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第121回 ─ アルゼンチン音響派発、ROVO経由、2007年宇宙の旅

連載
360°
公開
2007/06/07   21:00
ソース
『bounce』 287号(2007/5/25)
テキスト
文/編集部

 南米アルゼンチンから現れた歌姫、フアナ・モリーナの衝撃的な作品とその脇を固めるアーティスト、プロデューサーたちによってブエノスアイレスの前衛的な音楽シーンの存在は突如世界的な注目を集めることになった。当時ほとんどの日本のリスナーやミュージシャンにとって未知の世界だったブエノスアイレスのシーンだが、2002年のフアナ初来日時に同行したフェルナンド・カブサッキやアレハンドロ・フラノフといったアーティストの活動と共にその全貌が次第にあきらかになっていく。

 彼らの音楽は、従来のアルゼンチン音楽を代表するタンゴやフォルクローレといった枠だけではまったく括れないもので、むしろNYやシカゴ、そして日本のアンダーグラウンド・シーンで活躍するミュージシャンとのシンクロニシティーを強く感じさせるものだった。〈アルゼンチン音響派〉というタームで呼ばれるようになる彼らの音楽に対して、日本を拠点に活動する先鋭的な音楽家たちはすぐに呼応し、それは初来日以来驚くほどの速さと密度を持ってさまざまなレヴェルのコラボレーションに発展する。

 特に日本を代表するインプロヴィゼーション集団であるROVOの勝井祐二や山本精一、芳垣安洋らとアルゼンチン音響派シーンの結びつきは強く、お互いのホームタウンを訪れながら数々のセッションを重ねている。その記録はそれぞれ〈東京セッション〉〈ブエノスアイレス・セッションVol.#1 & Vol.#2〉として発表された。そして2006年には、アルゼンチンと日本の音楽シーンの邂逅が一過性のものでないことを証明するかのように、ROVOとアルゼンチン一派が日本各地をツアーするという企画も実現。国境やジャンルを超えて実現した奇跡的な交流の模様は、唯一無二のサウンドスケープを展開するライヴ・アルバムという形で結実することとなった。

▼フアナ・モリーナの作品を紹介。