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インタビュー

NERDHEAD 『BEGINNING OF THE END』

 

プロデューサーとしても注目を集めるGIORGIO CANCEMIが、その感性を自由気ままに音像化させた新ユニットを結成!

 

Nerdhead -A

ラップとソングライティング全般をこなし、2003年からヴォーカリストのTOKOと結成したユニット=So'Flyで活動、最近は西野カナやAYUSE KOZUEなどのプロデューサーとして頭角を現してきたGIORGIO CANCEMI。彼が、So'Flyのライヴ・サポート・メンバーでもある山田裕一(キーボード)、SO-HEY!(ヴァイオリン)と組み、新しく立ち上げたのがNERDHEADだ。もともと仲間同士の遊び感覚から始まったというこのプロジェクト。GIORGIO以外のメンバーは基本、プレイヤーという形での参加で、自由気ままに彼の趣味嗜好をDIY精神で音像化するのがコンセプトになっている。クラシックの素養を持つGIORGIOに加え、メンバーにヴァイオリニストがいるというユニークな編成の彼ららしく、ファースト・アルバム『BEGINNING OF THE END』で聴かせるその音は、基盤となるヒップホップ/R&Bにクラシックのエッセンスを染み込ませているところがポイントだったりするが、エイコンやポロウ・ダ・ドンのプロデュース作品をフェイヴァリットに挙げるGIORGIOのいまの嗜好が丸出しだったりもする。

「So'Flyはいつだってメインに考えていて、そっちではもうちょっとエンターテイメント性の強いものをやりたいなと思ってるんです。NERDHEADはプロデューサーとしてのソロ活動みたいな感じ。僕の中では〈バック・トゥ・ベーシック〉みたいな、ストリートに戻った感じがしますね。だから、こういう人とやってみたいとか、こんなことに挑戦してみたいっていうのはここに入れてない。その場にある調味料と材料で、ポンとお弁当を作る感覚で作ったものなんです」。

『BEGINNING OF THE END』に集結したのも、西野カナ、AYUSE KOZUE、WISEなど過去にGIORGIOが楽曲提供なりプロデュースなりで絡んだことのあるメンツばかり。西野カナをフィーチャーした先行シングル“BRAVE HEART”は、2人の相性の良さを示すライトなヒップホップ調のナンバーに仕上がっているし、AYUSE KOZUEを迎えた“FORGET ABOUT U”も、GIORGIOが参加した彼女のアルバム『Simply Good』のサウンド・プロダクションを引き継いだものになっている。とはいえ、例えばAYUSEの場合は同作でGIORGIOの手によりエモーショナルなヴォーカルを新たに引き出されていたわけで。GIORGIOは他人をプロデュースするとき「歌い手の好きなものを入れてあげたいっていうのが大前提」だと言う。

「〈どういうのを歌いたいんですか?〉〈どういうのを聴いてるんですか?〉っていうのを必ず本人と会って直接訊かなくちゃ次の作業に進めない。僕もアーティストだからわかるけど、〈コレを歌いなさい〉って言われて歌っても、普段聴かないような音じゃ楽しくないじゃないですか。100万枚売れても、歌ってる本人に〈実はアレ嫌いなんです〉って言われるより、10万枚だけど〈あの曲大好きなんです〉って言われるような楽曲を作りたいんです」。

そんな彼が選ぶ本作のハイライトは、オープニングを飾る“WHERE'S THE LOVE”。ゴスペル隊の力強いコーラス、クラッシーな雰囲気、そしてオートチューン・ヴォーカルといういまどきのダンス・ミュージックのテイストもハイブリッドさせた曲で、実はこれがNERDHEADを結成するきっかけになったのだという。

「この曲のテーマは〈Eyes On The World〉=(外に)目を配る。若い子たちがファッションのひとつとして僕の曲を聴いてくれたりするんだったら、本当に突き刺さるモノを書いてみようと思って書いたんです。ピアノ、ストリングス、すべての楽器ひとつひとつに説得力があるというか、自分が出そうと思ってるメッセージを後押ししてくれるようなトラックで、なおかつ意外と取っ付きやすいんじゃないかと。音楽としての完成度も高いと思うし、自分自身にとっていちばん大事な曲。大切に聴いてもらいたいですね」。

キャッチーなメロディーという生地の上にいろんなジャンルの旨味を大胆かつスマートにトッピング。庶民的で少し洒落ててクセになる――抜群に〈美味い〉音を聴かせてくれるGIORGIO。すでにNERDHEADの次作も構想中とのことで、この働き者のサウンド・シェフからは当分目が離せそうにない。

 

▼『BEGINNING OF THE END』に参加したアーティストの作品を紹介。

左から、2009年にリリースされた西野カナのシングル『Dear…/MAYBE』(ソニー)、AYUSE KOZUEの2009年作『Simply Good』(トイズファクトリー)、WISEの2009年作『LOVE QUEST』(ユニバーサル/(B)APE SOUNDS)、光永泰一朗の2007年作『僕はここにいるよ』(J's)、I THE TENDERNESSの2007年作『Le Quattro Stagioni』(フォーライフ)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年04月15日 15:40

更新: 2010年04月19日 19:03

ソース: bounce 319号 (2010年3月25日発行)

インタビュー・文/猪又 孝

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