NEWS & COLUMN ニュース/記事

第11回 ─ TROUBLEMAN UNLIMITED

連載
U.S. LABEL GUIDE
公開
2002/04/11   00:00
更新
2002/07/22   16:39
ソース
『bounce』 230号(2002/3/25)
テキスト
文/小林 英樹

異彩を放ち続ける、ニュージャージー発の老舗レーべル

 最初はこのロゴが嫌いだったんです、<なんかキモい~>って。それがいまや気になるレーベルの一番手ですからねぇ。ロゴのキモ悪さ同様、このレーベルから放たれる作品の居心地の悪さは天下一品。めちゃオモロ過ぎます!ってなわけで、今回はトラブルマン・アンリミテッドに行ってみましょう!

 NYのお隣、ニュージャージーを拠点とするこのレーベルは、当時大学生だったマイク・シモネッティが中心となって90年代前半にスタート。とはいっても初めからレーベルとして運営していたわけではなく、他同様にまずはファンジンとして開始。その名前は「WANNA COMMUNICATE?」。#4へツナミ、シュダー・トゥ・シンク、ボーン・アゲインストなどの曲を収録したカセットテープを付けて、ここからトラブルマン・アンリミテッドの歴史が本格的に始まったようです(ちなみにトラブルマンとは、72年に公開された映画のタイトル。そしてこのキモロゴ・アフロ君はマイルス・デイヴィスのアルバム『On The Corner』をモチーフにしたそう)。94年には当レーベルからの正式な第1弾リリースとして、アンウォンドのシングル“Negated.Said.Serial”。続いてエンジンキッド、ハル・アル・シーダッド、リンク、レッド・モンキー、シー・タイガー、シャ・ナ・ナ、カメラ・オブスキューラ、ブラック・ダイス、ショットメイカー……と、安定した作品リリースを続け、現在に至っているわけです。

 で、考えてみるとこのレーベルって、ずっと同じスタイルなんですよね。頑固なインディー・レーベルとしてのスタンスが、当初から維持されていると思うのです。それなのにアンダーグラウンドなイメージを越えて魅力的に映るようになったのは、やはり時代の空気がピッタリ合いはじめたからなのかな。パンク~ハードコア~ニューウェイヴ~ポスト・ロック~エレクトロニカが、自由にグルグル回っているいまだからこそ、奇怪な音を連発しているこのレーベルの作品がすんなり耳に入って来ちゃう。この感じは以前に紹介したGSLあたりともリンクします。レーベル・アーティストも、そしてリスナーも同時に楽しむことのできる時間がここには存在してるのです。