「楽しんで観たよ。ラリーと80年代の音楽についての素晴らしいトリビュート作品だと思う」。
映画「マエストロ」についてそう語るのは、3台のターンテーブルを操り、レコードに込められたメッセージをフロアに投げかけてきたマエストロ、ニッキー・シアーノ。本編にはあまり登場しませんが、70年代初期~中盤にかけ開催された彼のパーティー〈The Gallery〉はラリー・レヴァンやフランキー・ナックルズがキッズ時代に通った(デコレーションや照明を手伝っていたという)特別なルーツでもあります。
「〈The Gallery〉は、何もない空間を改造して作られた最初のクラブだった。当時の僕は、平日は〈Studio 54〉で、週末は〈The Gallery〉でDJをしていたんだ。〈54〉は非常に商業的なクラブだったから、クラフトワークの“Trance Europe Express”をかけたのを機に解雇されたんだけど。(3台のターンテーブル使用については)効果音のレコードをずっと重ねられるように使いはじめたよ。MFSBの “Love Is The Message”にエフェクトを重ねたらクラウドが大合唱し、あまりの騒音に警察が来たのを覚えている」。
そんな当時の雰囲気を伝えるべく彼が選曲したコンピが、昨年リリースされた『Nicky Siano's The Gallery』。ここにはポインター・シスターズ、トランプスらの〈ギャラリー・クラシックス〉がズラリと並んでいます。
「収録された曲の多くは75年以前の曲で、商業的なディスコにも影響を与えた曲。初期のシーンのベスト・ミュージックでありつつも、今日あまり聴くことができない名曲群だね。後のディスコの盛況はシーンの衰退にも繋がったんだけれど……」。
故アーサー・ラッセルのエピソードなども飛び出ましたが、文字数の関係上ここまで。最後にニッキーから、音楽を愛する日本のファンへのメッセージを。
「君のハートすべてで夢を信じていれば、その夢は現実となる──Love Is The Message」。
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NICKY SIANO
〈The Loft〉を手掛けたアレックス・ロスナーをエンジニアに迎え、71年にNYで〈The Gallery〉をオープンしたDJ。78年にはアーサー・ラッセルと共同のダイナソー名義で“Kiss Me Again”を制作してヒットを記録。多くの友人をエイズで失ったショックからリタイアしていたが、近年に活動再開。
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