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第44回 ─ アシッド・トラックス

第44回 ─ アシッド・トラックス(3)

連載
Discographic  
公開
2005/07/14   16:00
ソース
『bounce』 266号(2005/6/25)
テキスト
文/青木 正之、石田 靖博、リョウ 原田


HARDFLOOR
『TB Resuscitation』
 Harthouse(1993)
日本におけるアシッド・ハウス人気はここから始まった……と言っても過言じゃないのでは? 303が生み出すウニウニな快感、ワイルド・ピッチ・スタイルを踏襲した盛り上げっぷり、そして最大の妙味であるリズムがすでにアシッドの完成型である不滅の傑作! ここでテクノ筆下ろしを済ませた者も多数。(石田)

JOSH WINK
『20 To 20』
 Ovum(2003)
この作品には驚いたのなんのって! しばしディープ・ハウス路線に傾倒していたはずの大御所ジョシュ・ウィンクがいきなりのリターン・トゥー・アシッド! 全編ビキビキ&ウニョウニョと蠢くサウンドで一貫したシンプルな展開。これをアシッドと呼ばずしてなんと呼ぶのでしょうか! 最高!(青木)

FREAKS
『The Man Who Lived Underground』
 Music For Freaks(2003)
アシッド古典にあたるラリー・ハード“Washing Machine”やアドニス“No Way Back”のリメイクも行っているUKのコンビ、ルーク・ソロモン&ジャスティン・ハリスによる一枚。直球アシッド・トラックは少ないが、シカゴ流儀で作り上げた酩酊ヴォーカルの効き具合はやっぱり凄い。(原田)


電気グルーヴ
『VITAMIN』
 キューン(1993)
伝説の〈オールナイトニッポン〉で日本にテクノを布教してきた電気(というより石野卓球)がついに自身をテクノ化し、シーンをも巻き込んだ大転機作かつ傑作! 303を使い倒した“Popcorn”のカヴァーに、卓球が最高傑作と語った“新幹線”! 時代が変わる、そんな瞬間の一枚。(石田)

CEEPHAX ACID CREW
『Ceephax Acid Crew』
 Breakin'(2003)
スクエアプッシャーの弟が、DMXクルーが主宰するレーベル=ブレイキンからリリースしたバッキバキのアシッド・アルバム。あまりに無邪気で狂った音のせいか、リチャードD・ジェイムスまでもが虜に。リフレックス・フリークも悶絶必死、狂気の世界。(青木)

HARDFLOOR
『Four Out Of Five Aliens Recommend This』
 Uptight Songs/Intergroove(2005)
祝カムバック! TB-303を限界まで使い倒してしまったのか、しばらく静かにしていたオリヴァーとラモンですが……その名もハードフロアという自主レーベルを設立し、“Da Revival”なんて名前も曲調も直球なシングルをリリース。このアルバムでもオールド・スクール・アシッドをいぶし銀で鳴らしてます! (原田)

MU
『Out Of Breach (Manchester's Revenge)』
 Output(2005)
パンクからハウスまで包み込む鬼才パフォーマーのムツミ・カナモリによるプロジェクト、ムー。プロデュースを手掛けたモーリス・フルトンの秘蔵アシッド曲を再構築して吹き込んだ、あの令嬢賛歌“Paris Hilton”ではチープ&マッドなトラックで絶叫!(原田)

VARIOUS ARTISTS
『Bad Acid』
 Music For Freaks(2004)
UKテック・ハウス界の雄、スワッグのクリス・ダッケンフィールドによるミックスCD。今作は21世紀産のアシッド・ハウスを中心にスワッグの名曲“Everything I Know I Learnt On Acid”も収録。デリック・カーター好きにもお薦めのパンピン盤。(原田)


ATOM
『Acid : Evolution 1988-2003』
 daisyworld(2004)
最近はセニョール・ココナッツにやや力を入れているようだが、基本的にアイデア一発勝負な多名義多リリースの発明王、アトムハート最近の思いつきである狂言アシッド・ハウス・コンピ(当然本人が全曲自演)。くれぐれも原曲を探さないように(ないから)。 (石田)

LUKE VIBERT
『YosepH』
 Warp(2003)
ルーク・ヴァイバート名義ではワープからの初リリースとなった本作。その志向はアシッド回帰に止まらず、ブレイクビーツやアブストラクト・ヒップホップをリリースしてきた経験やスキルを活かし、単なるリヴァイヴァルとは呼ばせないようなユニークさがウリ。(青木)

Dr. Shingo
『ECLIPSE』
 Television/ミュージックマイン(2004)
ドイツのフォルテからメロディアスなエレクトロで登場、クラフトワークを敬愛するという博士も、本作ではダークなテクノ・トラックにジャーマン・トランス経由のアシッディーな毒を注入。スクエア&クールなアシッド感が印象的な一枚。         (原田)

ABE DUQUE
『So Underground It Hurts』
 International Deejay Gigolo(2005)
古くはミュンヘンのディスコBでも活躍し、淫靡な初期ハウスの質感を再現してきた才能がジゴロから放ったアルバム。ブレイク・バクスターがアシッド・ハウス流儀で世界のフロアに語りかける“What's Happen”など、一筋縄ではいかない多彩さ。(原田)

buffalo daughter

『Pshychic』 V2(2004)
結成前夜にフューチャー“Acid Tracks”とビースティ・ボーイズ『Check Your Head』、そしてシルヴァー・アップルズ『Silver Apples』を持ち寄ったというbuffalo daughter。“303LIVE”はドイツ産のプログレ的な恍惚を303で溶かした名曲! (原田)

VARIOUS ARTISTS
『Acid』 
Soul Jazz/BEAT 
毎度素晴らしいコンピレーションを企画するソウル・ジャズが、シカゴのアシッド・ハウスに焦点を当ててコンパイルした2枚組アルバム。モーリス・ヨシュアの“This Is Acid”で始まり、スリージーD“I've Lost Control”、フレッシュ“Dum Dum”といったいまなお語り継がれる名曲たち、さらにはマーシャル・ジェファーソンがヴァーゴ名義で残した“Go Wild Rhythm Tracks”、リル・ルイス“Video Clash”のような実験性の高いトラック、そして現役バリバリのロイ・デイヴィスJr、グリーン・ヴェルヴェットらの楽曲、さらにはレア・トラックなども交え、まさに〈ベスト・オブ・アシッド〉とも言える内容になっている。マーシャル・ジェファーソン、アドニスらへのインタヴューや、貴重な写真も満載された50ページに及ぶブックレットも付いてお腹いっぱい! (青木)