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第10回 ─ タッつぁんと谷中さん

連載
Bar YAMAGA
公開
2007/09/20   14:00
更新
2007/09/20   16:59
ソース
『bounce』 290号(2007/8/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話!

01:00am  〈タッつぁんと谷中さん〉

25時。中村達也と連絡を取りに行ったクハラカズユキが戻ってくる。「タッつぁん、電話に出ないんだよね。一応メールしといたけど」「連絡取れるといいね。あ、マイルスさんにジミヘンさん。そのバンドは本当にベースなしでいいんですか? ジミヘンさんのプレイとか制約されるんじゃないかと思うんですが……」と俺。ジミは相変わらず「〈ジミ〉デス。〈ジミヘン〉デワアリマセン」を繰り返す。マイルスは「ならばベースにこだわらなくても、低域の楽器を入れればいい。チューバとかバリトン・サックスとか。従来のバンド形態ではやりたくないんだ。誰かいい人知らないか? ムトウ君」「これまた大胆な発想ですね。バリトンならいないこともないんすけど……。ねぇ!? キュウちゃん」俺とキュウちゃんで確認する。

「やっぱり、あの人?」「うん、スカパラの谷中(敦)さん。でもいま何時? この時間に谷中さんを呼び出して、まともな話ができるだろうか?」「とりあえずメールしてみたら?」「そうだね」と、俺が谷中敦にメールを送信。するとクハラの電話が鳴る。中村達也からだ。内容はこんな感じだ。〈ぜひ興味があるからマイルスとジミと話をしたいと。ただ、いま別の場所で飲んでいるので、できれば来てほしい〉と。「武藤君! タッつぁん、イケるかも! マイルスさん、いいドラマー紹介しますよ!」とクハラ。そして、今度は俺の携帯にメール着信が。「あ、谷中さんからメールだ。返事早いなぁ」「何だって?」「……詩? ポエムだ。これは返事なのか? 何を言いたいのかがよくわからん。ここに来るのかどうかもわからん。参ったなぁ」。

 とりあえずマイルスとジミはクハラが引率して、中村達也を紹介しに別の店に移動。俺はここに残ることになった。「じゃ、また。ジミヘン……、じゃなくて、ジミさん」「モウ、〈ジミヘン〉デモ、カマイマセン」「……キュウちゃん、わざわざありがとうね。じゃあ、マイルスさんもまた」「ああ、ムトウ君。また飲もう。これで今年の〈フジロック〉で大暴れできるかな。〈グリーン・ステージ〉にでも出たいなぁ」。夢を膨らますマイルスに俺はこう言った。「マイルスさん、水をさすようで申し訳ないんですけど、今年の〈フジロック〉はもう終わりましたよ。あれ7月末なんで」。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜25時の妄想盤

LOSALIOS 『ゆうれい船長がハナシてくれたこと』 コロムビア(2005)
中村達也率いるインスト・ジャム・バンドの2作目。ギターに會田茂一を加えたことで、いつになくダイナミックな演奏を聴かせてくれます。もはやロックの範疇に収まりきらない規格外の音作りは、マイルスとジミがやろうとしているバンドに近いのかも?

東京スカパラダイスオーケストラ 『BEST OF TOKYO SKA 1998-2007』 JUSTA/cutting edge 
オリジナルな東京スカを鳴らす大御所バンドのバリトン・サックス奏者と言えば、谷中敦! 流石は作詞も手掛けるだけあって、メールも詩情感溢れるものなんですね。彼のペンによるヒット曲は、本ベスト盤にも多数収録されていますよ!

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。バンド結成10周年を記念したカヴァー・アルバム『LET'S GET LOST』(エピック)が話題を集めるなか、9月15日(土)には東京・日比谷野外音楽堂でワンマン・ライヴが決定。その他にもアニヴァーサリー・イヤーを盛り上げる企画が続々と進行中。バンドの最新スケジュールは、〈www.katteni-shiyagare.com〉でいますぐチェック!