数あるRPGの中でも熱狂的ファンが多い「MOTHER」シリーズ。その最新作が、前作から8年の時を経て、今年春に発表されたことは記憶に新しいところ。そして今秋――。いよいよそのサウンドトラック盤『MOTHER3+』が登場!! ゲーム自体はもちろんのこと、「MOTHER」の中に広がる世界観のファンなど、さまざまな視点から期待が寄せられた本作には、そんな多くの声への回答と、いい意味での裏切りが内包されている。そこでbounce.comでは、プロデューサーの糸井重里、テーマ曲を歌った大貫妙子、そしてゲーマーを代表してスチャダラパーのBOSEとANIを迎えて緊急対談を決行! ……のはずが、話題はあちらこちらと思いがけない方向へ……。そんな寄り道しまくりのトークを、11月20日より〈ほぼ日刊〉で5日間連続更新いたします(23日の祝日はお休みです)!!

――――スチャのおふたりはゲームがお好きで、ゲームのサントラを作られたりしていますよね。
BOSE SHINCOはちょこちょこやってます。頼まれがちなので。
――――以前よりゲームはされなくなりましたか?
BOSE だいぶ減ったけど……普通の人よりは相当やってると思う(笑)。
ANI 今って、携帯ゲームの時代じゃないですか。テレビに向かってゲームをするっていう時間は少なくなりましたね。
BOSE ANIはね、こんなこと言ってるけど、テレビを独占するなって嫁に怒られてるだけなんです(笑)。
ANI あと、コントローラーを片付けろと。昔はずっと電源をつけっぱなしだったんだけど、嫁が「寝る時は主電源を切って一回片付けろ」と(笑)。
BOSE 「MOTHER」に関しては、「MOTHER1」も「MOTHER2」もリアルタイムだし、「MOTHER2」の時、APEから出た攻略本でテストプレイしてるんです。だからみんなより先にソフトを手に入れて、嬉しくって(笑)。「来たこの役割!」と思って3人で褒めあったもん。
――――今回の「MOTHER3」もやはり待たれていましたか?
BOSE もちろん。ゲームが一旦出ないことになった時とか、ショックでそのことを原稿にしましたもん。
――――「MOTHER」には熱心なファンが多いですよね。今回の主題歌についてネットで見たんですが、あるファンの方は、自分の思い入れのある曲に歌詞がついて人の声で歌われると、イメージが崩れてしまうんじゃないかと心配していたらしいんです。でも、いざ主題歌を聴いてみて、そういう発想自体が違っていたんだなと気づいた、と言っていました。

大貫妙子 photo by MANABU HAGIRI
大貫 よかったです。
糸井 そもそも、ゲームを作っている時に、大貫さんにテーマソングを歌ってもらうというイメージが何となくありましたから。
――――大貫さんは、歌ってみていかがでしたか?
大貫 けっこう難しいんです。器楽的なメロディなので。
――――歌詞はいかがでしたか?
大貫 歌わせていただいた段階では自分なりに考えがあったんですけど、その後、こうやって取材をうけるうちに、もうちょっとこうすればよかったかな? というのが出てきますよね。だんだん糸井さんの気持ちが乗り移ってくるから。
糸井 それはいいことだ! 今回、一番言いたいのは「迷子になっている」というところなんですよ。それが言えれば、あとはどうでもいいんです(笑)。迷子になっている人がいて、それを探している人がいる。
――――ファン同士、そういう作品の中の余白を楽しんでいるようなところもあるようです。またネット上の反応になるんですが、『「MOTHER」というゲームのファンというより、「MOTHER」の世界観のファンなんだ』というコメントがありまして。
糸井 そう作るしかないんです。世界観を好きになってもらうしかない。僕自身、落語のことを考える時に、「落語の中に住みたい」って思うんです。それを言わせるのが、好きなものっていうことだと思う。そう言われるのはとっても嬉しい。……なんだけど、その前にひとこと言いたい。まず、「作れ」と。何でもいいから、作ることです。「スチャダラの新譜はよかったけど、○曲目のあそこは~」とか言ってるやつとして死ぬより、言われるやつになって死ねと。下手でいいから、歌え。踊れ。絵を描け。その上で、感想を送ってこいと。大貫妙子でさえ最初は上手くなかったんだから(笑)。
――――作ったことない人が一番偉そうなことを言ってしまう、みたいなことですか?
糸井 そうですね。しょうがないんですよね。作る人としてものごとを見ると、全部違って見えてきますよ。僕はそこまで言いたい。
――――スチャダラのお二人は、『MOTHER3+』を聴いていかがでしたか?
BOSE 僕は最初にこの曲を聴いた時から、なぜだかわからないけど、「この曲には歌詞がつく」と思っていたんです。で、どんな歌詞がつくんだろうって、なんとなく頭の中で考えたりしてたんです(笑)。その〈読み〉とどう違っているか、という楽しみ方ができましたね。「あ、ここの4文字はそれで行くか」みたいな(笑)。

糸井重里 photo by MANABU HAGIRI
糸井 それはしびれるねえ! 嫌だけど、嬉しいねえ(笑)。
BOSE ほかのトラックは、いちゲーマーとして、ゲームを思い出しながら楽しめました。ほかの曲も歌詞がついてたら面白かったかもしれませんね(笑)。
糸井 大変なことになるけどね(笑)。“ヒモヘビのテーマ”とかね。というか、誰かが勝手にやればいいんだよ。
BOSE それこそ、ネットで感想書きあってる人たちがやればいいんだよ。昔マリオのテーマに勝手に歌詞をつけたりしたじゃん(笑)。

向かって左から大貫妙子、糸井重里、BOSE & ANI(スチャダラパー) photo by MANABU HAGIRI
糸井 「ゴジラのテーマ」とかね。♪ゴジラ、ゴジラ……。
――――ANIさんのご感想は?
ANI よかったです。この一言で。
――――では糸井さん、最後の締めをお願いします。
糸井 えー、買わなくても済むアルバムなんで(笑)。ゲームの方で、全曲ちゃんと聴けるようになっているので、そういう意味では、お金のない小学生が無理矢理買う必要はないです。ただ、CD出ないんですか? と言ってくれる人がいるから作りました。ゲームの中だけで充足するようになっているというのは、意図してそうしていて、自分たちにイニシアチブがあると、そういうことができるのがいいんです。そこまで含めて、僕の世界観です。で、僕は大貫さんに歌ってもらったのを聴きたかったので、すごく満足しています。だからこれは、すごく贅沢なアイテム。これを作った分、ほかで稼がなきゃいけない。そこまで自分の責任で考えるからこそ、こういうものを出せるんです。ほんと、大人って大変(笑)。
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