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第6回 ─ BBC

連載
Discographic  
公開
2002/09/17   15:00
更新
2002/10/03   22:59
ソース
『bounce』 235号(2002/8/25)
テキスト
文/桑原 シロー

イギリスはもとより世界中の音楽ファンへ多くのライヴ・プログラムを提供してきた国営放送局、BBC。セッションならではの荒々しい演奏のなかに見える、バンドが過ごした60~70年代。時を超えてCD化された名演奏の数々は、いまやすべての音楽ファンにとって貴重な財産となっている

〈British Broadcasting Corporation〉──略してBBC。

あなたのレコード棚を覗けば、この三文字がタイトルに記載された盤が、ホラ、いくつか見つかったりするだろう。イギリスの国営放送局であるBBCラジオに残された数々の貴重なソースは、90年代に入ってからたくさん音盤化され、英ロック/フォーク・ミュージックの奥深い歴史を紐解くための手引きとして音楽ファンから重宝されている。ビートルズの『Live At The BBC』などは世界中で大ヒットを記録しているし(BBCっていう名のライヴハウスでの収録と思いこんでいた友人が何人かいた)、レッド・ツェッペリンの『BBCSessions』は、彼らの活動初期の熱っぽさをダイレクトに伝える内容となってファン層を広げることになった。また、ザ・フーの『BBC Sessions』の発掘などはまるで事件のように取り扱われたものだ。とにかく、あらゆるソースがたんまりと残っていて、突如リリースされる栄光の記録集が僕らの心を踊らせるわけだが、単にレア音源の宝庫としてだけでなく、それぞれの時代における若者文化の突端であるヒップな音楽を紹介、記録していく作業を長年に渡って行なってきた〈BBCもの〉への信頼は年々高まっている。BBCを発信地として、やがて大きなうねりを形成し、とんでもない存在へと成長していくドキュメントが描かれたビートルズのアルバムなどを聴けば、彼の地においていかなる影響力を持ったラジオ・ステーションであったか伺い知ることができるだろう。〈あっちじゃ、すんげえ番組が流れてんのな〉と羨望しつつ、NHK-FMで放送されるBBCの「In Concert」をエアチェックしていたラジオ少年も多いはずだ。国営放送の限界もあろうが、決して新しい文化と乖離することなく歴史を歩んできたBBCの柔軟性には、やはり羨ましいという思いを禁じ得ない。ニューウェイヴ/パンク愛好家にとって忘れられない存在、ジョン・ピールのような名物DJが活躍する場があるところにもBBCの懐深さを感じずにはいられなかったりする。