SAY 『One Love』
ウェッサイの名脇役が放つ、たくさんの〈ありがとう〉が込められた初のアルバム

BIG RON“Summer High”への参加でDJ PMXの目に留まり、OZROSAURUSやTWO-J、DS455、さらにはGIPPERやDJ☆GOと、次々にヒップホップ勢との共演を果たして涼しい歌声を聴かせてきたシンガー、SAY。中学時代に出会ったTLCのアルバム『Crazysexycool』でブラック・ミュージックに足を踏み入れた彼女は、ダンスへの情熱と共に深まるR&Bへの思いを、歌うことで形にしてきた。PMXとの一連の録音は彼女にレコーディング・アーティストとしての道を拓いただけでなく、その音楽観にも影響を与えたという。
「踊ることはあっても、それまでヒップホップとR&Bは自分のなかで似て非なるものだった。でも、パブ(PMX)さんが作るメロウなトラックはヴォーカルも映えるから、ヒップホップをすごく身近に感じました」。
これまで顔を合わせてきたメンツを随所に交えて完成させたファースト・アルバム『One Love』も、そんな彼女のいまの音楽観を踏まえて「いまできるすべて」を詰めたもの。トータル・プロデューサー=ICEDOWNとの共作曲と、彼から提案のあったオリヴィア・ニュートン・ジョンのカヴァーを除き、SAYはすべての曲でペンを取っている。叔母の影響で幼くしてピアノに慣れ親しんだこともあってか、曲作りで何よりも大事にするのはサウンドとメロディーだとか。
「音を聴いて自分の過去の何かにリンクしたら、その瞬間のことを歌詞に書くんですけど、自分的にはコーラスを作ってる時点でメッセージを届けられてる気でいるし、音で自分の気持ちを伝えている。そのためにもコーラス・ワークはすごい大事で、コーラスやサウンドをなるべく忠実に届けるために言葉はすごく選びます」。
隣で支えてくれる人への感謝や別れ、負けそうになった時に支えてくれる友の存在や、ひとときのパーティー――『One Love』はSAYみずから例えていわく、1日を締め括るリスナーにそっと差し出す〈ブランケット〉だ。「ちょっとでもリスナーの力になることがあればな」と彼女は続けて言う。
「誰かの背中を押したり、こらえてる涙を流させてあげたいって気持ちを詰め込んでる。いままでずっとサポートしてくれた人たちにもありがとうだし、これから新しくSAYを知ってもらう方にもアルバム一枚を通していろんな人へのありがとうを伝えられたらなと思います」。
▼『One Love』に参加した面々の作品を一部紹介。
左から、BIG RONの2008年作『BIG RON Presents...Much Love』(HOOD SOUND/Village Again)、DS455の2009年作『CHECK THA NUMBER』(BAYBLUES/HOOD SOUND/ユニバーサル)、OZROSAURUSの2007年作『HYSTERICAL』(BAYBLUES/HIGHER THAN HIGH)
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2010年05月05日 17:00
更新: 2010年05月05日 17:08
ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)
インタビュー・文/一ノ木裕之


