大滝詠一からアノ人への熱い(厚い)ラヴレター
大滝詠一が監修を務めた名著「フィル・スペクター 甦る伝説」が10数年ぶりに甦った! まず説明しとかなきゃならんのは、大滝にとってフィルは心の師匠的存在だということ、大滝のレーベル=ナイアガラはフィルのフィレスがモデルになっていること、そしてフィルが完成させたウォール・オブ・サウンドの発展的音楽を大滝が作り上げたこと、である。つまりこの監修役は大滝以外に考えられなかったわけだ。何度も演奏を重ねて〈音の壁〉を構築する作業。そのレコーディングを指揮したフィルの〈秘された物語〉を炙り出す本書は、辛い逸話が胸を刺しまくるけれど、少しでもアメリカン・ポップスに対する興味を持っているならば〈読まずに死ねるか〉的な一冊であると断言しよう。ちなみに、今回の増補版には、例の殺人容疑の話や、大滝による新対談も追加されている。
さて、大滝と言えば〈ナイアガラ30周年記念事業〉も大詰め段階に入っていて、ニューオーリンズR&Bやメレンゲや音頭などが詰め込まれたポップ絵巻『ナイアガラ・カレンダー』の記念エディションも登場したばかり。今回は〈78年版〉の初CD化(大ニュース!)である。そして大滝絡みのナンバーも6曲収録した、和製ウォール・オブ・サウンドのコンピ『音壁JAPAN』も同時期にリリース。佐野元春や松田聖子などの分厚~い胸キュン曲が満載だ。まったく盆と正月がいっしょに来ちゃった春ですよ!