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インタビュー

神聖かまってちゃん 『つまんね』『みんな死ね』

 

日本のロック・シーン最大の爆弾が、2枚の新作で激動の年にトドメを刺す!

 

〈テン(2010)年代〉の最初の年であった2010年、神聖かまってちゃんはダントツで異彩を放っていた。それまでもリハーサルのようにグダグダだったり流血騒ぎや喧嘩があったりと予測不能なライヴや、の子(ヴォーカル/ギター)の奇行をネット配信して話題になっていたが、3月のミニ・アルバム『友だちを殺してまで』は彼らを一気にリアルな世界を引っ掻き回す存在にした。ジャンクなサウンドを散りばめた同作には、ヒリヒリさせるような魅力がある。キラー・チューン“ロックンロールは鳴りやまないっ”は、まさに鳴りやまない状態だ。

2010年12月、渋谷・WWWのこけら落とし公演のステージでは、の子が愛用するのと同じ〈ネ申〉の文字が入ったヘルメットを観客全員に着用させ、ライヴの様子はニコニコ動画やUstream、SPACE SHOWER TVでの3元中継を実現させた。ライヴとネットを結び付けてきた彼らにとって、これは2010年を象徴する成果だったという。

「渋谷での配信ライヴの意味合いは、デカイですね。それが、どう転んでいくのかわかんないですけど。(手応えは)ちょっとはあるけど、過ぎてからのほうがわかるかもしれません」(の子)。

そのステージの後半では、の子とMONO(キーボード)が喧嘩を始め、スタッフやメンバーで仲裁するという、ある意味彼ららしい展開に——さて、4人にとってこの一年はどういう年だったのだろうか。

「ひと言で言えば、変化の年だったと思います。いい意味かどうか、いろいろ考え方もあるけど、それぞれ印象に残る年だったんじゃないかな」(MONO、キーボード)。

「変化の年というのはありますけど、自分にとっては悪い面もあった。時間がない。こっちに時間を取られてるんで、ネットとか怠ってるんですよ。そういう意味では悪い。でもどっちでも取れるんで。僕も一概には言えない。でもファンからしたら、悪いんじゃないですかね?」(の子)。

「きつかったですね、いろんな意味で。バンド内でいろいろあったし、(バンドが)大きくなることでプレッシャーも多いし。とにかくお金がなかった。そのぶん得たものも大きかったと思うんですけど」(ちばぎん、ベース)。

「私もきつかったですけど、支持してくれる人が増えて、ありがたいです。振り返るといろいろありましたけど、まだ真っ只中というか、前しか見えてない状態と言うか。(今後の)不安は4人ともデカイと思うんですけど、このバンドだったら感じることができることや経験できることがたくさんあると思います」(みさこ、ドラムス)。

彼らはネット配信を通じて日常的にファンのみならず多くの人と交流している。むしろ、そうしたことの比重が大きいことが、このバンドのユニークさでもあるから、単に忙しいという意味に留まらず〈時間がない〉というのも頷ける。そんな2010年を締め括り、今後への布石となるのが2枚同時リリースとなった新作『つまんね』『みんな死ね』。当初はいずれもメジャーから発表される予定だったが、その直前に後者はインディーからのリリースが決まった。

「最初から2枚同時に、と進めていたんです。消費される文化なので、中途半端にやるよりは、そのほうが僕たちらしいし。(メジャーとインディーから出ることは)結果的にそうなっただけで。話題になればいいんじゃないですか?」(の子)。

「世界観を分けようと言うことになったんです。〈明るい〉〈暗い〉で分けて2枚にしようと。明るいのが『みんな死ね』で、暗いのが『つまんね』です」(ちばぎん)。

「明るいのが『つまんね』で、暗いのが『みんな死ね』と言う人もいる。それもおもしろいです」(の子)。

彼らの言う〈明るい〉〈暗い〉は曲調のことではなく、それぞれの曲に込められた感情や思いなのだろう。『つまんね』収録の“白いたまご”“芋虫さん”などは、ヴォコーダーを使って軽く聴かせているが歌詞は痛い。簡潔な歌詞ほどその言葉の向こうにある闇や混乱を伝えてくるのは、の子独特の説得力だ。そのなかでフワリとした手触りの“美ちなる方へ”は、セーフティー・ネットのような救いを感じさせる。一方『みんな死ね』は、“自分らしく”“いくつになったら”“口づさめるように”など自己肯定的な歌を力強く歌っているのが印象的。特に、控えめなラヴソング“ベイビーレイニーデイリー”が耳に残る。

また、2枚に収録された計24曲の大半はの子が手掛けたPVをネット上に公開し、ライヴでも披露してきた。これらはいわば、これまでの総集編とも言えるわけだが、一気に発表することへの不安はないのだろうか。

「なくはないですけど、賭けですよね。結果はわからないけど、得られることは大きいと思う」(の子)。

「ネットに出したものは、の子の作品。アルバムになって初めてバンドのものになるという感じです」(ちばぎん)。

「曲を作ってると同時進行で、(映像の)アイデアが出てくる。例えば“ベイビーレイニーデイリー”のイントロの〈シャラララ~〉は、PVを撮ってる時にたまたま公園で子供が歌ってる声が入って、これは使えるなと思って、レコーディングで入れたんです。イントロは曲の世界観の入り口だから、結構重要だと思ってます。PVはとりあえずそこにあるものを撮って、自分なりに使えるものにしたという感じかな。いろいろ考え方はあると思うんですけど、どう転ぶか、みたいなものは常にあるんで」(の子)。

彼にとって結果はどうであれ、事を起こすことが大事らしい。危なっかしく見えるが安全圏での結果を想定したようなヌルさとは真逆の、彼にしかできないことをやろうとするの子の行動力が、バンドの原動力であり魅力であることは言うまでもない。

「僕の場合、それがすべてですから。曲とかどうでもいいですから(笑)。活動を通して……すべてと言っちゃあ極端ですけど、もともとあったのはそれで」(の子)。

迷走しているように見えて結果を出した彼らに、2011年の目標はと訊くと、意外な答えが返ってきた。

「毎回訊かれるんですけど、いろんな意見があると思います。いろんな順路があるんです。そのなかで、いろいろやります。うちらで言えば、解散もアリなんです。なんでありかと言えば……それも選択肢のひとつで、どう転んでいくかの問題で」(の子)。

神聖かまってちゃんの2011年は、やはり予測不可能になりそうだ。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年12月21日 16:20

更新: 2010年12月21日 16:20

ソース: bounce 328号 (2010年12月25日発行)

インタヴュー・文/今井智子