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第6回 ─ 巨大レイヴ〈WIRE07〉高速&詳細レポート!

連載
オレらの 夏 フェス 予習・復習帳 07
公開
2007/09/06   18:00
更新
2007/09/06   18:02
テキスト
文/佐藤 譲

石野卓球が主催する恒例の屋内レイヴ〈WIRE〉。全国のダンス・フリークが大集結する年に一度の狂騒パーティが、今年も横浜アリーナを舞台に繰り広げられました。bounce.comでは、当日の模様を高速で&がっつりとレポートいたします!

  盛り上がりを見せているダンス・ミュージック、そして盛んに行われるジャンルの異種交配を受けてか、今年のWIREはスピリット・キャッチャーやレディオ・スレイヴ、ジェシ・ローズなどハウス系のアーティストや、バンド・サウンドに進化したブラック・ストロボなどが参加。例年になく振れ幅の大きいライン・アップになった。それでは〈WIRE07〉の様子をレポートしながら振り返っていこう。


DISCO TWINS (c)Kazuhiro Kitaoka

  オープニングの盛り上げ役としてだけでなく、実はその年のWIREのムードを象徴するプレイを見せるのがDISCO TWINS。そんな彼らが最初に10分にも及ぶアンビエントなトラックを持ってきたのは興味深い。前半のバック・トゥ・90'sなメロディック・テクノ、ジョルジオ・モロダー“The Chase”ネタのトラック、ベースメント・ジャックスを思わせる生っぽいサンプリングを駆使したハウス。いつになく柔らかなセットの中に彼ららしいファンキーでデケデケなノリが混ざったプレイはフロアを大いに盛り上げていた。


RYUKYUDISKO (c)Tsukasa Miyoshi

  新作『INSULARHYTHM』時の取材で、ビジュアル的なエンターテイメント性も意識したいと語っていたRYUKYUDISKOは、その言葉通り和太鼓パフォーマンスも華やかな動きのあるライヴを披露。シングル“ナサキ”など、多様化したビートもそのまま演奏の幅となり、昨年同様前半のピークを鮮やかに描いていく。


スピリット・キャッチャー (c)Tsukasa Miyoshi

  エレクトロ色の強まったデロのプレイを確認してセカンドフロアへ向かうと、デトロイトっぽいメロディックなトラックでフィナーレを飾ったミッキー・ジャンからハウス・シーンの超新星スピリット・キャッチャーへバトンタッチしたところ。ボトムの利いたビートとディスコなベース、オーロラのように美しく重なる心地よいシンセ。そんなシンプルでモダンな宇宙テック・ハウスを連発する彼らのグルーヴは、多幸感に満ちており、狂う人、続出。ヒット曲“Dirty Circuit”や“Harmonize”ではたびたび嬌声が起こり、ダンス・シーンの〈現在〉を最も感じさせるブギーなステージは、フロアをねっとりとした蜜で濡らしたのであった。

M.I.A.の新作をプロデュースしたスウィッチと共に、オルタナティヴ・ハウス街道をひた走るジェシ・ローズは、バウンシーで素っ頓狂なブレイクを見せる旬の変態ハウスでフロアを責めたてる。一方、メインフロアのミシェル・デ・ヘイも、ミニマルなテクノを中心とした渋目のセットでクラウドをガンガン揺らしていく。


ブラック・ストロボ (c)Kazuhiro Kitaoka

  そうした中で異彩を放っていたのが、バンド・スタイルで登場したブラック・ストロボだった。〈NINミーツDAF〉を思わせるゴスでインダストリアルなロックに、観客も最初は戸惑いを隠せない。しかし、黒シャツを脱ぎ、ふくよかなお腹をさらけ出したあたりから、何やら妙に吹っ切れはじめたアルノーのパフォーマンスに観客がビンビン反応。ゴリゴリのギターが炸裂する“Blood Shot Sky”“I'm A Man”でフロアは獰猛なタテノリ祭りに突入。30分が短く感じられたライヴであった。それにしてもMSTRKRFTといい、ポマードとヒゲは流行っているのだろうか。


石野卓球 (c)Kazuhiro Kitaoka

  さあ、メインフロアが人で埋め尽くされていく。お目当てはもちろんオーガナイザー、石野卓球のDJだ。幅広い選曲で楽しませてくれる卓球だけど、今年はバイレ・ファンキっぽいブレイクビーツからDISCO TWINS同様の民族音楽系サンプルを使ったハウス、ケミカル・ブラザーズ“Do It Again”のようなミニマルなテクノ、そして“Born To Be Alive”ネタのディスコ・テクノから、〈朝生〉のテーマでもお馴染みヒプノシスのトランシーな名曲“Pulstar”と、そのレンジの広さがいつになく際立ったDJを披露していた。

続いて4つ打ちのテッキーなボイパを披露したAFRA & INCREDIBLE BEAT BOX BANDは、その超弩級の音圧で観客の度肝を抜いていく。そしてこの日一番レイヴっぽさを感じさせてくれたDJを披露したお祭り大将がウェストバムだった。自慢のスクラッチを駆使しながら“Born Slippy”をプレゼントするサービス満点のDJはメインフロアの喝采を集めていく。

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介



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