インタビュー

oh sunshine 『oh sunshine』

 

 

女と男、アメリカ人と日本人——育った環境も世代もまったく違う2人のミュージシャン、エミリー・コナーとひらまみきおが結成した新ユニット、oh sunshine。彼らを結び付けたのは、そういった文化や性別の垣根を呑み込む〈音楽の力〉だった。

「いま、アメリカと日本ってカルチャーの垣根がなくなってきていると思って。だから国とか言葉とか関係なく伝わるような、生々しくてリアルなものを作りたいと思ったんです」(ひらま)。

エミリーが在籍していたc.cedille(セ・セディーユ)をひらまが手伝ったことがきっかけとなり、いっしょにプレイするようになったという2人。ファースト・ミニ・アルバム『oh sunshine』には、ひらまの言う「生々しくてリアルな」音楽が渦巻いている。たとえばオープニング・ナンバー“I belong to you(最高の人生)”は、彼らと同じ男女ユニット、ホワイト・ストライプスやキルズを彷彿とさせるオルタナティヴなブルース・ロックが炸裂。英語と日本語を自在に使い分けるエミリーの歌声も鮮烈だ。

「僕はもともと古いブルースが好きで、エミリーはいまの時代のデッド・ウェザーとかが好き。ブルースとオルタナティヴがお互いの感覚のなかでマッチしたというか、そういったサウンドが自分たちの生々しさを表現する良い素材だった」(ひらま)。

そうしたブルース・フィーリングは、「リハーサルで大体の感じだけ掴んで、後はアコースティック・ギターだけをスタジオに持ち込んで、せーので録った」(ひらま)という“velvet”“I'll take you down to the riverside”でもダイレクトに感じることができる。そうしたライヴ感重視のレコーディングは、エミリーにとっても大きな刺激になったようだ。

「いつもヴォーカル・ブースに入って一人で歌うと緊張するんですけど、ミキオと顔を合わせて歌うとリラックスして歌えるんですよね。今回のアルバムは、シャワーを浴びながら歌うみたいに、すごくナチュラルな気持ちで歌うことができました。ライヴでも同じ気持ちで歌えて、すごく楽しい」(エミリー)。

ほぼ完璧に日本語を操り、曲ごとに表情を変えるエミリーの歌声はoh sunshineの大きな武器。サザン・ロック風の美しいバラード“beautiful”は英語と日本語の2ヴァージョンで歌われているが、ひらまが書いた曲を聴いてエミリーが英語詞を付け、その歌詞にインスパイアされてひらまが日本語の歌詞を書くなど、さまざまな形のコラボレーションがバンドの無国籍性を強めている。曲もブルースからの影響に限らず、“窓際のオリーブさん”では洗練されたポップな一面を垣間見せたりも。

「渋谷系っぽい曲を作りたかったんです(笑)。ピチカート・ファイヴが好きで、そういった曲も歌ってみたかった。それでミキオに手伝ってもらっていっしょに作ったんです。だから、この曲には日本の音楽への憧れがちょっと入っている」(エミリー)。

アメリカに住んでいた10代の頃からフィッシュマンズを聴いて、日本の音楽に興味を持っていたというエミリー。そして、彼女が「テキサスから来たブルースマンみたいな人」とリスペクトするひらま。そんな二人だからこそ作ることができるサウンドが、このアルバムには確かに息づいている。

「僕とエミリーは世代も生まれた国も違うけど、音楽の初期衝動みたいなものを大切にしたい、という気持ちで繋がっている。ジャンルに関係なく、純粋で、カッコ良くて、魂を揺らしてくれる音。そういう音を鳴らしていきたいと思ってます」(ひらま)。

その衝動が消えない限り、oh sunshineは眩しく輝き続けるに違いない。

 

PROFILE/oh sunshine

NY出身で東京在住のヴォーカリスト、エミリー・コナーと、東京事変の初代ギタリストとしても活躍し、自身のソロ活動のほかにもsuperflyやエレファントカシマシ、スガ シカオなど数多くのサポートも行っているギタリスト/プロデューサー、ひらまみきおによるユニット。エミリーが以前活動していたユニット、c.cedilleをひらまがサポートしたことがきっかけとなって2010年夏に結成され、同年秋からライヴ活動を開始。MySpaceなど音楽配信サイトで音源を発表する。2011年に入り、アリエル・ピンクのニュー・グループ=ホーンテッド・グラフィティとの共演ステージなどで話題を集めていくなか、待望のファースト・ミニ・アルバム『oh sunshine』(WESS)が1月26日にリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年02月25日 14:35

更新: 2011年02月25日 14:36

ソース: bounce SPECIAL (2011年1月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎

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