70'sルーツ・レゲエの屋台骨を支えてました
ミリタント・ビート――弾丸のようなドラミングと歌うようにメロディアスなベースライン。それが70年代にスライ・アンド・ロビーが発明したビートである。
70年代半ば、反体制、反西洋文明的なメッセージを掲げたリリックを歌うレゲエ・シンガーやDJたちが主流を占めた時代。ジャマイカ・キングストンのゲットード真ん中に位置するスタジオ、チャンネル・ワンのセッション・プレイヤー集団であるレヴォリューショナリーズの中心プレイヤーとして、そのアグレッシヴさ、闘争をテーマにしたリリックにピタリとフィットするサウンド/リディムをイノヴェートしたのがスライ・アンド・ロビーによる革新仕事の皮切り。そのプレイぶりは、数多くCD化されている膨大なルーツ・ロック・レゲエ音源にて確認可能。(鈴木)
▼スラロビが参加したルーツ・ロック・レゲエ名盤

3月初旬にリリースされるチャンネル・ワン音源を集めたコンピ『Reggae Anthology : The Channel One Story』(VP)

レヴォリューショナリーズ『Gold Mine Dub』(Jamaican Gold)
タクシーという名前でもいろいろやってます
正式リディム・コンビとして〈タクシー〉を名乗り、アーティスト発掘、レーベル運営にまで乗り出した80年代のスライ・アンド・ロビー。シンセ・ドラムを多用したうえにベースもファンク度アップ、加えて生演奏そのものをダブ化(!)したサウンドによってディスコ・ダブを創造。リディム/サウンドの革新に加え、R&Bやロック的なエッセンスの取り込みに誰よりも意識的だった彼らが手掛けた作品は、結果として海外マーケットで圧倒的人気を獲得する(ブラック・ウフルーがその最大の成功例)。ジャマイカ主流から外れ、逆に次第にロック/ハウス/ガラージ/ヒップホップ・シーンにコミットしていったのも、ある意味必然。(鈴木)
▼80年代の〈タクシー〉がらみの作品

タクシー名義でのプロデュース楽曲をまとめたコンピ『Hail Up Taxi 2』(Taxi/Tabou 1)
異種格闘技戦? 余裕ですね~
これまでにリリースされてきたスライ・アンド・ロビー名義の作品には、幅広いジャンルのアーティストたちが大挙して参加しているものも多い。例えば、アフリカ・バンバータやハービー・ハンコックが参加した85年作『Language Barrier』、ラメルジーやブーツィー・コリンズらが押し寄せた87年作『Rhythm Killers』、そしてハウィーBがプロデュースを手掛けた2000年作『Strip To The Bone』といった具合に。これらはスラロビのビートをオカズに腕の立つプロデューサーがゴッタ煮料理を仕立て上げる、といったもの(前2作品のプロデューサーはビル・ラズウェル)だが、誰の手にかかろうと、また誰の声/プレイがそこに乗ろうとも、スラロビのリズムが持つ〈コク〉が失われることはない。その意味で、ジャズ・プレイヤーであるモンティ・アレキサンダーとの2000年の共演盤『Monty Meets Sly And Robbie』もまた格好のサンプルとなるはずだ。(大石)
▼スラロビの作品(のゴッタ煮編)

2000年作『Strip To The Bone』(Palm Pictures)

87年作『Rhythm Killers』(Palm Pictures)
国際的な活動を繰り広げるスラロビだが、彼らのホームはやっぱりレゲエ。92年にはトラック制作を手掛けたチャカ・デマス&プライヤーズの“Murder She Wrote”、そして同曲を収録した『All She Wrote』(Mango)共に大ヒットを記録。以降もレゲエ界にとって彼らが欠かせない存在であることは変わっていない。一方、彼らは日本のアーティストとの交流も深く、PUSHIM『Pieces』(NeoSITE/キューン)のほか、三木道三やRYO the SKYWALKERの作品にも参加している。(大石)
