11年目を迎えた今年も、大盛況のうちに幕を閉じた元祖ロック・フェス〈FUJI ROCK FESTIVAL〉。延べ127,000人のオーディエンスが集結した、3日間に渡る祝祭の模様をbounce.comでは速報でレポートいたします。各ライター陣の印象に残ったライヴを時系列に沿ってご報告。フェス参加者も、残念ながら行けなかったという方も、当日の様子をシュミレーションしながらご一読ください!
7月27日(金)

11:30~
■捏造と贋作 @ ORANGE COURT
日本のニュー・ウェイヴ・シーンに名を刻む久保田慎吾&上野耕路のデュオ・ユニットから一転、ホーン・セクションやダンサーまでをも抱え込む大所帯バンドへと変貌を遂げた捏造と贋作。レイバンのグラサンと手描きのダリ風ヒゲでシャレ込む久保田と、七三ヘアーに背広姿の上野、終始エロスを撒き散らしながらステージ上を練り歩く羽田嬢(最後はビキニに!)……と、見てくれからして、やたらウサン臭い。が、そんないかがわしさやカオスを〈ロックンロール〉という娯楽ショーに昇華するのが彼ら。ごきげんな8ビートに洒脱なアレンジと猥雑なキャバレー感覚をぶち込んだサウンドで、初めは戸惑い気味だったオーディエンスをグイグイと乗せていく。シャレともガチともつかない久保田のロック・スターっぷりに笑わされつつ、次の瞬間にはメランコリックなコーラスにキュンとさせられたり。全方位に過剰なステージは、フジの祝祭空間にぴったりでした。来年もぜひ! *澤田
12:45~
■BLONDE REDHEAD @ RED MARQUEE
個人的に今回一番楽しみにしていたブロンド・レッドヘッドは、01年の青山CAYでの来日公演を観て以来となるから6年ぶり。今年4月に発売した3年ぶり7枚目のアルバム『23』もかなりの名作だったので、こんなに早い時間なのに人はギュウギュウ。京都出身の日本人女性カズの「いらっしゃいませ」というMCに始まり、イタリア出身の双子アメデオ&シモーネ・パチェとの絶妙なバンド・アンサンブルとカズの透明感ある美声、糸こんにゃくが宙を舞うようなツイン・ギターのリフなどに夢心地。『23』からの曲を中心にプレイし、人気曲“In Particular”のイントロが鳴った時は大歓声だった。次のアルバム・リーフが急遽キャンセルになってしまったためか、予定より長くやってくれたのかも。ムーン・ウォークのようなステップで踊るカズはいつ見ても不思議な生命体だなあと思います。*田家

14:20~
■KEMURI @ GREEN STAGE
今年12月9日のZEPP TOKYOでのライヴを最後に解散が決定したKEMURI。フジロックの常連だけに今までも何度も観てきたけど、苗場で観るのもこれが最後となると感慨深いし、前列にはすでに泣いているファンの姿も。しかし、そんなメソメソした空気を一蹴するくらいに空は快晴で、そんな青空にぴったりな“Go! Under The Sunshine!”でスタート。オリジナル・ラスト・アルバム『our PMA』からの曲を1曲1曲楽しく、そして噛み締めるように演奏し、“Ato-Ichinen” ではモッシュ・ピットにサークルが巻き起こる。ヴォーカルの伊藤ふみお氏は何度も空に向けて感謝の祈りを捧げ、菩薩のように澄み切った笑顔は鳥肌が立つほど美しかった。ラストは「今日は大満足です!」というMCの後、“I'm So Satisfied!”。みんなが笑顔で泣いた至福の時間。やっぱりKEMURIにはフジが似合っています! *田家
18:20~
■OCEAN COLOUR SCENE @ RED MARQUEE
モッド魂が炸裂する燻し銀の演奏と、シンガロング系の歌メロで根強い人気を誇るOCSのステージは、10年以上のキャリアを誇る彼ららしく貫禄タップリのものだった。一曲目からいきなり代表曲である“Riverboat Song”から入ると、オーディエンスの心を早くもキャッチ。そして、続けざまに“You've Got It Bad”、“Circle”と大ヒットしたセカンド・アルバムのシングル曲をプレイする大盤振る舞いで、ブリット・ポップ全盛期に青春を過ごした方々の涙腺は決壊寸前だった模様。その後も新旧の代表曲をバランスよく披露していき、最後まで観客の心を惹きつけて離さなかった彼ら。新作を出したばかりなので、そこからの曲でセットを固めたかったのは山々だろう。しかし、そこはグッと堪え、オーディエンスの期待にしっかりと応えてみせた今回のステージは、酸いも甘いも味わい尽したベテランならではのバランス感覚の良さが光っていた。*小林

19:20~
■MUSE @ GREEN STAGE
「な、なんじゃこりゃー!」というのがライヴ中の感想。終わった時はしばし呆然。大変お恥ずかしながら生でミューズのライヴを観たのは初だったのだけど、CDの印象とは真逆。完全にこの常軌を逸したぶっ飛びバンドの虜になってしまった。真っ赤な照明の中で3人が登場し、マシューが「コンバンワ、フジー!!」と叫んで“Knights Of Cydonia”を演奏すると、銀河鉄道に乗って宇宙のディスコを滑走するようなめくるめく体験。ヘヴィで流麗な演奏とド派手な映像の壮大なるマッチングは未来のロック・オペラのようで、〈GREEN STAGE〉以外には考えられない。“Feeling Good”では拡声器を使い、噂のセルフ紙吹雪も披露。“New Born”でピアノを蹴り倒し去ったかと思えば、アンコールの“Plug In Baby”では巨大風船が舞い、“Stockholm Syndrome”の後はギターを叩き割ってドラムセットもなぎ倒す。こんな過剰なバンド、他にいないよ! 間違いなくベスト・アクト! *田家
21:00~
■YO LA TENGO @ FIELD OF HEAVEN

大充実! そう形容するにふさわしかったのが〈FIELD OF HEAVEN〉初日のトリを務めたヨ・ラ・テンゴ。のっけから“Sugarcube”に“I Heard You Looking”と人気ナンバーをたたみかけ、その後はソウルフルな“Mr.Tough”からパーカッションとコーラスだけで奏でる“You Can Have It All”まで、幅広い楽曲のヴァリエーションを提示しながら、バンド総決算的なセットを披露。特別新しいことは何もしていなかったけど、満月の下という最高のロケーションのたまものか、過去最高レベルのパフォーマンスを見せてくれたと思う。また、この日はステージ時間がたっぷり用意されていたからか、アイラ・カプランのギター・フィードバックが全編に渡って大爆発。特に本編最後に繰り出された“Story Of Yo La Tango”のアウトロでの轟音サイケ大会には思わず拳が上がってしまいました。アンコールでは、2年前の出演時に引き続き、またしてもサン・ラ“Nuclear War”のカヴァーが。*澤田

21:30~
■CURE @ GREEN STAGE
初日の大トリを飾るのはキュアー。23年ぶりの来日だけに観客の期待も尋常じゃないが、本人たちも前夜祭の最中にサウンド・チェックを行ったほどの気合いの入りよう。遂にロバート・スミスが観衆の前に姿を現すとオオオオといったどよめきが起こり、その強烈なオーラに引き込まれていく。太くて短い指で器用にギターを弾き、ギョロッとした目で会場を見つめるその表情からは何を考えているかさっぱりわからないけど、たまに「ドウモアリガトウ」「他に僕の知ってる日本語は〈ゴメンナサイ〉」「前回来た時は、冷戦の時だったね」と優しく語り、日本向けに(?)“Kyoto Song”も演奏するなど、サービス精神は旺盛。しかも金曜の満月の夜に“Friday I'm in Love”を聴くなんて、ありえないシチュエーション! “The Kiss”“Close To Me”“Boys Don't Cry”など号泣ナンバーを連発した2時間超のステージの最後は、「また23年後に。いや……もっとすぐかな」とギャグともつかないつぶやきを残し、客席の隅々まで礼をして帰って行った。*田家

22:10~
■GROOVE ARMADA @ WHITE STAGE
なんと今年は80本以上のフェスティヴァルに出演するというグルーヴ・アルマダは、それも納得の正に〈お祭り向け〉の楽しいパフォーマンスを披露してくれた。今回の彼らは、メンバー2人によるDJセットではなく、10人近くの生バンドを従えた完全フェス対応のライヴ・セット。ヴォーカリストは合計で3人も登場し、曲ごとに彼らが入れ替わり立ち代わり登場する展開は、なんとも賑やかなものだった。また、最近流行のいわゆるインディ/ダンス・クロスオーヴァーものの縦ノリのゴツゴツしたビートとは違い、しなやかで黒っぽくファンキーな彼らのビートは、人を選ばず踊らせることができるものだと改めて実感。クラブ・アクトらしくVJにも力を入れており、見ても聴いても楽しいライヴ・ステージは、ビッグ・アクトならではのエンターテイメント魂が爆発したゴージャスにして煌びやかなものだった。*小林
00:50~
■TIM DELUXE、SHINICHI OSAWA(MONDO GROSSO) @ オールナイトフジ

ティム・デラックス
今回のティム・デラックスのDJは大当たり。いつも大会場では旺盛過ぎるほどのサービス精神を発揮して、こってりとクラウドを楽しませてくれる彼だが、今回はホワイト・ストライプス“Sven Nation Army”などの大ネタをプレイしつつも、決して派手にはなり過ぎない絶妙なバランスで、気持ちよく最後まで踊らせてくれた。続いての大沢伸一も、得意のエレクトロ・セットで会場を完全にロック。クラクソンズやゴシップの定番曲はもちろん、プレイ後半には今年のフジに出演しているピーター・ビヨーン・アンド・ジョンの“Young Folks”をスピンする粋な計らいも見せ、深い時間にも関わらずクラウドを完全燃焼させていた。それにしても、今年のオールナイトフジはどういうわけか、ポール・ダンサーのお姉さんたちが沢山登場し、いつにも増して妖しげな雰囲気に。記念撮影をする殿方が大勢いらっしゃったのも印象的だった。*小林
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介