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第9回 ─ ウィル・スミスのツルツル感、全身歌姫マライア・キャリーのムチムチ感

連載
ブラックミュージック ★ 肉 体 白 書
公開
2005/03/31   21:00
更新
2005/04/01   12:48
テキスト
文/一瀬 大志

ある時はサイト設計のデッドラインに追われるスーパー・プログラマー、ある時はTV Bros誌連載でもおなじみの理系男子コラムニスト、そしてある時はヒップホップ/R&Bのプロモクリップ映像の世界(肉体)にトコトン魅せられる一男子……一瀬大志がレペゼンする筋肉映像コラム。その名も〈ブラックミュージック★肉体白書〉。今回はスクリーンでの活躍が目立つセレブ王子ウィル・スミスと、カニエ・ウェストやスヌープ・ドッグ等がゲスト参加した新作も話題のマライア・キャリーについて。

いま肉体白書的に最も注目すべきスターといえば、なんといっても〈球界の番長〉 こと清原和博選手。先日、1.5カラットのダイヤのピアス(推定200万円)で話題になった彼ですが、焼けた肌にスキンヘッド、両耳にピアスといったその〈いかにも〉なスタイルを見て「もしや!」と思い、さっそく調査を開始したところ、ついに某写真週刊誌にて発見!  なんと、今年に入ってギャングスタ系ヒップホップを愛聴しているらしい!! やはり渋谷のジムで筋トレしながら聴いていたりするんでしょうか……。

ホリエモンと同じジムに通っているということなので、いっそのこと番長パワーで彼をギャングスタ・スタイルに改造してもらえないでしょうか?(※前回参照)そういえば某岡村ちゃんも……(以下略)。

■ Will Smith

〈肉体改造〉と言って忘れてならないのが、この男。筆者が初めて彼の姿を見たのは、そう、いまから15年前……。ブギ・ダウン・プロダクションズの“You Must Learn”のプロモ・クリップを観て「歴史を知ることは大事だなぁ」とそのメッセージっぷりに感心していた直後に流れたのが彼のクリップでした。ロッキー風にジョギングしてきたかと思ったら、さっそくヘバって地面に転げ込む彼。干し草でウェイト・トレーニングしてみたりと、まるで痩せっぽちのダメ・ボクサーなのに、何を思ったのかテレビでボクシングの試合を見た直後、ドン・キングに電話。当時ヘビー級王者で〈人類最強の男〉と恐れられていたマイク・タイソンに試合を申し込む始末。

そして、プロモ・クリップにはなんとマイク・タイソン本人登場。もちろん本人を前になす術もなく、あっという間にボコボコにされてマットの上にノビる彼。そんな彼のどうしようもなくダメな姿に、当時高校生だった俺のハートは見事にわし掴みにされたのでした。

その DJジャジー・ジェフ&フレッシュ・プリンス“I Think I Can Beat Mike Tyson”から11年後の2001年。〈新鮮王子〉から〈俳優ウィル・スミス〉として立派に成功しつつある彼の姿を遠くから見守っていた筆者の元に衝撃のニュースが飛びこんできました。なんと、あのダメ王子が、伝説のボクサー「モハメド・アリ」の役をやるというではありませんか! しかも、パロディではなくマジ映画で!! 果してあの痩せっぽちの彼が、そしてタイソンにボコボコにされた彼がヘビー級チャンピオン「アリ」の役なんてできるのでしょうか? またあのときみたいに1ラウンドKOされて、控室でセコンドのジャジー・ジェフに励まされたりするんでしょうか?

もはやそんな心配は無用でした……。スクリーンに現れた彼の体は、これまでとはまったくの別人のものでした。もちろん、過去の映画で立派になった彼の姿は知っていましたが、今回の役では単に筋肉を付けただけではなく、その量感においても、見るものにヘビー級ボクサー〈モハメド・アリ〉としての肉体を感じさせるものでした。しかし、いくら鍛えたといえども彼の肉体の最大の特長である〈ポップなツルツル感〉だけは残っていました。顏から体までのあのなんとも言えないツルツル感。頬からあごのあたりまでヒゲをはやしておいて、あれだけのツルツル感を感じさせるアーティストは他にはいないでしょう。

そんな香取慎吾にも勝るとも劣らないポップな質感を武器に、お茶の間からスクリーンにまで入り込んでいった彼ですが、先日発売された新作からは何やらちょっと違った臭いが漂ってきています。タイトルは『Lost and Found』。直訳すると〈忘れ物預かり所〉といったところでしょうか? ファースト・シングル“Switch”のクリップも、廃屋の地下室を改造したようなスタジオで、オトコ気満載にジャ・ルールよろしくがなり声を上げていたりとなかなかハードコアな仕上がり。忘れ物預かり所に取りに戻ったのはどうやら〈新鮮王子〉のモノではなさそうです。

■ Mariah Carey

一方、常にその肉体っぷりが注目されているアーティストと言えばこの人。28日の来日時にも、素肌にジージャン、そして〈付けチクビ〉といった、そこらの単なるセレブ気取りではけっして真似の出来ない、本格セレブならではの堂々としたスタイルで成田コレクション(通称:成コレ。サッカーの中田選手などが有名)を飾った、マライア・キャリー(35)。もはや〈7オクターブの歌姫〉というキャッチフレーズを軽く忘却の彼方に押しやってしまうほどに激しく迫るその肉体は、見るものすべてに許容範囲のギリギリ感を与えてしまう、まさに〈熟れすぎた果実〉。30日に日本先行発売されたニュー・アルバム『MIMI』のインナースリーヴの最初の写真を見たときに、思わずジュディ・オングの『魅せられて』(女は海)が脳内BGMとして流れてしまったファンも多いはずだ。

インタビュー時はいつもホテルのソファに横になって間接照明に照らされているイメージの彼女。食べ物に例えるならば、それはコクのあるハーゲンダッツのアイスクリームで作ったチョコレートパフェ。車で言えば、グラマラスなボディに高性能エンジンを積んだマイアミあたりのゴージャスなカスタム・カー。そんな己の肉体を全世界にむけて惜しげもなく披露する彼女の存在は、ポッチャリ系とムチムチ系の境を行き来しがちな日本のヤング女子にとって、まさに希望の星だ。

ゲスト陣にスヌープ・ドッグ、ネリーにトゥイスタ。プロデュース陣にカニエ・ウェストやネプチューンズといったヒップホップ色が濃そうなところばかりに話題が集中している今回のアルバム。しかし実際に聴いたところ、これまで以上にヒップホップとバラードとのバランスがうまく取れており、初期の頃からのファンも満足できる仕上がりとなっている。やはり、あの堂々としたスタイル(素肌ジージャンに付けチクビ)は、この実力があってこそのものなのだ。

常にツルツルのポップさを保ちつづけるウィル・スミス(36)。マライア・キャリー(35)ともども同世代同士、今後のさらなる活躍に期待したい。