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インタビュー

JASMINE 『GOLD』

 

Jasmine -A

物心ついたときからR&Bを浴びまくってきた新しい世代による、これは最初の金字塔となる作品なのかもしれない。

平成元年(89年)生まれのシンガー・ソングライター、JASMINEのファースト・アルバム『GOLD』。ゴスペル仕込みのヴォーカルが話題を集めたデビュー曲“sad to say”からオーセンティックなバラード・ナンバー“Dreamin'”まで5曲のシングルを収めた本作を聴いてまず印象に残るのは、最新鋭のR&Bトラック──Jeff Miyahara、BACHLOGICなど現在のシーンを代表するクリエイターたちの仕事も素晴らしい──をきわめて自然に採り入れ、自由自在に歌いこなすヴォーカルセンスだろう。

「R&Bは特別なものじゃなくて、フツーの音楽なんですよね、私にとって。だって、いちばん気持ちいいじゃないですか(笑)。ただ、デビューしてから(R&Bに対する)固定概念はなくなってきましたけどね。クラブで歌ってたときはヒップホップ系のトラックばっかりだったんですけど、いまはそこからどう広げるか、どう飛ばすかってことを考えるようになったんです。いろんな人に受け入れてもらうことが大事だって気付いたというか」。

さらに彼女は「どんなトラックでも、〈間違いない〉と思える歌を乗せられるのがいちばんだと思う」と言葉を続ける。そう、〈10代特有の感情をリアルに表現〉なんていう手垢まみれのフレーズを蹴り飛ばしてしまうような、あまりにも正直で赤裸々なリリック/歌もまた、このアルバムの大きな魅力となっている。たとえば“Bad Girl”における〈他の誰でもない/あたしの生き様/みとどけてやる〉というラインに、これほどまでに強い生々しさを与えられるシンガーは本当に稀だと思う。

「この歌は自分が14、5歳くらいの時のことを思い出して書きました。その頃って、傷つくことも多かったし、〈ヤバいよね、ウチら〉っていうことも気付いてたんですよね。私自身も〈ここまで堕ちたら、這い上がるしかねえ〉って思ってたし……。正直、消したい記憶ばっかりだし、歌にするのは辛いんですよ。でも、書きはじめちゃったからにはやりきりたいって思って。どういう言葉で、どういう視点で書けばちゃんと伝わるか、それはすごく考えます」。

歌に向かう覚悟の強さは、オープニング・ナンバー“PRIDE”における〈うたいつづけたい/命の限り/バッグにつめこんだ この意思/タップリ/吸い込んできた景色〉というフレーズにもそのまま投影されている。

「アルバムの入り口として、自分がめざしてるところを歌ってみたいなって。〈プライド〉については、小学校の時からずっと考えてるんですよ。いまの私のプライドは、JASMINEっていうアーティストが自分のなかにいるってこと。JASMINEはファイヤー系というか(笑)、すごく強い存在なんですよね。私自身はもっとボンヤリしてるし、嫌いです。でも、JASMINEがいてくれるからいいやって」。

「ずっと前から、ファースト・アルバムは〈パレット〉みたいな感じにしたかったんです。いろんな色の曲があるし、理想にだいぶ近づいたと思います」という『GOLD』。〈音楽でしか自分の存在を示せない〉という切実なモチヴェーションと、誰でも気持ち良く楽しめるR&B系ポップとしての機能を併せ持った本作によって、JASMINEの存在はさらに大きくクローズアップされることになりそうだ。

「10代の頃の曲もたくさん入ってるし、やっと1枚出来て良かったなって。先のことはわからないけど、〈JASIMINE、ヤバイ! カッコイイ!〉って言ってる自分は想像できます。私、JASIMINEの大ファンなんですよ。JASMINEは全然振り向いてくれないですけど(笑)」。

 

PROFILE/JASMINE

89年、東京生まれ。両親の影響で幼い頃から音楽に慣れ親しみ、13歳の時にゴスペル・クワイアに入門。アメリカ遠征も体験し、ゴスペルを通じてブラック・ミュージックと深く接するようになる。17歳から本格的にシンガー活動をスタートさせ、そのヴォーカル・パフォーマンスと、R&Bをベースに独自のポップセンスを効かせたソングライティングは瞬く間に評判となる。2009年6月にシングル“sad to say”でデビュー。同年10月の“NO MORE”、2010年3月から3か月連続となった“THIS IS NOT A GAME”“JEALOUS”“DREAMIN'”といったシングル・リリースを経て、このたびファースト・アルバム『GOLD』(ソニー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年07月21日 17:58

更新: 2010年07月21日 18:24

ソース: bounce 323号 (2010年7月25日発行)

インタヴュー・文/森 朋之