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第12回 ─ 侍編!!

連載
iLL presents ムー 帝 国 か ら の プ レ イ リスト
公開
2007/05/10   15:00
更新
2007/05/10   18:08
テキスト
文/小野田 雄

ファースト・アルバム『Sound by iLL』をリリースしたiLLによる語り下ろしオリジナル新連載がコチラ!! iLLこと中村弘二が、地球や宇宙のさまざまな深い神秘について語りつつ、そのシチュエーションにピッタリの5曲をリストアップしてくれます。神秘はどこにでも転がっている?かもしれない? 第十二回目のテーマは〈侍〉編。下の〈iLLなプレイリスト〉を参照しながらどうぞ!!


  ここ最近はiLLのシングル(“Call my name”)のレコーディングと同時進行で(フルカワ)ミキちゃんのアルバム・レコーディングを手伝っていて、それ以外もいくつか進めているプロジェクトがあるんだけど、ちゃんと寝る時間もあるし、CD聴く時間もあるから、忙しくはあるけど、そこまで過密ではないよ。今回の〈侍〉っていうテーマも形があるものだから、前にやった〈異常気象〉っていうテーマみたいに煮詰まるほどではなかったし。調子がいい? う~ん、いいんだか悪いんだか(笑)。 〈侍〉っていうテーマに関しては、ちょっと言葉は違うけど、〈武士道〉みたいなイメージもあるし、あとは盗賊だったり、人斬りみたいな 悪いイメージの両方があって、まぁ、不良とかヤクザみたいなものかな(笑)。あとは切れ味鋭い感じとか? まぁ、〈侍魂〉みたいなものは、自分にとってはかなり距離感はあるんだけど(笑)、とりあえず、今回の選曲に行ってみますか。

  ダブって、侍っぽくないかもしれないけど、ジャー・ウーブル自体が侍みたいな存在に思えるんだよね(笑)。彼のことはP.I.L.で知ったんだけど、この人と同じようなプレイをする人がいないほどにオリジナルなベースを弾くし、誰が聴いても〈あ、ジャー・ウーブル〉ってわかるプレイはすごいよね。だから、その一匹狼的な存在感が侍に通じるっていう。あと、ジャー・ウーブルはP.I.L.以降もいろんなミュージシャンとコラボレーションしてるけど、そこでも一貫したジャー・ウーブル節を出しながらやってるでしょ。自分のなかだと、 好きなベーシストでこの人がトップかな。確か、80年代は一時期タクシーの運転手をやってたらしいけど、ジャー・ウーブルのタクシーに乗ったら違うところに連れていかれそうだよね(笑)。
 


“Tonight We Ride”が収録された、ファッキング・チャンプスのアルバム『Ⅲ』

  これは、ライトニング・ボルトが運営していた(ライヴ・スペース)フォート・サンダーのトリビュート盤で、ニューヨークに行った時にそれを作ってる日本人の女の子からもらったものなんだけど、なかでも、このバンドはメタルのリフを延々弾いていて(笑)、馬鹿馬鹿しくて最高なんだよね。彼らのほかの曲は知らないけど、この曲に関しては、一本気なところが侍っぽいな、と(笑)。侍って、武士道の美学の塊っていうイメージが一般的にはあったりするけど、俺個人はあんまりそう思ったことはなくて、むしろ、もっと違うものだったんだろうなって気がするのね。もっと日常的で、馬鹿なやつもいたんだと思うし、こういう音楽みたいな部分もあったんじゃないかなって。
 


“Ticket To Listen Ride”が収録された、エラータイプ・イレヴンのアルバム『What’s Up Pro』

  これは巷がエモコアで盛り上がってた時に出てきたバンドなんだけど、たぶん、アルバム一枚で終わっちゃったんじゃないかな。よくわからないんだけど、〈侍〉っていう選曲を考えた時、1曲ストレートなロックは入れたいなと思ったんだよね。この曲はつかみがあって、またちっちゃいつかみがあって、大つかみがあってっていう構成がロックとしてきっちり完成してるな、と。だから、ファッキング・チャンプスとは違った意味での一本気な佇まいが侍っぽいっていう解釈だよね。エモコアって、最初にその言葉を聞いた時、どんな音楽なんだろうって思ったけど、聴いてみたら別にね(笑)。だって、エモーショナルなロックって、それ、ジャンルとしてどうなのって気がするし、ロックって形容すると売れないから、誰かがエモとかエモコアって付けたんだろうね。まぁ、でも、そう呼ばれる音楽でもいいバンドはいたとは思うけど。

  これはギターの切れ味系かな。DNAはノン・ミュージシャンによるバンドっていうコンセプトも好きだし、このアイディアでこういう音楽を作られると同じようなことをやる場合、DNAが好きって言うしかないくらい、特徴的なことをやったっていう意味ではすごいな、と。楽器が弾けない人が弾くのと、弾ける人が弾けないように弾くのとでは全然違うんだよね。自分でもたまに弾けないように弾いてみようとするんだけど、どうしても弾けちゃうから、こういう音楽を最初のうちにやれたアート・リンゼイは羨ましいな、と。今のアート・リンゼイはさすがにギターが上手くなっちゃってるから全然別モノだと思うけど、この頃のプレイは好きだね。

  シェラックっていうバンドそのもの、スティーヴ・アルビニっていう人そのものの音楽に対する姿勢が侍っぽいかな。アルビニは、ビッグ・ブラック~レイプマン~シェラックもやりつつ、ニルヴァーナとかジョアンナ・ニューサムまで手掛けているけど、彼は演奏して鳴ってる音をそのまま録って、そこに色づけはしないっていう、そういうイメージがあって。その点は恐らく変わってないんだと思うよ。自分たち世代だと個性のあるエンジニアとして必ず名前が出てくる人だよね。日本だと、Zakさんも出た音をそのまま録ってくれる名エンジニアだけど、彼の場合は録った後で自分たちが色づけすることも可能だし、Zakさんも出来るしっていうフレキシブルなスタンスだと思うけど、俺がアルビニとやることになったら、色づけはしないレコーディング方法でお願いするだろうね。まぁ、でも、アルビニの方から〈色づけしよう〉って言ってくるかもしれないけど(笑)。

iLLなプレイリスト~侍編~

1. JAH WOBBLE“Betrayal”(『Legend Lives On/Jah Wobble In Betrayal』収録)
2. THE FUCKING CHAMPS“Tonight We Ride”(『Ⅲ』収録)
3. ERRORTYPE ELEVEN“Ticket To Listen Ride”(『What’s Up Pro』収録)
4. DNA“Size”(『DNA ON DNA』収録)
5. SHELLAC“The Idea Of North”(『At Action Park』収録)

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