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第124回 ─ ネオ・アフロビート・ムーヴメントが勃発!?

連載
360°
公開
2007/06/14   19:00
ソース
『bounce』 287号(2007/5/25)
テキスト
文/南条 レオ


  60年代後期にナイジェリアのサックス奏者フェラ・クティによって名付けられたファンキーでジャジーなアフリカ音楽=アフロビート。これまでは、上半身裸のアフリカンたちがステージの上で本能の赴くまま踊り狂うように演奏し、客席では興奮しきったオーディエンスが暴動並みの大騒ぎ、といった感じで土臭い匂いが漂ういわゆる〈ワールド・ミュージック〉的に捉えられていた。ところがここ最近、このアフロビートに新しい風が吹き込まれようとしている。

  NYのアンティバラスが先日リリースした最新作『Security』はジョン・マッケンタイアがプロデュース。同じくNYのアコヤ・アフロビート・アンサンブルの新作『P.D.P.(President Dey Pass)』は、メデスキー・マーティン&ウッドのエンジニアを迎えて制作された。また、最近デーモン・アルバーンと新バンドを結成したことでも話題になった元フェラ・クティ・バンドのドラマーであり、アフロビート創始者のひとりでもあるトニー・アレンやアンティバラスもゲスト参加した、コートジボアール出身の女性ヴォーカリスト=ルース・タフェベ率いるアフロ・ロッカーズのデビュー・アルバム『Holy Warriors』もフランスから登場。今作ではエレクトリックなテイストが見事にブレンドされた斬新なアフロビートが聴ける。

 といった具合に、ここ1~2年の間にヨーロッパやアメリカ(特にNY)を中心にアフロビートが大きな進化を遂げているのだ。興味深いのは、現在活躍しているアフロビート・バンドのほとんどが多国籍/多人種で構成されていること。アコヤに至っては日本人のメンバーまでいる。それらのバンドがさまざまなロック・フェスに出演するなどして新たなファン層を獲得し、ジャンルの壁をも軽く飛び越える勢いを見せているのだ。つまり、21世紀型のアフロビート=〈ネオ・アフロビート〉が誕生しつつあるともいえるだろう。現在も民族紛争の最中にあるアフリカはスーダンを救済するべく作られたコンピ『ASAP -The Afrobeat Sudan Aid Project』には、アンティバラス、トニー・アレン、アコヤをはじめとする多くのネオ・アフロビート・シーンにおける重要アーティストが参加しているので、気になった方はぜひともチェックしてほしい。もしかしたら日本にもアフロビートの波が来る日も近い!?