ファースト・アルバム『Sound by iLL』をリリースしたiLLによる語り下ろしオリジナル新連載がコチラ!! iLLこと中村弘二が、地球や宇宙のさまざまな深い神秘について語りつつ、そのシチュエーションにピッタリの5曲をリストアップしてくれます。神秘はどこにでも転がっている?かもしれない? 第七回目のテーマは〈師走〉編。下の〈iLLなプレイリスト〉を参照しながらどうぞ!!

今回「師走って何だろう?」って、すごい思っちゃって、調べたら〈なんか忙しい〉ってことなんでしょ(笑)? でも、こういう仕事をしてると、何が師走か、よく分からない。俺、フジロックの方が忙しかったんだけど(笑)。毎年ね、年末はそんな忙しくないというか、マイペースでやってるから、集中して一週間ガーッと忙しい時はあるけど、ツアーがあるわけじゃないし、ぽこぽこっとイベントがあって、その仕込みを1ヶ月前からやるっていうスタンスだから、1年通じて、そんな忙しい時ってないんだよね。むしろ、雑誌の人とか、イベンターさん、あとレコード会社の人の方が忙しがるよね。で、こっちはそれに合わせなきゃいけないから、忙しいと錯覚するんだけど、実際、この職業はそんなことないんだよね。
だから話を戻すと、今回は年末にこんな感じのメンツ、こんな曲順でライヴがあったら行くなぁっていう基準で選んでみた。師走って、物体じゃないし、思想として人が作りしものだから、師走っぽい曲って言われてもねぇ。だって、それって忙しい曲とか、そういうことでしょ。でも、それだったら忙しい時に騒げたり、暴れられる、そういう選曲でいいんじゃないかな。
これはエイフェックス・ツイン関連盤だね。この人って、突然、昔の作品を出したりするから、複雑になり過ぎてて何が出てるのかよく分からない。ただ、やってる内容はすごくいいんだよね。これは、エイフェックス・ツインの曲をオーケストラが演奏するアルバムって勝手に思ってるんだけど、最近、オーケストラっていうか、弦楽器にすごいハマってて。年の暮れに聴くと、「今年も終わったねぇ」って感じで、意外と気持ちいいんじゃないかなって思ったんだよ。しかも、俺が大好きなリチャード・D・ジェームスだし、組み合わせもいいんじゃないかなって。まぁ、師走はあんまり関係ないかもしれない(笑)。
エイフェックス・ツインの後にこの曲がどうなのかっていう話もあるけど(笑)、年末って、忙しい中、バカ騒ぎする人がよくいるじゃん。そんな感じ。スージーが年末に来日して、この曲だけやって帰っても、俺はチケット代払うし。この曲は暴れるよ、意味もなく。スージー・クアトロって、他の曲はあんまり聴かないけど、こういう典型的なロックンロールはすごい好き。難しくなくて、ノリが良くて、気分が良ければ騒いで、楽しみましょうっていう曲は好きだね。
この曲もノリがいいし、年末、騒いでる時に聴きたい曲だね。フジロックに呼べばいいのにね……って、もう解散しちゃったし、呼べないか(笑)。ラモーンズはね、たまに聴くとすごくいい。こっちが「ラモーンズ聴くぞ」って時じゃなく、こんなところでは何かかっても、どうでもいいっていう場所で流れると、「ああ、いいな」って思う。シンプルなロックンロールでありながら、フィル・スペクターとやってたり、実は音楽偏差値が高いというか、このスタイルはラモーンズじゃないと出来ないものだよね。実はこういう音楽って難しいんだよね。でさ、不思議なのは、レコード会社の人とか「ポップな曲を……」って言うじゃない? で、ラモーンズってポップだと思うんだけど、ラモーンズみたいな曲を書いても売れないわけですよ(笑)。まぁ、ポップの定義の違いがあるんだろうけど、たまに混同するんだよね。
格好よすぎ! 師走って、基本的にはロックンロール寄りになってるっていうか、悪いことしようっていう意識がぷんぷん匂ってくる。あまりに忙しいし、その発散のために今日くらい警察に捕まってもいいかなっていうマインドこそが師走っていうか、だから、こういうロックンロールが合うんだよね(笑)。テッド・ニュージェントは、このベタでありながらソリッドなギター・プレイが好きなんだけど、よく聴くアーティストではないね。まぁ、今の若い子は聴かないと思うけど、すごい面白いアーティストではあるんじゃないかな。この手の音でいうと、こないだ(メタル・フェスの)〈LOUD PARK〉があったじゃない? あれ、行こうと思ったんだけど、お目当てのミニストリーが来日しなくなっちゃって。そんな状態なのにスレイヤーで盛り上がってる場合じゃないなと思って止めたんだけど(笑)。
最後はジミヘンで。これは師走パーティのエンディングだね(笑)。ジミヘンは、これまであまり言わなかったけど、好きなアーティストで。プレイヤーとしても、作曲家としても、すごいなぁと思う。ギターの音もそうだし、弾いてるフレーズもそうなんだけど、「なんで、こんなにいい音が出せるの?」っていうくらい、すごい耳がいい人なんだなぁって。家で聴くのは、大体、こういうクラシック・ロックばっかりなんだよね。新譜だと、例えばスペース・カウボーイの新しいアルバムはすごくインスタントで、それはそれでいいことなんだけど、「インスタントに盛り上がれる曲をぽ~んとやりました」みたいなものは家であまり聴かない。それより家ではしっかりした音楽を聴きたくて、そうなるとクラシックなものになっちゃうっていう。まぁ、でも、古い音楽も普通に今の音楽だと思ってるから、あまりクラシックなものだとも思ってないんだけどね。まぁ、この曲で今年を締め括って、来年がんばろうって感じで(笑)。
iLLなプレイリスト~師走編~
1. APHEX TWIN“4”(『Acoustica - Alarm Will sound Performs Aphex Twin』収録)
2. SUZI QUATRO“The Wild One”(『Greatest Hits』収録)
3. RAMONES“I Wanna Be Sedated”(『Greatest Hits』収録)
4. TED NUGENT“Cat Scratch Fever”(『The Ultimate Ted Nugent』収録)
5. JIMI HENDRIX“Angel”(『Experience Hendrix : The Very Best Of』収録)
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