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第31回 ─ 椎名林檎×斎藤ネコ

連載
SPOTLIGHT!
公開
2007/03/08   15:00
更新
2007/03/08   20:53
ソース
『bounce』 284号(2007/2/25)
テキスト
文/小野田 雄

流麗なオーケストラと合体した豪奢な音世界に痺れる躍動的な新作


 フォトグラファーの蜷川実花による初監督作品となる映画「さくらん」で音楽監督を担当。その作業を発展させて、椎名林檎が4年ぶりのニュー・アルバム『平成風俗』を完成させた。その制作には、以前からたびたび共演していたヴァイオリン/キーボード奏者にして、指揮者/編曲家の斎藤ネコをアレンジャーおよび制作上のパートナーに起用。椎名林檎×斎藤ネコ名義でのリリースとなる本作は、映画の公開に端を発しているだけに、自身の前作『加爾基 精液 栗ノ花』の収録曲を中心とした7曲の既発曲と5曲の新曲、そしてローズマリー・クルーニーの名唱で知られる“Mangos”のカヴァーである“パパイヤマンゴー”という変則的な構成となっている。しかし、曲そのものの躍動感と、それを損なうことなく美しく膨らむビッグバンド/オーケストラ・アレンジが作品に隙のない統一感を与えており、その流れは実に滑らかだ。70人編成のオーケストラを従えた、ミュージカル的な世界が広がるシングル曲“この世の限り”ほか、全13曲にはプライドや規範を重んじる日本人音楽家らしい気高さと、自由な創作意欲が美しい花を咲かせている。