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第10回 ─ ビートと言葉で闘い続けたじゃがたら

連載
Ho!楽探検 タイムマシーン
公開
2007/10/11   21:00
ソース
『bounce』 291号(2007/9/25)
テキスト
文/ダイサク・ジョビン

日本のポップ・ミュージックの歴史に残された偉大なる足跡を探してタ~イムスリップ!!


 消費主義へとまっしぐらに突き進んで浮き足立っていた80年代。肉体性を備えた強烈なビートと言葉を武器に、そんな軽薄な時代と闘い続けたじゃがたら。バンドの中心人物である江戸アケミは、音楽性だけでなくその精神性や闘争の手段として音楽を鳴らすというアティテュードでも、ジョン・レノンやボブ・マーリー、フェラ・クティといった、世界の不正や不平等に対して真っ向から闘いを挑んだ勇気ある音楽家の系譜に連なる存在だと言える。

 79年に江戸&じゃがたらとして結成されたこのバンドは、その名をコロコロと替えていた活動当初は、ステージ上での放尿&飲尿、浣腸、脱糞、流血、ニワトリやヘビを生きたまま食うなどスキャンダラスなパフォーマンスで話題を集めていた。ただ、アケミのそんな行動は、急速に反自然化していく文明に対しての〈野性を取り戻せ〉という身体を張ったメッセージだったとも捉えられる。

 82年、デビュー・アルバム『南蛮渡来』を暗黒大陸じゃがたら名義で発表。その先鋭的なサウンドと強烈な存在感で高い評価を得るが、翌年にアケミが精神疾患を患ってバンドは活動休止。85年にアケミが回復するとバンド名もじゃがたらに短縮され、女性コーラス2名を擁する大所帯アフロ・ファンク・バンドとして活動を活発化させる。89年にはJAGATARA名義で、NY地下前衛界の首領ジョン・ゾーンも参加した『それから』でメジャー・デビュー(同年に『ごくつぶし』も発表)。さらなる飛躍が期待されていたが、翌90年にアケミが入浴中に事故死して、80年代という時代と闘い続けたこのバンドはその活動に幕を下ろす。

〈エコ〉ブームなんてまだなかった時代に、暴走する文明に対して強い危機感を持ち、人類への警句を発し続けたアケミのメッセージは、21世紀の現在、さらに重要さを増していっている。