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第25回 ─ 超大物ケイスレイをはじめ、ヒップホップのDJミックス作品がゾクゾク!!

連載
360°
公開
2003/06/12   11:00
更新
2003/06/12   17:48
ソース
『bounce』 243号(2003/5/25)
テキスト
文/狛犬

DJケイスレイほか、ヒップホップのDJミックスをどさっと紹介。超快楽ミックス処方箋はこちらからどうぞ!

DJ KAYSLAY

ドラマ・キングが初のミックスCDをリリース!



 競争が激しいミックステープの世界……DJイングのテクニックを競うモノもあれば、どれだけエクスクルーシヴなトラックが収録されているか、という部分が評価基準になることもある。そしてメインストリームでは後者路線のレースが盛んだ。そんな状況はリーガルなミックスCDの世界にも飛び火し、これまでにも先駆者ファンクマスター・フレックスをはじめとして、キッド・カプリやDJクルーらが、エクスクルーシヴな新曲集としての側面を持つミックスCDを数多く残してきている。そこで登場するのが、今回初めてのミックスCD『The Streetsweepers Vol.1』をリリースするドラマ・キングことDJケイスレイだ。

 初めてのCD……とはいえ、ケイスレイはすでに着実な支持を得ている。まあ、そんなことを知らなくても、『The Streetsweepers Vol.1』に集められた顔ぶれをザッと見るだけで、ケイスレイの大物ぶりがわかるはずだ。ナズとベイビー、フォクシー・ブラウンにエイメリーが集ったファースト・シングル“Too Much For Me”をはじめ、エミネム、50セント、スカーフェイス、キャムロン、バスタ・ライムズ、ファット・ジョー、モブ・ディープら30人以上のメジャーリーガーが新曲を持ち寄っていて……ちょっと豪華すぎるんじゃないの?

「オレは長くストリートでやってたからね。今回フィーチャーしているアーティストも、ストリート時代に助け合った仲間ばかりさ。ミックステープやラジオを通じて曲をブレイクさせてきた、その恩返しっていう意味でね。例えば50セントとも、彼がまったく売れてない頃からいっしょにやってたから、いまでもタイトなのさ」。

 自信たっぷりに語る彼はハーレム生まれのハーレム育ち。アフリカ・バンバータとかグランドマスター・フラッシュといったパイオニアたちを見てDJ活動を始め、70年代後半からバンバータが主宰するズールー・ネイションの一員として活動していたバリバリのオールド・スクーラーだ。当時のブロック・パーティーではいつも注目の的だったという。

「当時はまだトリックとかカットは主流じゃなくて、みんなブレイクビーツをかけてMCがラップしてた。あの頃は〈ラップ・ミュージック〉って呼ばれてたな。でも、パーティーのフライヤーとかにはすでに〈ヒップホップ〉という言葉が使われてたよ」。

 80年代にはドラッグ絡みで逮捕されてキャリアを中断するものの、90年代にはふたたびDJの道に戻る。前線にいた後輩たちはすぐさまケイスレイに道を譲ることとなった。

「若いDJたちを押しのけるのは簡単だったよ、彼らには〈ストリート〉という要素が欠けてたのさ。誰もストリートを代表してなくて、そこにオレがスルッと入り込んだんだ」。

 そのようにして、時のトップDJであるDJクルーに比肩する存在にまでノシ上がったケイスレイは、NYのFM局〈Hot97〉で活躍するようになる。ちなみに同局はナズに批判されていたのだが……。

「ナズが〈Hot97〉を批判した時、オレはヤツの肩を持った。ヘタしたらクビになってたかも知れないんだけど、オレはナズを好きで応援してたから、ヤツのレコードをかけ続けたよ。ヤツとはとてもクールな関係で、だから“Too Much For Me”も実現したんだ」。

 そして、今回の『The Streetsweepers Vol.1』だ。なかでも話題なのが、フレックスやカプリ、トニー・タッチ、そしてクルーらDJを集めた“Champions”。

「ラッパーはDJに対して妥当なサポートをしてくれない。だから見せつけたかったんだよね、DJだって集まってラップしてレコード作れるんだぜ、って」。

 また、ベテランならではの懐の深さなのか、西海岸や南部、それに女性MCのリレー曲があったり、ヴァラエティーに富みつつもバランスのとれた内容だ。

「誰が聴いても楽しめるような、エンターテイメント性を重視してるんだ。西の奴らはやっぱり西のアーティストを聴きたいだろうし、ダウン・サウスも無視できないよな。R&Bっぽいものも入れて、いろんな人に気に入ってもらえる作品ということを心がけたよ」。

 いい意味で貪欲なのだ。そうやってどんどん上をめざすケイスレイが今回のCDデビューで得た到達感は、いったいどれほどのものなのだろう?

「まだまださ。オレは絶対に現状に満足しない。常に次を狙ってるから、永遠に到達はしないし、ハングリー精神は決して失わない。一段落したら、もっと他の連中が世に出られるよう後押ししていきたいと思ってるけどね」。

▼ケイスレイの『The Streetsweeper Vol.1』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

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