「バンドを作ってからは40年さ。苦労したこともあれば、有頂天になったこともある……」と、グループの活動を振り返ってくれたのはリーダーのロバート“クール”ベル。クール&ザ・ギャング(以下K&G)がレコーディング活動35周年を記念し、彼らの音楽を愛してやまない英米のアーティストを招いて、セルフ・トリビュート・アルバム『The Music Odyssey』を完成させた。
「新作を作ろうとして縁のあるアーティストに声をかけはじめたら、こんな企画もアリだなと思えて取り組んだのがこのアルバムなんだ。最初に声をかけたのはジャミロクワイだったかな。“Hollywood Swingin'”は、ジェイ・ケイが原曲を好きでたまらなかったらしくて、共同で仕上げたんだ」。
演奏はグループの自前によるもの。往年の名曲をフィーチャリング・アーティストたちがそれぞれの持ち味で解釈しているところが素晴らしい。
「ブルーとやった“Get Down On It”にリル・キムを招いたように、ラップのネタに使われた曲にはそれを使った人に歌ってもらう……みたいな遊び心は示してみたつもりだよ。ほとんどがヒット曲だけど、ブラックストリートが取り上げた“No Show”はテディ・ライリーらしいヒネった選曲だと思うよ。彼は普通のファンとは違うね。プロデュースもテディなんだ」。
かつて“Jungle Boogie”をサンプリングしていたレッドマンが、その“Jungle Boogie”を本家と共演するなど、興味深いコラボレートは多数。メンバーもサンプリングされた曲に対しては格別の思いを抱いているようだ。
「だから本当は“NT”とか“Who's Gonna Take The Weight”なんかもやりたかったんだけど、何せ歌がないからね。それらはまた違った形でプロジェクトにしたいと思う」。
印象に残ったセッションについてはこうだ。
「特にホットだったのはブルー・カントゥレルかな。彼女との“Take My Heart”は生バンドによるセッションもあって、それが日本盤のボーナス・トラックになる。ショーン・ポールとスパナー・バナーもたまらない組み合わせだろ? そうそう、ユッスー・ンドゥールとの“Summer Madness”も最高だったな。ローリン・ヒルがバック・ヴォーカルで参加してくれて……」。
冒頭を飾るビヴァリー・ナイトをはじめ、女性アーティストの歌声で甦ったナンバーも数多い。
「アンジー・ストーンの“Jones Vs. Jones”は正直オリジナル以上かもな。もともと女性が歌ったほうが真実味のある曲だし。あとアシャンティの“Cherish”はどうだい? 彼女は、曲のまた違った表情を可憐に歌ってくれたよ」。
若手だけでなくジミー・クリフのようなレジェンドの参加もあり、あのK&Gが「緊張した」録音もあったとか!
「自分たちの音楽がこれほどまで親しまれているということがわかって本当に光栄だった。いまは最高の気分さ。参加者全員にリスペクトを送りたいよ」。
ところで現在のK&Gは、ロバート以下、リズム隊はほぼ健在。1曲だけ収録されたグループ名義の新曲“Stressin”、これがまたいい。
「70年代っぽい感じで気持ち良くジャムしよう、みたいな感覚のフリー・ファンクさ。あまり難しいことは考えてないよ。マイペース、それがいちばん。いい音楽は時代に左右されないで求められ続けるんだよ。それがわかっていれば、何で焦る必要がある?」。
40年の音楽遍歴=〈The Music Odyssey〉を誇る彼らだからこその余裕。そのフリーな気分こそがグループの原動力なのだ。
▼宇宙ガイドに入りきらなかったトリビュート参加者の作品