カヴァー“Express Yourself”をはじめ、ヴォーカルにドゥウェレを迎えたカーティス・メイフィールド“Move On Up”のカヴァー、さらにジャズ・ファンク好きならあっさり昇天しそうな爆裂ブロウ系のナンバーも満載。が、話の流れ的に注目すべきは故J・ディラの姓を冠した“Mr. Yancey”だろう。
「そう、ディラに捧げた曲だよ。採用はされなかったけど、タリブ・クウェリ用の曲を共同で制作したことがあるんだ。実際には会えなかったけど、ディラから送ってきたトラックに俺たちが演奏を合わせてね。“Mr.Yancey”ではファンクとヒップホップの繋がりも表現したかった。レタスの連中はいつもヒップホップを聴いているから、他の曲にもヒップホップの感性があると思ってるよ」。
現在クラズノーは初のソロ作を制作中で、ソウライヴも次作を企画中、二ールは映画のスコアを書き、アダム・ダイチはリーダー作を録音……と各人が多忙を極めているようだが、クラズノーは「レタスはずっと続くよ」とキッパリ。
「USのフェスもいくつか決まってて、日本の〈フジロック〉にも出るよ。今後もできるだけライヴをしていきたい。とにかくみんなこのバンドが大好きだからね!」。
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