こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

紗羅マリー 『MY NAME IS』

 

 

お洒落に目ざとい女の子たちからビッグな支持を集めてきた有名モデルである。シンガー・デビューしてからまだ半年足らずだが、シングルでの大きな手応えをフィードバックしつつ、溢れる才気はすでに原石の域を超えてキラキラと多面体に輝いている。レッチリ好きのファンキーな父(US出身)とプリンスやジャネットを愛してやまない母(愛知出身)との間で育まれたハイブリッド! 子供の頃から念願だったというアルバム・リリースをついに『MY NAME IS』で果たした。

「もう私のなかでは全部シングル!というぐらいのノリでいろんな音をギュウギュウに詰め込んじゃいました。まずはいろんな私を聴いてほしかったから」。

初っ端で彼女を強力にレペゼンするMCは、友達だという5歳のナギサちゃん。もう何を言ってんだか全然わかんない(笑)ハイなチビ声が超アガります。

「ライヴで使うSEがすっごく気に入ってて、イントロ用に私のやりたいように作り直したんです。で、ナギサを東京に連れてきてもらって、いちばんわけわかんなく騒いでるテイクで決定(笑)。紗羅マリーの1曲目はまずコレかなと(笑)」。

それに続く今流なオールディーズ・ポップを思わせる“Gossip”から、パンピンなエレポップ“Calling”へと繋がる流れもすこぶる弾けている。

「“Gossip”には女のコのドロドロ感が詰まってます。女の友情は成立しない(笑)っていう秘密をちょっとだけ教えてあげるという曲です。“Calling”は声にエフェクトもかけていて、とにかくリズムで感じてほしいタイプの曲ですね」。

さらにグルーヴィーなミネアポリス・サウンド調の“Hot Tequila”にはファンク感が満載。ここで彼女はビーチでボーイズをしとめるヤケドしそうなホットな女のコになっている。

「アルバム全体としては、私自身と〈女の子〉のいろんな面が出せました。例えば“お天気雨”では過去の素敵な恋の思い出を手繰り寄せている感じ。いまの私より、ちょっとだけお姉さん視線で」。

このあたりの曲は80sのシティー・ポップっぽくもあり、潮風が耳を撫でるような話し声に近いトーンで優しく歌う彼女がいる。この人、ホントに歌を聴かせてくれます。とにかく表情が多彩なのだ。そして、表情の多彩さという意味では、強気なアピールで意中の〈チェリー・ボーイ〉を追いかける甘酸っぱい女の子ぶりを見せたデビュー曲“Cherry”と、その〈裏〉を歌った“Dark Cherry”にも注目したい。

「“Dark Cherry”ではもう完全に上から目線(笑)。恋愛したら、いつでも彼氏には見ててもらいたいし、毎日チューして、ハグしてほしい! これはまさに私の地です……だから失敗しちゃうのかな(笑)」。

他にもPANG提供の軽快なスカ・チューン“Mr.”、海でのレコーディングでしっとり聴かせる研ナオコの秀逸なカヴァー“かもめはかもめ”など粒揃いの曲が並ぶ。田中直、Jeff Miyahara、佐々木潤ら腕利き制作チームとのコンビネーションも抜群だ。

「モデルをしてると〈私はそんなふうにはどうやったってなれないわ〉なんてよく言われるんですよ。すぐ結果を欲しがって最初から努力しない子たちがたくさんいて。でも私だって本当は毎日の小さな積み重ねをしてるんですよ。私は鏡に向かってプラス思考の会話をして、一日一日綺麗になっていこう、という気持ちを常に意識するようにしていたから」。

COMA-CHIのラップをフィーチャーした“Mirror Mirror”に込められた〈女子力アップ〉の信念からは、この人の創意の芯が滲み出ている。彼女と話をしていても伝わってくる、〈自分の意志で努力して魅力的になる!〉という眩しいオーラ。それは、アルバムのすべての曲に通じる清々しい聴き心地と結び付いている。

 

PROFILE/紗羅マリー

86年生まれ、名古屋出身のファッションモデル/シンガー。ティーン時代からファッション誌などのモデルとして活躍し、イヴェントやTV、ラジオ番組の出演など徐々に活動の領域を広げていく。今年に入って、3月にVOLTA MASTERSの『Lovers』に収録の“Love Happiness”にヴォーカリストとしてフィーチャーされ、撮影で訪れたバルセロナのライヴハウスで初のライヴ・パフォーマンスを敢行する。4月にデビュー・シングル『Cherry/Gossip』をリリース。7月にCOMA-CHIをフィーチャーしたセカンド・シングル“Mirror Mirror”を発表し、TVCMソングとしても話題を呼ぶ。さらなる注目を集めるなか、ファースト・アルバム『MY NAME IS』(avex trax)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年09月02日 18:45

更新: 2010年09月06日 20:40

ソース: bounce 324号 (2010年8月25日発行)

インタヴュー・文/池谷修一