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第108回 ─ モノレールで行くファンク環状線の熱い旅!

連載
360°
公開
2007/01/11   19:00
更新
2007/01/11   19:47
ソース
『bounce』 283号(2006/12/25)
テキスト
文/出嶌 孝次

世界へ繋がるオーサカ=モノレールの新作に乗り込め!!


 ファンク──このかくも雄々しく、汗臭く、猛々しく、気高い音楽。本誌では過去に何度か〈ディープ・ファンク〉を紹介してきたが、そもそもケブ・ダージのパーティー名に由来するその言葉自体が使われなくなってきたのとは反比例して、そのマインドを継承したファンク作品が世に出される機会は増加の一途を辿っている。

 そもそもディープ・ファンク(ファンク45's)とは60~70年代ファンキー・ソウル/ファンクのレアな7インチ(と、それらに接するアティテュード)を指す概念だった。が、そうしたサウンドを現在進行形で体現するバンドやクリエイターが増加したり、リイシュー作品が普通に流通するようになったことで、マニアックな定義付けやコレクター的な価値観よりも、ニュー・リリースもリイシュー作品も渾然一体となった時代のムードのほうが重要だと気付く人が増えたんじゃないか。レア皿を眺めてるだけじゃファンクは降りてこないしね。それに気付けたなら、もう一歩進んで、〈ソウル〉にも〈ジャズ〉にも〈クラブ・ミュージック〉にもこのワンネスが存在するということを知っていただきたい、というのがこのページの主旨だ。カテゴライズする行為は楽しいし重要だけど、ファンクのモノレールはどこにでも繋がってるんです。ここでは〈ディープ・ファンク〉以降のマナーを踏まえたファンク作品を紹介していくけど……終点はないからね!

 偶然であるにせよ、長い目で見ればほとんど同時多発的なタイミングで世界各地に現れてきた現在進行形ファンク・バンドの嵐。われらがオーサカ=モノレールもザックリ言えばその流れに位置付けることができるのかもしれないが、92年の結成時から一貫して〈68~72年のファンク・サウンドを現代に甦らせる〉ことに全精力を注ぎ込んできた彼らの特殊なスタンスと、こだわりを貫けるだけのガッツはやはり群を抜いていると言えるだろう。

 これまでにライヴ盤やミニ・アルバムを含めて4枚のアルバムをリリースする傍ら、MUROやBUDDAH BRAND、SOUL SCREAMといった黒魔頭らとの共演も経験してきたオーサカ=モノレールだが、2006年の彼らはとにかく忙しかった。3月にはUKファンク・バンドの雄たるニュー・マスターサウンズと、6月にはマーヴァ・ホイットニーをバックアップしての全国ツアーを敢行し、11月には初のヨーロッパ・ツアー……以前から韓国でもライヴを行い、7インチを世界流通するなどしてきた彼らだが、そのファンク線路がいよいよ世界へと本格的に繋がりはじめたのだ。しかも、別掲したマーヴァの新作『I Am What I Am』を制作しながら、自分たちのニュー・アルバム『REALITY FOR TEH PEOPLE』も完成させてしまったのだから、その熱く燃え盛るファンク・ヴァイタリティーの凄まじさに驚嘆するしかない。

 アルバムの中身は、JB'sのカヴァー“PICK UP THE PIECES ONE BY ONE”(7インチでリリース済み)をはじめ、今回も男前なファンクが山盛りだ。リーダーである中田亮のアジテートも含め、JB~JB'sライクな展開すらメンバー個々のスキルで血肉化されているような風情が逞しいじゃないか。なお、2007年も彼らの動きは止まるところを知らず、3月に豪州ツアー、5月にはマーヴァとの欧州ツアーも予定されているという。始発はJB、終点はナシ。モノレールはノンストップで走り続けるぞ!

▼2006年の重要ファンク作品を紹介。