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第84回 ─ FINE:Frogman“Cold Sleep”Party @ 代官山UNIT 2008年1月25日(金)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2008/01/31   22:00
更新
2008/02/01   15:28
テキスト
文/澤田 大輔

ジャパニーズ・テクノを代表する人気レーベル〈Frogman Records〉が、一旦その活動を休止することに。レーベルのラストを飾る一大パーティー〈FINE:Frogman“Cold Sleep”Party〉が1月25日に開催されました。 KAGAMI、TAICHI MASTER、Hiroshi Watanabe、CMJK……などなど、新旧のレーベル・メイトが一堂に会したアニヴァーサリーな一夜の模様を、bounce.comでは速報でレポートいたします!

  電気グルーヴにKEN ISHII、あるいはクラブ〈マニアック・ラヴ〉……こうした存在と共に日本のテクノ・ブームを支え、シーンを牽引してきたのが、93年に設立されたインディーズ・レーベル〈Frogman Records〉だ。ジャケットに〈日本製〉の文字を刻むなど、意識的に〈国産テクノ〉というお題に取り組み、世界に発信し続けた同レーベルが、この度、その活動にひとまずの休止符を打つ。ラスト・パーティーには、レーベルゆかりのアーティストが集結。14年に渡るFrogman史の集大成的な一夜となった。


KEN=GO→

  オープンと同時に詰め掛けた多くの人たちを、まずはレーベル主宰のKEN=GO→がお出迎え。マット・エドワーズ周辺の音源など、クリック&テックなハウスでフロアを温めながら、時おり往年のテクノを混ぜ込んで行く。ジョーイ・ベルトラム“Energy Flash”を締めに投入して、ニコニコしながらオーディエンスを煽るFrogmanオーナー。ラスト・パーティーの狂騒感とセンチな空気が、徐々に炙り出されて行く。


TAICHI MASTER

  続いて登場したのは、レーベルのラスト・リリースとなったベスト盤『FINE:The Best of Frogman』のメガ・ミックスも担当したTAICHI MASTER。テクノと平行してヒップホップも血肉としてきた男ならではのセンスが氏の持ち味。バウンシーでディスコティックなトラックを、スクラッチも織り交ぜながらガシガシと繋いでいく。そんなDJっぷりを象徴するような〈B-BOYハウス〉の名曲、スウィッチ“A Bit Patchy”が繰り出される頃には、フロアの温度も沸点に。


RIOW ARAI

  地下3階の〈SALOON〉へ降りると、こちらではRIOW ARAIのDJがスタート。世界に名を馳せるブレイクビーツ・マエストロも、そのキャリアの出発点はFrogman。そのデビュー曲“Auto Giro”のデトロイト・タッチのメロディーが〈SALOON〉を柔らかく包む。その後は、お得意のブレイクビーツから、最新作『Electric Emerald』で提示したような4つ打ち、ダーティーなエレクトロまで、バラエティ豊かな選曲で楽しませてくれた。


C.T.Scan a.k.a. CMJK

  RIOW ARAIからバトン・タッチしたのは、C.T.ScanことCMJK。近年は作曲家/アレンジャーとして裏方的な立場で活躍しつつ、一方ではDJ業にも勤しんできたJK氏。スローなハウスを起点にして、スムースかつ巧みな手さばきでテンションを上げていく。ドナ・サマー“I Feel Love”で山場を作りつつ、ポッピーズの“Can U Dig It?”を差し込んでくるような茶目っ気たっぷりのプレイに盛り上がる古参テクノ好きたち。そんな中、突如響き渡る荘厳なアンビエンス。レーベル第一作にして、当パーティーのタイトルにも掲げられた自身の名曲“Cold Sleep”が滑り出す。ベッドルームから宇宙へ。Frogmanが掲げた設立当初のテーマに呼応するコズミック・テクノに、思わず目頭が熱く……。いやいや、まだ泣くには早い。パーティーは続きます。


KAGAMI

  再び〈UNIT〉に戻ると、こちらでも“I Feel Love”が。ブースに立つのは、ジャパニーズ・テクノの第2世代を代表するもっさりチャーム・ボーイ、KAGAMI。屈託なくアッパーなKAGAMI節を炸裂させつつ、今宵は大名曲をドカドカ投下する無礼講っぷりで、フロアをさらに攻め立てる。とどめはもちろん、Frogman最大のアンセムとなった“Tokyo Disco Music All Night Long”。満員御礼のオーディエンスと共に、ピーク・タイムを鮮やかに駆け抜けた。


Quadra a.k.a. Hiroshi Watanabe

  QuadraやKaitoといった名義でも活動し、多作ぶりを見せるHiroshi Watanabeはライヴ・セットを披露。繊細なシンセ使いによるエレガントな風景描写に、うっとりと夢心地。その一方で、サウンドの中心を貫く図太いハウス・ビートが腰を捉えて離さない。欧州のテック・ハウス勢と共振しつつ、ジュニア・ヴァスケスのようなNYサウンドもバック・グラウンドに持つ辺りが、Watanabe氏のオリジナルたる所以なんだな、と感じ入った次第。


TOBY

  パーティーもいよいよ佳境へ。Frogmanの盟友とでも言うべきDJ、TOBYが繰り出したのは、驚愕のトランス祭り。Ninjaheadこと石野卓球の“Pulseman vs. Sineman”に始まり、グルーヴヤード“Watch Me Now”、サーキット・ブレイカー“Overkill”と、クラシックに次ぐクラシック。ジャーマン・トランス界隈との交流も深かったFrogmanに捧げられた、愛情あふれるプレイに、ダンス・クレイジーたちも歓声を上げて応える。電気グルーヴ“虹”まで飛び出し、天を仰ぐオーディエンス続出。

 残った出演アーティストたちによるバック・ツー・バック大会を経て、最後にブースに立ったのは、もちろん主宰のKEN=GO→。いま一度、C.T.Scan“Cold Sleep”が鳴り響き、Frogmanはついに無期限の冬眠に入った……のだけれども、「踊り足りないやつは〈SALOON〉に集合!」とのたまうKEN=GO→氏。結局お昼近い時間まで、狂騒はズルズルと続いた。レーベルは一休み、だがダンス・シーンは終わらない――そんなメッセージを勝手に受け止め、帰途に着いた。

▼出演アーティストの関連作品を紹介