ある時は超巨大資本企業のシステム設計に携わるスーパー・プログラマー、ある時はTV Bros誌連載でもおなじみの理系男子コラムニスト、そしてある時はヒップホップ/R&Bのプロモクリップ映像の世界(肉体)にトコトン魅せられる一男子……一瀬大志がレペゼンする筋肉映像コラム。その名も〈ブラックミュージック★肉体白書〉。第三回はLLクールJ&ビヨンセの筋肉を解く!
世界中から集まった、それぞれの競技に最適化された肉体。それが緊張したり、解放されたりするさまに眠れぬ夜を過ごしている肉体派諸君も多いのではなかろうか? かくいう筆者も、4年に1度のガチンコ肉体ドラマを観ては、夜中トイレに立つたびに、NHKの五輪テーマソング“栄光の架橋”をうろおぼえ気味に口ずさんでしまう毎日だ。それにしても、無性に卓球をしたくなったり、ハンマーを投げたくなったりするのはなぜなのだろうか? それは単に、愛ちゃんの掛け声や室伏アニキの雄叫びをマネしたくなっているだけなのだろうか? やはり、体を動かして衝動的に声を出すというのが生物本来のスタイルなのだろう。ディスプレイに向かって黙々と指先だけを震わせる毎日は、やはり異常なのだ。
■ LL Cool J
オリンピック競泳男子平泳ぎ。金メダルをとった北島選手を見るたびに、なぜか思い出してしまうのが、〈Ladies Love Cool James〉 こと、LLクールJだ。

一昨年発表のアルバム『10』のジャケット写真。マイクが小さい(上腕二頭筋が大きい)
84年。デフジャム第1号アーティストとして16歳でデビュー。オールドスクールなズンドコビートに飛んだり跳ねたりしていたかと思えば、元祖バラード・ラップ "I Need Love" で女子チームをメロメロにし、そのナンパ路線に反発した男子チームに対しては、最強筋トレ・チューン "Mama Said Knock You Out" をお見舞いするなど、ハードコア男子からメロウ好き女子まで、アメとムチを使いわけた活動で一世を風靡。さらに90年代に入ると俳優としても様々な作品に出演し、もはや映画ファンの間でも「ディープ・ブルー」の最強コックとして有名だ。デビューから20年目を迎え、36歳となった今年。ヒップホップにおける成功のすべてを手に入れてもなお、その活動はとどまるところを知らず、逆にその肉体には磨きがかかるばかり。
そんな彼の肉体を語る上でかかせないのは、なんと言ってもその見事に割れたシックスパック(腹筋)だろう。一昨年前に発表された "Luv U Better" や "Paradise" の PV におけるその腹のゴージャスさは記憶に新しいところだ。そしてこの夏届けられた、新作『The DEFinition』からの1stシングル "Headsprung"。ティンバランドをプロデューサーに迎えてのフロア向けチューンということで、その PV に期待が高まっていたのだが、それを観た感想をひとことで言うと……「なんだ、着衣かよ!」。
これまではシャツの下は上半身ハダカだったり、なにか着ていたとしてもすぐに脱いでくれた彼だったが、残念なことにここでは最後まで脱がない。見せてもせいぜい腹チラ程度だ。これはPVの中で、最近彼が立ち上げた自身のファッション・ブランド〈James Todd Smith〉の商品を着用しているからかもしれない。キャップを斜めに深くかぶってそのツバをいじる様子は、まるでアッシャーの "Yeah!" だ。もし、アッシャーを意識してるのなら、彼のように今後のシングルで徐々に露出を上げていってくれることを期待したい。個人的には R.ケリーが参加している3曲目 "I'm About To Get Her" をシングルカットして「うねる腹筋対決」、5曲目の女子必殺チューン "Hush" で「静寂の中ゆっくりと波打つ肉体」といった映像を堪能させてもらいたいところだ。
で、最初の問題「なぜ北島選手で LL を思い出すか」についてだが、それぞれに共通する要素が判明したことで、一応の解決をみた。以下にその共通要素を示す。
・上半身ハダカに帽子 (北島選手は水泳キャップ)
・マジ顏なのに童顔
・だけど、首から下はマッチョ
■ Beyonce
グラミー賞で5冠を制してみたり、ペプシのCMの豪快なケツ振りで視聴者をロック・ユーしてみたりと、いま最も勢いに乗る女性アーティスト、ビヨンセ。

ビヨンセ。スリムなボディと相反するように大臀筋が突き出ている
俳優業の方も順調で、「オースティンパワーズ」のヒロイン役に続き、今度は「ピンクパンサー」のリメイク映画に出演することが決定。さらには10月から自伝映画の撮影がスタートするといったニュースが飛び込むなど、映画界まで制覇しそうな勢いだ。
ファッション界においても、いくつもの女性誌の表紙を飾り、セレブ系ファッション特集では、その名前を目にしないことがないほどの露出っぷり。もちろん、その姿は、日本におけるヒップホップ広報部長、明石家さんま氏の目に止まり、27時間テレビ恒例「さんまのラブメイト10」において、今年堂々の6位にランクイン。巨乳好きのナイナイ岡村氏もひと目で認めるそのナイスバディぶりが、ついに全国のお茶の間において認知されるに至った。
このように音楽ファンが思っている以上に世の中に浸透しているビヨンセであるが、その肉体の魅力といえば、なんといっても、あの腹筋が浮きでるまでに鍛えられた腰と、それを動力源に暴力的に振られるデカ尻の組み合わせだろう。この完璧なブラック・ウーマン・ボディーの魅力は先月発売されたCD+DVDの2枚組『Live At Wembley』で、いやというほど堪能できる。腹から産み出される声とそこを中心に自在に動く下半身に、ビヨンセの魅力の70%以上が〈腰〉なんだということを改めて思い知らされるだろう。
夏バテ気味の女子も思わず腹筋したくなること間違いナシのこの1枚。最近彼女の腹具合に不安をかかえる男子チーム諸君は、なにげにプレゼントとして贈ってみてはいかがだろうか?