NEWS & COLUMN ニュース/記事

第5回 ─ 五輪オリンピック編!!

連載
iLL presents ムー 帝 国 か ら の プ レ イ リスト
公開
2006/10/05   17:00
更新
2006/10/05   22:18
テキスト
文/小野田 雄

ファースト・アルバム『Sound by iLL』をリリースしたiLLによる語り下ろしオリジナル新連載がコチラ!! iLLこと中村弘二が、地球や宇宙のさまざまな深い神秘について語りつつ、そのシチュエーションにピッタリの5曲をリストアップしてくれます。神秘はどこにでも転がっている?かもしれない? 第五回目のテーマは〈五輪オリンピック〉編。下の〈iLLなプレイリスト〉を参照しながらどうぞ!!


  これは選ぶのが大変だったなぁ。オリンピック、全然見ないから(笑)。開会式は好きだけど。なんでかっていうと、あれは開催国のセンスを問われるでしょ。あとはメダル何個取ったか気になるけど、内容は観たことないんだよね。東洋人的な感覚なのかもしれないけど、日本人は陸上で勝てっこない気がするし、そういうスポーツがいっぱいあるじゃん。だから、逆に柔道が勝てそうなのは、そりゃそうだよなぁって思うし。で、その勝てない勝負に勝っていくのが面白いのかもしれないし、感動するのかもしれないけど、その可能性って低いわけだから、それ以外、どこを見所にしたらいいのか、それを探すのが大変なんだよね。だから、今回はオリンピックをどう解釈するかがポイントで、特定のスポーツではなく、五輪オリンピックを一つの物体として、自分たちやその世代にどう見えているか。俺らの場合、生まれた時にはすでにあったわけだから、それってつまりは生まれながらにして、こっちは望んでいないにもかかわらず、4年に一度っていう義務感を与えられるわけで、それは何?っていうところからスタートしてるっていう。白人至上主義的だったり、企業スポーツの側面も見え始めてるし、よくよく考えると不思議なイベントだよね。何でやってるのか? どうしてなくちゃいけないのか? どうすれば一番なのか? 金が多ければいいのか? いい試合をした方がいいのか? それが今回選ぶにあたっての混乱の原因だったね。

  全然オリンピックっぽくないけど(笑)、この掴めない感じがオリンピックっぽいんじゃない? あと、オリンピックって、選手がマシンみたいじゃない? でね、オリンピックって、4年のために時間を費やして、出られない人がいたり、出たと思ったら、ものすごいプレッシャーのなか走らなきゃいけないし、練習もものすごくストイックだったりするでしょ。だから、こういう曲をバックに100m走を観るとぐぐっと空間が歪むっていうか、焦点がどんどんズレていくっていう、そういう面白さがあると思う。フリークスに関しては、モロにダンス・ミュージックですごいっていう感じじゃなく、ちょっと視点をそらすと、ロックだったり、プログレッシヴだったりして。同じ4つ打ちでも、ダンス・ミュージックっていう意識で作る4つ打ちと実はそうじゃないっていう視点で作る4つ打ちは意味が違うし、聴く人の意識も違うじゃない? 俺も別にダンス・ミュージックを作る意識は全くなかったから、そうではないことをやりつつも、ダンス・ミュージックにフォーカスを置いたギミックのある音楽がないかな? と思ってた時、出会ったんだよね。ソウルワックスやフェリックス・ダ・ハウスキャットなんかと同じく、彼らもうまいし、安易さがないよね。そう、だから、フリークスなんだと思う。

 

  ZONGAMINって、色んな曲の「こうやって曲が始まりますよ」っていう冒頭の何秒間だけを取り出して繋げたようなバンドっていう印象がある。で、曲の始まりみたいなフレーズが延々と続くから、聴いてておかしな気分になるし、「この曲、何なの?」っていううちに終わっちゃう。そのアイディアが画期的だし、面白い。だから、俺がオリンピックの本題になかなか辿り着けないところにぴったりだな、と。
 

  これは単純にものすごく疲れている曲ってことで(笑)。これだけ疲れているっていうことを表現出来てる曲は珍しいよね。恐らくグランジ時代のポーズというか、意識的にやってるんだと思うけど、ヴォーカルも演奏も疲れてるっていう雰囲気がよく出てる。多分、そういうグランジィなムードを意識的に出すっていうプロジェクトだったんだろうね。これはよく出来てる。オリンピック自体、すごく疲れたイベントって感じがするっていうか(笑)、みんな観るだろうけど、今後、盛り上がることはなさそうじゃない? だから、この曲を選んでみました。
 

  この曲はすごく簡単に選んだんだけど、アンダーワールドの音楽は今はスタンダードっていうか、パブリックなものを目指してる音楽なんだなぁ、と。今の世界のサウンドトラックを意識的に作ろうとした姿勢が最近よく分かったんだよね。普通のダンス・ミュージックとちょっと違うから色んな人が聴けるっていう。これはだから前に言ってたことと間逆なんだけど、オリンピックっていうシステムの良さに合うな、と。4年ごとに世界の人が集まって継続的に出来るようなシステム構築を内容以上に考えている点がアンダーワールドに近いかな。もう“Born Slippy”なんてやらなくていいじゃんって、みんな思ってるんだけど、実際、演奏が始まるとみんな踊ってしまうっていう。その空気を作り出すアンダーワールドってすごいよね。まぁ、ここではその“Born Slippy”はいいかなって感じなんだけど(笑)。
 

  これも1曲目のフリークスに近いけど、選手がマシーンに見える時があって、フリークスが皮肉だとしたら、こっちは割とストレートに捉えた感じかな。最近また80年代のものを聴いているんだけど、デュラン・デュランなんかがかかると今までは「デュラン・デュランだー」と思ってたんだけど、よくよく聴くとポップ・グループみたいなリズムやメロディをやってたりして、実はアヴァン・ギャルドなものやニューウェイヴを商品的にしたバンドがデュラン・デュランなんだと思って、リスペクトするようになったのね。Mは、まぁ、意識的に実験とポップ・ミュージックをやってるんだけど、売れまくったデュラン・デュランが実は同じことをやってたっていう。だから、実は両方に差はないんだよね。

iLLなプレイリスト~満月編~

1. FREAKS“The Creeps”(『The Man Who Lived Underground』収録)
2. ZONGAMIN“Serious Trouble”(『Zongamin』収録)
3. VERUCA SALT“Spiderman '79”(『American Thighs』収録)
4. UNDERWORLD“Rez”(『Underworld 1992-2002』収録)
5. M“Pop Muzik”(『Pop Muzik』収録)

▼iLLの近作品