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インタビュー

JAZMINE SULLIVAN 『Love Me Back』

 

天性のスキルと経験に裏付けられた豊かな表現力、そこから生まれた最高の楽曲たち。ジンクス無縁な彼女の2枚目が、いま愛を込めて届けられる!

 

 

10代で音楽業界の荒波に揉まれ、さまざまな経験を経て、2008年に“Need U Bad”でメジャー・デビューを果たしたジャズミン・サリヴァン。その後のキャリアは順調そのもので、処女アルバム『Fearless』や同作からのシングルがグラミー賞に複数ノミネートされたほか、多くのアーティストの作品に参加してソウルフルな歌声を注ぎ込んできた。また、ソングライターとしても活躍するジャズミンは、モニカの“Everything To Me”にも作者のひとりとして名を連ねていたが、今度は自分の番だ。

デビュー時には周囲の反応が気になり、ナーヴァスになっていたという彼女。しかし、そうしたネガティヴな感情を取り去って制作に挑んだというニュー・アルバム『Love Me Back』は、「これまで音楽にすべてを捧げてきた」と語る彼女らしく音楽愛に満ち溢れている。なにしろ、リード・シングル“Holding You Down(Goin' In Circles)”からして凝っている。ジャズミンを10代の頃からサポートし続けている「〈チーム・ジャズミン〉のキャプテン」ことミッシー・エリオットが手掛けたこれは、メアリーJ・ブライジ“Be Happy”のフレーズをジャズミンが歌い、ナズ“Affirmative Action”などヒップホップ曲のメロディーや定番ビートを織り込んだ90sライクな曲で、映画「House Party」を意識したと思しきPVも痛快だった。

「サンプリング曲はすべてミッシーが選んだの。ここで使っている90年代の楽曲やアーティストもミッシーが教えてくれた。この曲はズバリ90年代そのもの! ファンの人たちはきっと自分たちの青春を思い出すんだと思う。私はみんなのそういう感情を呼び起こしたかった。最近の曲にはないリアルで生々しいエネルギーがあるわ」。

メアリーには以前から憧れ、最近はツアーや楽曲でも共演している彼女だが、サラーム・レミ制作のニュー・シングル“10 Seconds”もメアリーを思わせる激しいエモーションの表出が聴き手の胸を打つ。

「前作で私の代名詞のような曲になった“Bust Your Windows”と似たコンセプトの曲を作りたいと思って出来たのが“10 Seconds”。でもね、このなかの主人公は“Bust Your Windows”とはまったく違う結論を導き出すわ。前回は本当に彼の車の窓ガラスを割っちゃった(笑)。若気の至りね。でも、この曲を作る時には、〈大人になった私なら、どうやってこの状況に対処するかな〉って考えてみたの。想像のなかの私は〈10秒あげるから、ここから出て行って!〉って叫んでいたわ。少しは大人になったみたい(笑)。つまり“10 Seconds”は“Bust Your Windows”の大人の女性版ね!」。

「男女のリアルな心の動きを表現している」というニーヨとの共演曲“U Get On My Nerves”(制作はビー・メイジャー)も“Bust Your Windows”の続編的な曲だそうだが、直情的にならず思慮深くなったリリックは彼女の成長の証だと受け止めていいのだろう。リル・ヴィシャス&ダグE・フレッシュ“Freaks”のビートを引用した“Luv Back”に関しても、「失恋の曲だけどネガティヴじゃなくて、前向きで強気なの。『Fearless』のなかで泣いていた女の子が成長し、ここまで強くなったって感じの曲ね」と話す。さらに、アンソニー・ベルが制作し、クエストラヴら地元フィリーの仲間の演奏をバックに、物憂げにラップするように歌う“Redemption”は、彼女いわく「暴力がもたらす悲劇を歌った、深刻でヘヴィーな曲」。車の窓ガラスを叩き割っていたあの頃の彼女は、ここにはいない。それでも、LOS・ダ・マイストロが手掛けたアレサ・フランクリン“Jump To It”使いの“Don't Make Me Wait”などでは、「私の〈楽しくてセクシー〉な部分を見せたかったの(笑)。80年代のサウンドを再現したいと思って、歌詞もポジティヴな内容で大胆なものもあるわ!」と、20代前半の女性らしい溌剌とした表情も見せる。そうしたなか、現在のジャズミンの心境をもっとも素直に歌ったのが、ノー・IDが手掛けた“Famous”なのだという。

「人は誰だって誰かに認められたいと思っているんじゃないかしら? そういう本音を曲にしたの」。

心配無用。いまやジャズミンは誰もが認める歌姫なのだから!

 

▼関連盤を紹介。

左から、ジャズミン・サリヴァンの2008年作『Fearless』(J)、ジャズミンが参加したジェイダキスの2009年作『The Last Kiss』(Roc-A-Fella/Def Jam)、スヌープ・ドッグの2009年作『Malice In Wonderland』(Priority/Capitol)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年12月21日 16:27

更新: 2010年12月21日 16:28

ソース: bounce 327号 (2010年11月25日発行)

構成・文/林 剛