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第5回 ─ チャールズ・ブコウスキーを囲んで

連載
Bar YAMAGA
公開
2007/04/05   18:00
更新
2007/04/05   18:33
ソース
『bounce』 285号(2007/3/25)
テキスト
文/〈Bar YAMAGA〉のバーテン

武藤昭平による、〈憧れのアーティストたちと酒場でいっしょに酒を飲んだら?〉――という深夜の妄想話

5:00am  チャールズ・ブコウスキーを囲んで

深夜5時。〈ローンドーンズバニーン、デンデケデッデッデーン〉――ジョー・ストラマーと俺は、箸でテーブルを〈デンデケデッデッデーン〉と叩きながら飲んでいる。絶好調だ。ジョーが俺に言う。「ショーヘイ、お前はフランティック・フリントストーンズのチャックに似てるな」「それ誰ですか?」。会話は成り立っていないが陽気に飲んでいる。

 そんな朝方、男2人が店に入って来た。U2のボノとチャールズ・ブコウスキーだ。「おお、ジョーにムトウ。やっぱりここで飲んでたか。今日俺、さいたまのスーパーアリーナでライヴやってたんだけど、ブコウスキーが観に来てくれたんだよ」とボノ。「俺今日リハがあって行けませんでした、スンマセン」と俺。結局4人で飲むことに。

 ボノは言う。「俺はブコウスキーの大ファンだったから今日俺たちのライヴに来てくれてホント嬉しかったんだよ。あ、ちょっとトイレに行ってくるわ」。

 興奮気味のボノが席を立つとブコウスキーが喋り出した。「ボノの奴、喜んでるから言えないが、俺じゃなく俺の嫁のリンダがU2のファンでよ。俺は嫁に付き合わされただけなんだよ。で、最近のライヴ会場は禁煙で、居心地悪いったらありゃしねぇ。結局俺はU2のライヴ中ずっとオモテでビールを飲みながらたばこ吸っててよ。まともに観てねえんだな、これが。で、なんか知らないが、ライヴ終わったら楽屋に通されて、ボノが一方的にあんな調子でくるモンだから参っちゃってよ」「でも今までずっといっしょに飲んでたんでしょ?」と俺が訊くとブコウスキーはこう返した。「だって酒おごってくれるっつうからよう。なぁ」。

 その時ジョーが目配せで合図を送ってきた。後ろを見るとボノがションボリ立っている。どうやらブコウスキーの話を聞いてしまったらしい。するとジョーが「まぁ、ボノ、ちょっとこっち来いよ。話をしよう」と、得意の兄貴肌でなだめに入った。ブコウスキーもバツが悪そうになり、俺にいたってはどうすることもできない。

 とりあえず場の空気を変えるために俺は言った。「何かみんなで別の酒でも頼んで乾杯しません? スイマセーン! あれ、誰もいないなぁ。スイマセーン!」。すると店の奥から店員が出てきた。店員はトム・ウェイツだった。

……武藤昭平、あくまでも妄想の話。

深夜5時の妄想盤

THE CLASH 『The Singles』 Epic 
77年から85年の間にリリースされた彼らの全7インチ・シングルをまとめたスーパー・ベスト盤がコレ。なお、大人な態度でボノとブコウスキーの仲を取り持ってくれたジョー・ストラマーは、メンバー同士でモメ事が起こった時も仲裁役にまわることが多かったのだそう。

U2 『18 Singles』 Interscope 
ドキュメンタリー映画「ブコウスキー・オールドパンク」のなかでも、ブコウスキーに対する想いを熱く語っていたボノ(この日と同様、夫妻をU2のライヴに招いた際のエピソードも誇らしげに語っています)。ちなみに、昨年末に日本で行われたステージは、ほぼこのベスト盤からの選曲でしたね。

PROFILE

武藤昭平
ジャズとパンクを融合させたオリジナルなサウンドで人気を博す伊達男音楽集団、勝手にしやがれのドラマー/ヴォーカリスト。4月4日にはニュー・シングル『U-K-3/IS YOU IS, OR IS YOU AIN'T MY BABY?』(エピック)を、初のライヴDVD「BLACK MAGIC VOODOO CAFE ~2006.10.14 Live At 日比谷野外音楽堂~」と同時にリリース。その他の最新ニュースは、〈www.katteni-shiyagare.com〉をチェック!