多様な文化が入り交じった港町で、陽気でユニークなハイブリッド・ミュージックが生まれた――それがニューオーリンズ・ファンクだ!!
ルイジアナ州の港町、ニューオーリンズ。スペインやフランス、カリブ、アフリカなどの文化が混じり合ったこの町は、これまでに多種多様な音楽と文化を生んできました。死者をゴキゲンなマーチング・バンドと共に弔う習慣もそのひとつで、このパレードで演奏されるのが〈セカンドライン・ファンク〉。その絶妙にハネたビートは現在でも受け継がれ、ニューオーリンズ・ファンクの特徴のひとつとされています。また、マルディグラ(フランス語で〈謝肉祭〉の意味)と呼ばれるカーニヴァルもニューオーリンズ文化にとって重要な要素。一方では、マルディグラに参加できないゲットーの黒人たちが自身を〈マルディグラ・インディアン〉と呼んで独自のスタイルでマルディグラを祝うようになり、多くの優れたアーティストたちを輩出したことも忘れてはいけません。
ジャズやリズム&ブルースにおいても独自のスタイルを形成した音楽の町、ニューオーリンズ。この町の多様性と喧噪がギッシリと詰まったのがニューオーリンズ・ファンクなのです。(編集部)
THE METERS
『Struttin'』 Rhino(1970)
ニューオーリンズ・ファンク・バンドの代表といえばミーターズ!! アラン・トゥーサンのプロデュースのもとで70年代のニューオーリンズ・シーンを席巻したアナーキーな4人組です。ジョシー時代の3作品はすべて名盤で、なかでも数曲でヴォーカル曲を加えたこの3作目は名曲揃い。シンプルなのに粘り気たっぷりの、シンコペーションの効いた強力なセカンドラインも満載で、ニューオーリンズ・ファンクを知るにはまずはこちらから。クールなジャム感覚にもシビれます。(秋山)
THE WILD MAGNOLIAS
『The Wild Magnolias』 Polydor(1974)
マルディグラ・インディアンのトライブ出身バンドのなかから、ニューオーリンズを代表する名バンドのデビュー作を。多用されるパーカッションやコール&レスポンス・スタイルでの歌唱などは実に原始的だけど、だからこそ聴くうちに本能的な興奮が呼び起こされます。熱くネバリつくファンク・ビートにもアドレナリンが出まくり! そして毛穴開きっぱなし! 彼らが独自に培った宗教観や伝統が息づく不思議なアナザー・ワールドに引き込まれます。(秋山)
PROFESSOR LONGHAIR
『Crawfish Fiesta』 Alligator(1980)
ニューオーリンズの名物料理であるガンボのように、いくつものクレオール文化をおおらかにゴッタ煮したニューオーリンズ・サウンド。その魅力をもっとも体現したピアニストが彼。この遺作では、縦横無尽に転がりまくるローリング・ピアノを軸にした、底ヌケに陽気でユーモラスなカーニヴァル・サウンドを聴くことができます。また、そのなかに哀愁をも内包するスケールの大きさも最高。この天才音楽家を聴かずしてニューオーリンズ・ファンクを語るなかれ!(秋山)
THE NEVILLE BROTHERS
『Fiyo On The Bayou』 A&M(1981)
ミーターズ解散後に同バンドの中心メンバーで結成され、80年代のニューオーリンズ・ファンク・シーンを引っ張って〈世界最強のライヴ・バンド〉と讃えられたのがこのバンド。今作は、ネヴィル4兄弟の叔父にあたるマルディグラ・インディアンのビッグ・チーフ・ジョリーへの追悼盤として制作されたセカンド・アルバム。カリブのサウンドも採り入れつつ、ニューオーリンズ・ビートの理想型をひたすら追求し続けた彼らのスタイルを知るのにはベストの代表作です。(秋山)
CHARMAINE NEVILLE
『Queen Of The Mardi Gras』 Gert Town(1998)
かのネヴィル・ブラザーズのチャールズを父親に持つシャーメイン・ネヴィルは、ニューオーリンズきってのおてんば娘。そんな彼女の名刺代わりとでも言うべきアルバムが98年にリリースされた本作だ。“Iko Iko”を始めとする個性豊かな楽曲の魅力、全編ブラスとパーカッションに彩られたお祭りムード、そして濃密なファンキー・グルーヴ。それらが燦々と輝き出す瞬間が素晴らしい。聴き手の心をグイグイと引っ張ってくれる一枚です。(柴川)
GALACTIC
『We Love 'Em Tonight -Live At Tipitina's』 Volcano(2001)
90年代のニューオーリンズ・ファンクのスタンダードを形作ったグループ、ギャラクティック。〈フジロック〉を含む5回の来日でお馴染みの彼らが、2000年の暮れに地元で行ったライヴの模様を収録したのがこのアルバムだ。スタントン・ムーアのドラムとサックスやハモンド・オルガンなど各楽器との有機的インタープレイ、そこから生じる高密度の白熱グルーヴが凄まじい。ニューオーリンズの狂騒と当時の彼らの充実ぶりが窺える貴重なドキュメント盤だ。(柴川)
DR. JOHN
『Gumbo』 Atco(1972)
長い間、そしてこれからも音楽の都ニューオーリンズへの水先案内役を務める歴史的名盤。冒頭を飾る名曲“Iko Iko”をはじめとするクラシック・ナンバーを全12曲収録。御当地独特のセカンドライン・ファンクはもちろん、リズム&ブルース、ジャズ、トラディショナルまでを幅広く収めた死角なしの内容だ。これからニューオーリンズ音楽の世界へと旅立つリスナーにとっては1を知って10を悟らせてくれる、なにはともあれ必携の美味しい一枚。(柴川)
ALLEN TOUSSAINT
『Southern Nights』 Reprise/Warner Bros.(1975)
アレンジャー/ソングライターとしても活躍し、ミーターズやリー・ドーシーなど数多くのアーティストたちのプロデュースも手掛けてきたニューオーリンズ屈指のヒットメイカー、アラン・トゥーサン。今作は彼の4作目で、バックを固めるのはミーターズ。美しくて甘いメロディーとメロウな歌心に溢れたリズム&ブルース・ナンバーのひとつひとつからトゥーサンの卓越したセンスを感じ取れます。彼の才能をじっくりと堪能できる、洗練された哀愁ファンキー・アルバム。(秋山)
EARL KING
『Street Parade』 Fuel 2000(1981)
昨年訃報が届いたニューオーリンズ・リズム&ブルース界を代表するギタリスト、アール・キングとミーターズとの72年のセッションを収めた一枚。朴訥としていてイナタく、哀愁もたっぷりながらすっとぼけた味わいもあるユル~いオッサン・ファンクには、彼の地ならではの魅力がギッシリ。今作は50年代から味のあるプレイを披露してきた名プレイヤーである彼の作品中もっともファンク色の強い一枚で、彼のワン&オンリーな魅力が爆発!! オッサンもカッコ良いのだ!!(秋山)
THE DIRTY DOZEN BRASS BAND
『Live : Mardi Gras In Montreux』 Rounder(1986)
ニューオーリンズといえばジャズ発祥の地。でも、セカンドラインのブラス・バンドが町中を練り歩くカーニヴァルも伝統のひとつ。数多のブラス・バンドのなかでもひときわファンク・バンドとしての資質を持ったこのバンドから一枚を選ぶとなると、デビューの翌年にリリースされたこのライヴ盤。オーディエンスの熱気、会場を包む開放的なグルーヴ……そんな最高に楽しくてゴキゲンなステージをそのままパックした、ニューオーリンズ音楽の醍醐味が満載の一枚です。(秋山)
PAPA GROWS FUNK
『Doin' It』 Papa Grows Funk(2001)
ジョージ・ポーターJrを始めとする数々のセッション活動で活躍してきたオルガン奏者、ジョン・グロスとギタリストの山岸潤史を中心にしたグループ。デビュー作となる本作では、大盛況だった来日公演を想起させるような、ニューオーリンズの〈現在〉を感じさせるファンク・サウンドが満載だ。トリッキーなハモンド・オルガンを軸にしながら、緩急を自在に付けた展開も見事。ロックやジャズのスパイスを効果的に効かせているあたりも持ち味だ。(柴川)
JOHNNY SKETCH AND THE DIRTYNOTES
『Bandicoot』 Full Frontal(2002)
〈ポスト・ギャラクティック〉の最有力候補として一躍その名を上げたグループのデビュー・アルバムがこちら。専門誌「Off Beat」による2002年度の読者投票で〈最優秀新進ルーツ・ロック・アーティスト〉に輝くなど数々の賞を受賞した彼らだが、ブラス隊を含むバンド編成を活かし、ファンクとロックが融合された荒武者ばりのサウンドを展開している今作を聴けばその理由もわかるはず。他のバンドには見られないヴァイオリン奏者が在籍しているのも特徴的だ。(柴川)