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第10回 ─ ROCK'N'ROLL

連載
Di(s)ctionary
公開
2007/02/15   22:00
ソース
『bounce』 283号(2006/12/25)
テキスト
文/小出 斉

さまざまな音楽ジャンルを丁寧に教えてくれる誌上講座が開講! 皆さん、急いでご着席ください!!

I ロックンロールの成り立ちと特徴

 起立! 礼! 着席! ほらそこ、私語はやめて静かにするっ! 今日の講義は、君らのような悪ガキどもにぴったりのロックンロールだ。え? 大きな声で言ってみろ。ロックンロールは死んだって? なぁ~にを生意気な。映画「アメリカン・グラフィティ」で登場人物が言ってた? お、予習してきたな。〈バディ・ホリーが死んでからロックンロールは落ち目だ〉なんていう台詞だったな。まだ22歳のホリーが飛行機事故で亡くなったのは59年だが、実際そこに至る50年代後半は、〈ロックンロールの時代〉と呼ぶしかないほどの勢いと熱があったんだ。

 もともと〈ロック〉も〈ロール〉も、性的な隠喩として黒人音楽の中では頻繁に使われていた言葉。ロックンロールの大元は黒人音楽──40~50年代に流行ったジャンプ・ブルースやリズム&ブルースなどだ。それが白人の若者にもウケていると突き止めたラジオDJのアラン・フリードが〈ロックンロール〉という呼び名をつけて一般化させたってわけだ。ここ重要! その人気に火を注いだのがエルヴィス・プレスリー。デビュー曲がブルースのカヴァーだったぐらいで、この〈黒人のように歌う白人〉青年の人気が爆発し、ロックンロールはまさに社会現象にまでなった、と。

 それまでの2ビートやシャッフルから8ビートに音楽を変化させたチャック・ベリーの存在も特大だな。ベリーは逆にカントリーの影響も受けていたんだが、ロックンロールはそんな具合にブルースを根幹にした黒人系の音楽と、カントリーを基盤にした白人系の音楽が絶妙に絡み合って生まれたというわけだ。最初の頃は12小節3コードのシンプルなブルース形式に則ったものがほとんどだったのも象徴的だね。そこにあるのは強烈なアフター・ビート、咆哮するサックスやエレキ・ギターの音、暴力的なピアノ。若者がロックンロールで有り余るエネルギーを発散させたのだが、それを理解できない〈良識ある大人〉は若者のモラルが低下すると排斥運動を起こしたほど。どんな時代にもある話だな。それから……うわっ、誰だ黒板にボールを投げたのは! ここは暴力教室か。ひとまずここまで!