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第4回 ─ 〈bounce.com4周年記念〉菊地成孔のチアー&ジャッジスペシャル 菊地成孔が2005年の音楽界を振り返る

第4回 ─ 〈bounce.com4周年記念〉菊地成孔のチアー&ジャッジスペシャル 菊地成孔が2005年の音楽界を振り返る(3)

連載
bounce.com 4th Anniversary Special
公開
2006/01/12   13:00
更新
2006/01/12   20:43
テキスト
文/ヤング係長


――チアー&ジャッジについても話を聞かせてください。この連載の趣旨をもう少し分かりやすくしたいなと思っていまして。

菊地 〈CD株券〉に続く批評実験のシリーズだよね。今、今日買ったCD、今日見たテレビ、今日読んだ本……。なんでもいいんだけど、外から取り入れたソフトを自分のブログに〈気に入った〉か〈気に入らなかった〉かを書き込むことより簡単で気持ちが良い事はない筈なんだよね。批評行為の、メディアによる一般化にして、死。というかさ(笑)。それに比べたら、まず書かないことのほうが難しい(笑)。みんな腹が減ったら飯を食うように、眠たくなったら寝るようにして、嫌いなものを口汚くののしり、好きなものに対して萌えまくるということをブログに書いているでしょ?

 だから、一個のものを褒めると同時にけなすっていうのは一番大変な作業になると思うんだ。それをしたい。本当のことをいうと、みんな面白がってそれをやればいいと思うんだけど、今のところそこまでは無理だから。とりあえず俺が企画としてやってみるかと(笑)。

――菊地さんは毎回トラックバック先を読まれてますよね?

菊地 読んでるけど、あれ大変だよね。読者があれをちゃんと読んでいるのかが疑問なんだ。自分の考えと全然違う人がいると、読んでいて苦痛でしょ? 読んだとしたら相当ムカムカしていると思う。自分の趣味、思想、美意識の根幹みたいなものを鼻クソみたいに扱う人もいて、それが自分のトラバの隣にいるかもしれないわけだから(笑)。

 そういう他者に対する異物感を胆力でしっかり受け入れた上でブログが流行っているとは思えないんだ。恐らく読んでいないし、読むとムカムカするし、それが耐え難いレヴェルであれば心を閉ざして読まなかったことにしてしまう。そのハードルがどんどん低くなって、違和感に対する無痛社会化が進んでいるんじゃないかな。無痛社会の果てには孤立が待っていて、無痛孤立の果てにはニートが待っている。そういう循環を面白がりながらかき回せたら良いのではないかと。ネット上では、今や〈アラシ〉というのも、文字通り嵐みたいな、つまり自然現象みたいに認識してるでしょ。まあ、そんなん言ったら、悪意やテロリズムは全部自然現象だけどさ(笑)。

――その痛みというのは、菊地さん自身が音楽家として批評される立場にあることと関係あるんでしょうか。

菊地 勿論そうだし、表現者というのは崇拝と憎悪という、二つの痛みを引き受ける仕事だし。あと世代も大きい。もう42だからね。いってみれば、「萌えってなに?」っていう世代なんだ(笑)。おっさんなわけだよ。おっさんの繰り言として「今の若い奴らは……」っていうのがあるけど、それをもっと投機的かつコンセプチャルにして、痛みの良さを知らしめていこうかなと。ずっと無痛状態でいると具合悪くなるからさ絶対。路上や荒野というのが、このままだと日本から消える。安全性と計画性だけで生きようとすればそれは当然なのよね。でも、路上も荒野も絶対に消えないから、とんでもない濃縮された形で、襲いかかってくる。〈違和感や痛みを受け入れろ〉なんていうと説教臭いから、「意外と面白いんですよ」ってプレゼンすれば、参加してくれるんじゃないかと思ってるけどね(笑)。とはいえ回を追うごとにトラバが減ってますが(笑)。

→ これまでの「菊地成孔のチアー&ジャッジ」はこちら



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