
細野晴臣が70年代中盤にリリースしたエキゾティック名盤『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』のリマスタリング盤に加え、30年間伝説となっていた〈横浜中華街ライヴ〉の音源と、その映像などをまとめた4枚組ボックス『ハリー細野 クラウン・イヤーズ 1974-1977』が登場!!(詳細はP105の連載「Ho!楽探検タイムマシ~ン」を読んでね!)。そこで今作のリリースを記念して、最新作『Songs of Instrumental』もロング・セールスを記録しているSAKEROCKの星野源との〈元祖&新鋭トロピカル・ダンディー〉対談をお届けします!!
細野「〈中華街ライヴ〉の僕の格好をして何かやってたっていう噂を最近すごい聞くんだけど」
星野「高田漣さんのライヴで、細野さんのコスプレをしたんです。“薔薇と野獣”を歌わせてもらったんですけど、すごい緊張するなぁと思ったのでちょっとでもふざけようかと(笑)。今日もここに来る間にタクシーのなかでヒゲを描いてて」
細「それでそんなにヒゲが揺れてるわけ?(笑)」
星「はい(笑)。でも、描くと不思議に気持ちが落ち着くんです(笑)。ライヴの時は写真でしか資料がなかったので、白いスーツに白っぽいネクタイで髪を横分けにして、ヒゲを描いてメガネもかけて。マリンバはなかったんですけど、マレットだけ持ってステージに上がりました」
細「それはおもしろい」
星「今回ちゃんと写真を見たらもっと模様が入ってて、〈あ、しまった〉と思って。厳密に見ると全然似てないんです」
細「(写真を見ながら)確かに(笑)。でも、あのカヴァーはすごいオリジナリティーがあるよね。SAKEROCKというバンド名はもちろんマーティン・デニー(の曲名)からだよね? 僕の時はマーティン・デニーって言うとすごい変人扱いされたけど」
星「僕もやっぱり、〈なんでそんな音楽が好きになっちゃったの?〉っていうようなことを周りからいっぱい言われましたね。SAKEROCKを組んだときも、最初は〈『泰安洋行』みたいなのがやりたい〉って言って集めたんですけど、みんなあんましピンとは来てませんでした。ところで細野さん、いまでも踊りとか好きですか?」
細「大好きなんだけど踊れないんだよ、息が切れて。星野くんはまだ若いでしょ?」
星「26になりました」
細「僕がちょうど『泰安洋行』を作ってる頃だね。歳が何周り違うんだか知らないけど、おもしろいな」
星「高校生のときにちょっと神経症っぽくなったんですけど、学校で日本民俗舞踊部っていうのがあって、そこで鬼剣舞とか踊ってたら一発で治ったんですよね」
細「僕もマーティン・デニーとか聴いて踊ってたんだよ、特に“Sake Rock”とかで。なんでかっていうと僕もちょっと神経症っぽかったんで、一発で治ったのがマーティン・デニー。〈こんなんでいいんだ〉みたいな。“Sake Rock”は気が抜けるよね、あれを聴いて(自分自身の)チューニングが緩んだっていうかね。本当にハイになって、1年くらいずっと気持ち良くて気持ち良くて」
星「部屋で一人でいると歌ったり踊ったりできますよね。僕も高校生の時に『泰安洋行』を初めて聴いて〈これだ!〉って、〈ここに全部入ってる!〉っていう気がしたんですよ。それでほぼ毎日聴いてて、飽きなくて楽しくてしょうがないって感じでした」
細「それにしても良かった。僕が持ってるだけじゃなくて繋がってく遺伝子がね、〈喜ぶ遺伝子〉っていうかそれが途切れないで本当に良かったなって思う。聴いて楽しむ人は多いけど、自分でこういう音楽をやる人がとにかく少ないから(笑)」