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第336回 ─ OH! FUNNY BOY!!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2008/04/24   23:00
ソース
『bounce』 297号(2008/3/25)
テキスト
文/カシワサン

天才?or変人? 謎に包まれたリー“スクラッチ”ペリーの本性を暴け!!


  良質なリイシューを続けるレゲエ・レーベル、オーララックスの主宰者であり、リー“スクラッチ”ペリー研究家でもあるデイヴィッド・カッツの著書「PEOPLE FUNNY BOY 反逆の芸術・レゲエの奇才、リー“スクラッチ”ペリー~いかにして彼は神よりも自由になったのか?~」がついに日本上陸(翻訳を手掛けたのは「ボーン・フィ・デッド」でも知られる森本幸代)。歴史に残る作品を数多く生み出したことから〈レゲエ界の鬼才〉と謳われる一方、理解不能な言動で〈狂人〉のレッテルを貼られた男の実像をあきらかにしようと試みた研究本なのだが……。関係者からの証言を集めれば集めるほど一貫性を失う来歴、そしてようやくその輪郭がはっきりと見えてきたかと思ったら、ペリーの記憶の交錯と極度の妄想からくる異常な発言によってすべてパー――という繰り返し。しかし、マックス・ロメオやジュニア・マーヴィンといった縁のアーティストに加えて、アイランド・レーベルのクリス・ブラックウェルらペリーと行動を共にしてきた人々のコメントは貴重なものに変わりない。他にも、デューク・リードやコクソン・ドット、ボブ・マーリーら偉人との親交/衝突からブラック・アーク焼失の原因まで、興味深いエピソードが並ぶ。

 そんな本書と併せて、先頃大量のボーナス・トラックを追加して復刻された初期音源集『Chicken Scratch』と、名盤から珍盤までペリー作品を余すことなく収載した鈴木孝弥監修のディスクガイド本「定本 リー“スクラッチ”ペリー」もオススメしておこう。なぜなら、ペリーが天才か変人かの判断はあらゆる角度から彼を考察してもらったうえで、アナタ自身に委ねたいと思うから。