ファースト・アルバム『Sound by iLL』をリリースしたiLLによる語り下ろしオリジナル新連載がコチラ!! iLLこと中村弘二が、地球や宇宙のさまざまな深い神秘について語りつつ、そのシチュエーションにピッタリの5曲をリストアップしてくれます。神秘はどこにでも転がっている?かもしれない? 第九回目のテーマは〈異常気象〉編。下の〈iLLなプレイリスト〉を参照しながらどうぞ!!
異常気象っていうテーマは異常に難しかった。この世にそんな曲ねぇよ、っていう（笑）。う～ん……、だから自分で制御、コントロールが出来ない、でっかいもの。すごいなぁと思っちゃうものっていう風に捉えてみた。異常気象を身近に感じたことって少ないし、形がないだけに非常に悩んだんだけど、ポイントはバッタとかスズメバチの大発生なんじゃない（笑）? いや、でも、それも違う気がしてきたなぁ……。まぁ、なんとかなるでしょう（笑）。
ビートルズはジョン・レノンの曲が好きだし、彼の曲を聴くと、「なるほどなるほど。分かる分かる」って思うんだけど、この曲はポール・マッカートニーが書いているのに、いい曲っていう。それが自分にとってイレギュラーなことなので選んでみた（笑）。まぁ、ポールの曲にもいっぱいいい曲があるけど、これはジョンの曲と同じように、自分の中にすっと入ってくる。雑誌なんかだと「ジョンが好きで……」ってことばっかり言ってるので、「ポールの曲にも好きなものはある」っていうことをちゃんと言っておきたかったのね。ポールの曲のどこがピンと来ないかって言うと、ポールって、みんなに受け入れられるタイプのアーティストで、“Yesterday”にしろ“Hey Jude”にしろ、みんなで歌えたり、古典を広げて構築したものだったりするから、教科書みたいな曲が多いじゃない? それはそれで面白かったりするんだけど、自分とは違ったタイプのミュージシャンって気がする。
“Don't Touch Me”が収録された、ビル・ネルソンズ・レッド・ノーズのアルバム『Sound On Sound』
この曲はね、イナゴが飛んでるように聞こえたから（笑）。異常気象っていうか、バッタ大発生。どの辺がそう聞こえるか? ビキビキいっててせわしないところ。あと、この曲が入ってるアルバムが異常な感じで、変なアルバムなのね。まとまっていて好きなんだけど、異常さが全面に出てる。この曲はアルバムの1曲目なんだけど、いきなり、“オレに触るな”って歌ってるし、「1曲目からだいぶキてるな、この人」って思うんだよね。
これはね、気持ち悪い曲なんだけど、すごく好きな曲なんだよね。このアルバムは、ファンカデリックの中ではファーストの『Funkadelic』と同じくらい好きで、いわゆるファンカデリックの作風とはちょっと違う。気持ち悪いテンションの曲をアルバムを通してやってるっていう。つまり、〈いわゆるファンカデリックのカラー〉を構築していく流れにあって、異常なアルバムっていうことで選んでみた。かなり強引って気もするけど、異常気象っていうのは変化球のことだと思ってるから。オゾン層破壊とか南極の氷が溶けて……みたいなことってあるけど、そんなこと言ったら毎年異常気象って気がするし、逆に1年前の天気と一緒の天気ってことの方が異常って気もする。だから、そういうものは刻一刻変わっていくってことを前提に、そのターニング・ポイント、ちょっと変化の幅が大きいものを異常気象と呼ぼう、と。
レッド・クレイヨラって、自分にとっては毎日聴くような音楽じゃなくて、変化が欲しい時に聴くアイディアの宝石箱みたいな感じ。しかも、「俺たち、すごいアイディアをいっぱい持ってるんだぜ」って押し付けることがないし、自然にそれがプレイに出てる気がする。だから、アイディアに詰まったりした時にこのアルバムを聴いて、「ああ、こういう気軽なスタンスもあるわけね」って思う、ミュージシャンズ・ミュージシャンみたいな存在って気がするな。自分の中ではそういうバンドって珍しかったりするから、ある意味で異常気象っぽいな、と。彼らはスタイルが限定されてなさ過ぎるのがすごいなぁ、って思う。カンにも近い部分があるけど、カンにはクラウト・ロックの伝統的なものがあるし、アルバムを聴くと、クラウト・ロックっていうことを意識しちゃうんだけど、レッド・クレイヨラはそういうスタイルを全く感じさせないんだよね。それって不思議だよね。
これはカーペンターズのトリビュート・アルバムに入ってる曲で、このアルバムを聴く前にシングルを聴いたんだけど、「えぇ～っ!? ソニック・ユースが“Superstar”をカヴァーして、レッド・クロスが“Yesterday Once More”をカヴァーするんだ? おかしなことが起きてるぞ!」ってびっくりしたんだよね。その〈どうなってんだ〉感が異常気象っぽいな、と。カーペンターズに関しては、好きな曲もあるけど、そんなに熱中しては聴かない。曲自体はポジティヴなんだけど、カレン・カーペンターが拒食症で、実は闇を抱えながらやっていたっていうところは好感を持てるし、共感も出来るけど、全部好きかって言われると、ベストくらい（しか聴かない）かな。
iLLなプレイリスト～異常気象編～
1. THE BEATLES“Eleanor Rigby”（『Revolver』収録）
2. BILL NELSON'S RED NOSE“Don't Touch Me”（『Sound On Sound』収録）
3. FUNKADELIC“If You Got Funk, You Got Style”（『Hardcore Jollies』収録）
4. THE RED KRAYOLA“I'm So Blase”（『Hazel』収録）
5. VARIOUS ARTISTS（REDD KROSS）“Yesterday Once More”（『AIf I Were A Carpenter』収録）
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