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第73回 ─ ウィチタ

連載
Discographic  
公開
2007/12/20   22:00
ソース
『bounce』 293号(2007/11/25)
テキスト
文/白神 篤史、山西 絵美

新人アーティストを発掘する才に長けたUKの人気レーベルを大追跡!!

 ロンドンを拠点とするウィチタは、ブロック・パーティーやピーター・ビヨーン・アンド・ジョン、シミアン・モバイル・ディスコらを擁するインディー・レーベル。ここ数年で急激な成長を遂げた、〈いま注目しない手はない!〉と声を荒げたくなるほどホットな軍団なのである。

「ディック・グリーンと私で2000年に設立したんだ。ディックはアラン・マッギー主宰のクリエイションに立ち上げ当初から関わってきた人物で、私もA&Rとしてそこで働いていたんだけど、レーベルが解散してしまった。そこで2人でウィチタを始めたというわけ」。

 そう語るのは、レーベル・オーナーのマーク・ボウエン。ブライト・アイズのライセンス・リリースから活動をスタートさせたものの、最初の数年間はオフィスもなく、自宅を作業場にしていたらしい。その後もヤー・ヤー・ヤーズの作品などをUKに流通させるのだが、次第にオリジナル音源の製作にも力を注ぐようになっていく。そして、冒頭で述べた面々らがヒットして現在に至るというわけだ。臭覚だけを頼りにここまでのし上がってきたマークに、新人発掘の秘訣について尋ねてみた。

「う~ん、単に好きなものを追求した結果なんだけど……。強いて言えばクォリティーをコントロールすることがすべてで、むやみやたらにリリースせず、自分たちが良いと思う音だけを発表していることだね」。

 単純明快! しかし、だからこそウィチタはリスナーの信頼を勝ち取ることができたのだろう。

「ジミー・ウェッブ“Wichita Lineman”が名前の由来なんだけど、ロゴはその曲で歌われている電柱をモチーフにしたんだ。といっても、パブにあったコースターの裏にディックがその場で描いたものなんだけど(笑)」。

 こんな何気ないエピソードからも、彼らがいかに自然体で音楽に向き合っているかが窺えるはず。そんなウィチタの持つグッド・ヴァイブを、ここで紹介している作品を通じてキャッチしてみてはいかがだろうか?
(山西絵美)

▼ウィチタがライセンス・リリースしている作品を一部紹介。