出嶌「〈ディスコ〉って聞いて何を連想する?」
大石「なんですかね……なんかクラブよりも対象年齢が高くて、もうちょい怖いイメージがありますよね」
出「行きたいけど、このカッコで行っていいものか、とかね(笑)。で、それはカッコイイ遊び人が集っていた70年代ディスコ、みたいなイメージなんだけど、映画〈バブルへGO!!〉みたいに、もっと大衆的なディスコ観もあるわな」
大「世の中的なとこだと、それこそ〈サタデー・ナイト・フィーバー〉っていうベタなアイコンもありますけど、最近はいろんな文脈のものにディスコって言葉を使いますよね。フレンチものとかエレクトロを〈ディスコ風の~〉って」
出「そもそも、みんな〈ディスコ〉っていう言葉が好きよね?」
大「なんでですかね」
出「楽しそうだからじゃない?」
大「一方ではディスコ・ダブとかディスコ・パンクとかもありますけど」
出「だから、大衆的で間口の広いイメージと、もっと選ばれた人たちのアンダーグラウンドな遊び場みたいなニュアンスをひとつの言葉が併せ持ってるというのはおもしろいよね。そもそも、特定の音を指すものじゃないわけだし」
大「厳密にディスコという空間でかかっていた曲が全部ディスコかというとキリがなくなっちゃうし。DJの高橋透さんは〈ディスコというのは昂揚感とポジティヴィティーがあって、明るくて、でも泣けるもの〉って仰ってて。だから昔から生き残っているんじゃないかと」
出「ああ、それは素敵な話だ。ナニ、そのインタヴューはどこで読めるの?」
大「実はこの〈ALL ABOUT DISCO MUSIC〉という新刊のガイドブックにたっぷりと……」
出「……って、予定調和な前フリですな。でも、フランソワ・ケヴォーキアンのインタヴューがあって、ジョルジオ・モロダーもビー・ジーズもダフト・パンクも同じように並んでて、サルソウルもイタロ・ディスコもユーロ・ポップも並列っていう内容は予定調和じゃないね。透さんが普通にヴァン・マッコイがどうとかという話をしているのも嬉しいし、個人的にはダン・ハートマンが載せられて良かった。っていうか、相当画期的な内容だよ、この〈ALL ABOUT DISCO MUSIC〉は!」
大「言いすぎですよ。でも今回編集してみて、ディスコってのは本当に人それぞれ捉え方が違うなって思いましたね。そのディスコ観の多様さがそのままディスコ音楽の幅広さになっていると思うんですけど、じゃあディスコって何?って」
出「結局、誰がどう呼ぶかだけでしょ。だから自由すぎて、みんなが勝手に枠組とか設定しやすいというか。ラリー・レヴァンが現役でプレイしてたのと同時期に、日本ではPWL軍団の〈MEGA DISCO in 東京ドーム〉を開催してたんだしさ。好き嫌い以前に、誰がプレイしたとかいう文脈だけで聴き方を設定する人には一生出会えない種類のディスコ音楽もあるわけだから、ちょっと可哀想になる(笑)。ディスコにせよクラブにせよ、本当はそういう神話をリセットして、楽曲そのものが俎上に乗せられる場所だったはずなんだけど」
大「ストック・エイトキン&ウォーターマンとかも普通にカッコ良いなと思ったし、昔のモータウンとかフィリー・ソウルから繋がってることもわかったし。アース・ウィンド&ファイアとかドナ・サマーとかミラーボールっぽいものだけでディスコを聴いた気になってたけど、それはイカンなと」
出「イカンね~。でも、宇多丸さんにJ-Pop皿を紹介してもらってて、それが浮いてないのも画期的だと思う」
大「グラビアでは50万円のウェスト・エンドのレア皿と、アラベスクの50円の7インチを並べてますし(笑)」
出「ミーハーとされているものもアンダーグラウンドなものも、良い意味で差はないしね。まさにミラーボールのように多面的というか……リスナーそれぞれが自分のディスコを勝手に建てていいと思う」
大「読む人それぞれが自分の好きなディスコ音楽に出会えるはずなので、ぜひ読んでください!」
▼本対談のBGMを紹介。